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電機メーカー

理想科学工業の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

理想科学工業は、印刷機器を専門とする電機メーカー。1946年にガリ版印刷会社として創業。1977年に家庭用簡易印刷機「プリントゴッコ」を発売、1980年には孔版印刷機「リソグラフ」の開発に成功。現在では高速印刷技術において卓越した存在であり、旗艦製品の「オルフィス」は世界最速の毎分165枚の印刷が可能。キヤノンセイコーエプソンブラザー工業など競合が多い事務用機器業界において「低コスト・高速印刷」で差別化、独特の地位を築いている。

POINT

・高速印刷技術に強いプリンタ専業メーカー、不動産事業も展開
・売上高は微減傾向だが利益は横ばい、無借金経営で財務固い
・平均年収769万円で福利厚生も良好、平均勤続年数21年超と極めて良い

業績動向

✔売上高と営業利益

理想科学工業の売上高は2018年まで850億円前後で推移していたが、2019年から低迷*1。2022年は売上高747億円まで回復したが、1997年の売上高955億円からは縮小*2。営業利益はそこそこ安定しており、平常時で30億円前後・好調時で60億円前後で推移している。
*1:2019年に売上高が急落したのはCOVID-19感染拡大の営業。当社の主要顧客である企業でリモートワークが普及した他、官公庁・学校でも出勤人員が減少。オフィス・学校での印刷機会が急減したことが痛手に。
*2:長期的に売上高が減少してある要因は、企業・学校においてデジタル化・ペーパーレス化が進んだことによる印刷機会の減少がある。

✔セグメント別の状況

理想科学工業は、印刷機器事業(孔版印刷機・高速カラープリンタ・デジタル印刷機・プロダクションプリンタ・クラウドサービスなど)、不動産事業(ONE表参道・MPR新大阪ビルなどの賃貸)、の2事業を有する。
理想科学工業は祖業の印刷用機器に特化した事業展開を進めており、事業多角化を進めている同業他社(キヤノン・セイコーエプソン・ブラザー工業など)とは戦略が異なる。過去に取得した東京都心・大阪都心のオフィスビルからの賃貸収入も業績を下支えしており、とりわけ表参道一等地に立地する「ONE表参道」は高い競争力がある。

✔最終利益と利益率

理想科学工業の純利益は2019年・2020年を除けば、概ね30億円前後で安定的。営業利益率も2019年・2020年を除けば5%〜7%で推移しており、大手メーカーの標準的な水準を確保できている。

✔自己資本比率と純資産

理想科学工業自己資本比率は70%~75%前後の高水準で安定。有利子負債はごく僅かしかなく、実質無借金経営を達成*3。純資産は2019年まで減少傾向にあったが、同年以降は増加傾向に転換。
*3:同業他社(キヤノン・セイコーエプソン・ブラザー工業など)は事務用プリンタの斜陽カを踏まえて事業多角化への積極投資を進めるが、当社は事業多角化は手控えつつ財務体質を堅牢に保つことに注力している経緯がある。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

理想科学工業の平均年収は740万~700万円ほどの水準で推移。規模で当社を圧倒する大手プリンタメーカーに近い給与水準を確保している。総合職の場合、30歳で年収580万〜630万円、課長職レベルで年収880万~1,050万円が目安。

✔従業員数と勤続年数

理想科学工業の単体従業員数は2018年をピークに減少傾向へと転換、直近の2022年は1,600人規模の組織体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2,800人以上。平均勤続年数は直近で21.3年となっており、従業員の定着の良さは極めて良い。

総合評価

企業格付け:CC

■業績動向
微減傾向。海外売上高比率は50%に達するグローバル企業であるが、世界的なペーパーレス化・デジタル化の潮流により印刷需要が縮小している点が逆風。持ち前の高速印刷技術によって独特の地位を築いてはいるが、印刷需要そのものが減少しているため長期的な業績拡大を狙えるような状況にはない。とはいえ、オフィスからすべての紙が消滅することはありえないうえ、世界トップの高速印刷技術は一定の引き合いがある。利益率も悪くない水準で安定的であるため、需要縮小する環境下で適正規模へ縮小することで生き残れるだろう。

■財務体質
極めて良好。2022年には有利子負債が4,400万円に過ぎず、企業規模を考えれば「銀行とのお付き合い」程度しかない。かたや手元の現預金は190億円以上を確保しており、実質無借金経営で事業運営を続けている。自己資本比率も70%を上回っており、財務体質は極めて健全。

■ビジネス動向
インクジェット印刷へのシフトを模索。主力製品である孔版印刷機「リソグラフ」は需要が縮小傾向にあるため、インクジェット印刷への転換を急ぐ。もともと当社のインクジェット事業はオリンパスとの合弁事業であったが、2011年からは当社単独で事業展開。202年には毎分330枚もの印刷能力を確立した高速インクジェットプリンター「バレザスT2200」を投入。2023年には東芝テックのインクジェットヘッド事業の取得を決定。

就職格付け:CC

■給与水準
平均年収700万円以上。業界最大手のキヤノン・セイコーエプソン・ブラザー工業よりは劣るものの、当社は企業規模が桁違いに小さいにも関わらず平均年収の差は100万円以内に留まる。課長級となれば年収900万円以上には乗れるため、企業規模の割りに給与水準は良いと言えるだろう。

■福利厚生
大手企業並みの水準。若手社員は28歳になるまで独身寮に入寮でき、家賃は月額7,500円と格安。家賃補助制度も整っており、最大3万円が年齢制限なしに支給される。扶養手当も月額1.6万円×扶養人数分まで支給される。大卒総合職の平均残業時間も11.8時間と短いうえ、年間休日も125日はある。平均勤続年数21年以上という破格の定着の良さからも、居心地の良さが伺える。

■キャリア
大卒総合職はナショナル職と呼ばれ、転勤制限はない。営業職は日本全国に支店があるため転勤への覚悟が必要だが、技術職は茨城県に拠点が集中している為に転勤リスクは薄い。年功序列色が強いものの、実力がある社員については30代後半には管理職に昇格させる柔軟さもある。海外売上高比率50%のグローバル企業であるため、海外赴任の可能性も一定程度ある。

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