企業概要
東レは、化学繊維･合成繊維･炭素繊維などを製造販売する大手繊維メーカー。1926年に三井物産が設立した東洋レーヨンを源流とし、1970年に現社名の東レへ社名変更。化学繊維がまだ黎明期であった1920年代から生産に着手、1950年代以降に化学繊維の大衆化を追い風に業績を伸ばした。ナイロン･ポリエステル･アクリルの三大合成繊維をすべて生産できる技術力をコアとして機能性素材を多角的に展開。炭素繊維でも世界シェア首位を誇り、米ボーイングに航空材料として炭素繊維複合材を納入する航空部品サプライヤーでもある。
１．日系繊維メーカーで断トツ首位、炭素繊維では世界シェア1位
２．売上高･利益いずれも安定的、財務体質は極めて健全な水準を維持
３．平均年収756万円だが課長級から年収1,000万円以上、家賃補助は最大13万/月
業績動向
✔売上高と営業利益
東レの売上高は長年に渡って2.0~2.3兆円のレンジで上下変動を繰り返している*1。営業利益は2020年に急落したが、2021年からは回復傾向にある。
*1：2019年のみ売上高1.88兆円まで急落したが、これはCOVID-19感染拡大による打撃。外出制限による服飾需要の急減で繊維事業が打撃を受けた他、渡航制限による航空需要の激減で米ボーイング向けの炭素繊維の需要も急減。
✔セグメント別の状況
東レは繊維事業（ナイロン･ポリエステル･アクリル･不織布･人工皮革など）、機能化成品事業（樹脂･樹脂化成品･フィルム加工品･ファインケミカルなど）、炭素繊維複合材事業（炭素繊維･複合材･成形品）、環境エンジニアリング事業（エンジニアリング･マンション･産業機械･情報機器･住宅材料など）、その他事業（医薬品･医療機器など）の4事業を有する。
東レは炭素繊維のイメージが強いが、依然として繊維事業が最大の売上高･利益を占めている。1990年代には幾多の日系繊維メーカーが繊維産業から撤退したが、東レは付加価値の高い繊維領域に特化、現在まで繊維事業で高い利益率を確保している。
✔最終利益と利益率
東レの純利益は2016年の純利益994億円をピークにやや下落、最近は700~800億円ほどでの推移が続いている。営業利益率は4~7%ほどで推移しており、大手メーカーとしては標準的な利益率。
✔自己資本比率と純資産
東レの自己資本比率は長期的な増加傾向が続いており、直近の2022年には自己資本比率48.1%と極めて健全な水準を確保。純資産も長期的な増加が続いており、直近では純資産1.64兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
東レの平均年収は700~750万円ほどの水準で推移している。大卒総合職の平均年収は780~830万円ほど、課長職レベルで1,100万円ほどと推定。平均年齢は増加傾向にあり、直近では40.3歳に到達。
✔従業員数と勤続年数
東レの従業員数は長期的に7,000人規模で推移していたが、2021年には6,000人規模へやや減少。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4.8万人ほど。平均勤続年数は増加傾向が続いているが、直近でも17.2年と大手メーカーの標準的水準。
総合評価
企業格付け：A
かつて東洋レーヨンの社名で帝国人造絹絲（現･帝人）と双璧を為した大手繊維メーカー。帝人が繊維から化学メーカーへとシフトしたのに対して、東レは今なお繊維事業を主力として稼ぐ事業構造を維持した。その後、両社の戦略差は大きな業績差異となっており、今では帝人を圧倒する企業規模にまで東レは成長。高付加価値な繊維製品にはめっぽう強く、ファーストリテイリングとは約20年に渡って共同開発を続けてきた。業績は売上高･利益いずれも横ばいだが、景気後退局面も含めて利益をしっかりと確保しており、過去10年間は赤字転落歴なし（最後の純損失転落は2009年）。財務体質も優良であり、自己資本比率48.1%と大手素材メーカーとしてはかなりの高水準を維持。
就職格付け：AA
日本を代表する大手繊維メーカーの1社、三井物産が設立した企業であり三井グループを構成する中核企業の1社。大株主名簿には三井住友銀行や三井不動産が名を連ねるほか、東京本社･大阪本社いずれも三井不動産のオフィスビルに入居している。給与水準は平均年収700~750万円ほど。大卒総合職の平均年収は780~830万円ほど、課長職レベルで1,100万円ほど。給与水準は大手メーカーの標準的な水準で抜きんでてはいないが、業績が安定的であるため景気後退局面での賞与減少がない安定感は魅力的。福利厚生は極めて充実しており、都内であれば家賃補助制度で最大13万円/月が支給。各工場に独身寮が併設されており、35歳までは月1万円ほどで生活できるため若手社員の貯金はかなり潤う。BtoBの素材メーカーとしては世間における知名度がかなり高い方でありため、社会的名声も十分。