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海運会社

川崎汽船の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

川崎汽船は、日本郵船商船三井に次いで国内3位の規模を持つ大手海運会社。1919年に川崎造船所(現・川崎重工業)船舶部が分離して設立され、戦前から日本の海運業を支え続けてきた企業。1970年には日本初の自動車輸送船を投入、日本の自動車輸出の規模拡大を支えた。2017年には日本郵船・商船三井とコンテナ船部門と合併させて新会社ONEを発足。同社はコンテナ船において世界第6位の運航規模を誇るまでに規模を拡大している。

POINT

1.日系3大海運会社の一角、他大手2社より事業規模はかなり小さめ
2.海運市況に業績が振り回されるため、経営状況は歴史的にも安定しない
3.直近は平均年収1,300万円以上だが、海運不況時には770万円まで後退

業績動向

✔売上高と営業利益

川崎汽船の売上高は海運不況・コンテナ船部門を分離によって減少傾向*1が続いていたが、2020年以降は海運市況の好転により、売上高も増加に転じている。営業利益は2021年まで利益・損失を繰り返しながら推移していたが、2022年には自動車船部門の好調により利益急増。
*1:2017年にコンテナ船部門がONEに移管されたことで、同年以降は川崎汽船本体の売上高から同部門が離脱したことで売上高が減少。同社の利益・損失のみ営業外収益として反映される形態になっている。

✔セグメント別の状況

川崎汽船は、製品輸送(コンテナ船、自動車輸送船、近海内航船)、ドライバルク(ばら積み船)、エネルギー資源(油槽船、電力、液化天然ガス輸送船)の3事業を有する。
川崎汽船は多種多様な船舶を保有しているが、売上高と利益を支えるコア事業は製品輸送セグメントである。かつてコンテナ船部門は不採算事業として分社化されてONEに移管されたが、2020年以降には海運市況の好転によって稼ぎ頭の事業へと変貌。

✔最終利益と利益率

川崎汽船の純利益は2019年まで赤字を繰り返す苦しい業況が続いていたが、2020年以降は純利益が6000億円を上回る絶好調*2。営業利益率は2021年でも8.37%に過ぎないが、これはONEの利益が営業外収益としてカウントされることに起因。
*2:当社に限らず、海運会社は業績を海運市況に大きく左右される。海運市況は10年~20年ほどのサイクルで乱高下を繰り返す歴史的特徴があり、2020年以降は好調期に該当している。

✔自己資本比率と純資産

川崎汽船の自己資本比率は、2019年までは10%前後にまで低落して財務危機が懸念されたが、2020年以降の業績好転によって急回復。2020年には自己資本比率73.8%と著しく健全な水準にまで上昇。純資産も業績好転を追い風に急増しており、直近では純資産1.54兆円にまで急伸。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

川崎汽船の平均年収は業績次第で大きく変動しやすく、長期的に770万円~1,330万円で推移している。賞与次第で平均年収が極端に振れるが、総合職かつ業績好調であれば30歳で年収1,000万円を超える。平均年齢は39.0歳であり、大企業としてはやや若め。

✔従業員数と勤続年数

川崎汽船の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いているが、直近でも800人前後の少数精鋭の組織体制である。平均勤続年数は徐々に回復しているが、企業規模の割には14.5年とやや短め*4。
*4:2009年は平均勤続年数16.5年ほどであったが、2010年以降の大規模リストラとその後の業績不振によって下降した経緯がある。

総合評価

企業格付け:AA

業界トップの日本郵船・商船三井と比べると規模感はやや小さいものの、戦前から100年以上に渡って日本経済を海運で支えてきた名門企業。長らく業績低迷が続いていたが、COVID-19感染拡大期に物流が混乱したことで大幅な運賃高騰がコンテナ船分野で発生。2017年に日本郵船・商船三井と共同で設立したコンテナ船専用会社ONEが大幅増益を遂げたことで、川崎汽船は同社から多額の配当金を受け取って驚異的な増益を遂げた。約10年ぶりとなる海運バブルの波にのって業績は大復活を遂げ、純利益6,500億円を叩き出して財務健全性も大幅回復に成功した。が、海運業界は歴史的に運賃相場の大幅上昇と大幅下落を繰り返してきた業界。川崎汽船も業績好調と経営危機を歴史的に繰り返してきた企業であるため、今回の業績好調も遠からず終息すると見られる。海運バブルが一服した後に再び業績不振に陥るのか、利益を稼ぎ続けられるかを注視したい。

就職格付け:A

一般知名度はそこそこだが、一定以上のリテラシーがある層であれば誰もが知る名門企業。海運業界はグローバルに仕事ができるうえ給与水準が高いことで人気な業界、その中でも業界大手3社の一角であるから相当の人気企業である。総合職であれば30歳前後で年収750万~850万円には到達し、業績好調時であれば年収1,000万円を超える。2022年には平均年収1,300万円にも達しており、業績好調を従業員に還元している。当社の最大のネックは業績の不安定性。直近こそ業績絶好調だが、2010年には大規模リストラを断行したうえ2017年にはコンテナ船部門を別会社に分離した過去もある。2018年には自己資本比率が10%台で低迷する状況にあり、企業存続さえ心配される状況であった。海運業界は好不況が極端に分かれるため、安定した終身雇用を期待する場合には注意。