カテゴリー
石油資源会社

INPEXの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

INPEXは、グローバルで石油・天然ガスの開発・生産・販売を行っている大手石油開発会社。1966年に石油資源開発が設立した北スマトラ海洋石油資源開発を源流とし、2006年に国際石油開発と帝国石油が合併して誕生。石油依存度が高いうえ全量を輸入に頼る日本のエネルギー確保安定化・効率化を目的に設立された国先企業であり、現在も筆頭株主は経済産業大臣。全上場企業において黄金株(買収に関する決議事項に拒否権を発動できる特殊株式)が存在する唯一の企業であり、当該1株は経済産業大臣が保有。

POINT

・石油・天然ガス開発専業の大手石油開発会社、国策企業
・売上高・利益は急成長、ただし原油価格と為替レートの追い風という要因大
・大卒総合職は30歳850万円ほど、官僚OBの天下りで出世枠が限られる

業績動向

✔売上高と営業利益

INPEXの売上高は過去は1兆円超の水準で安定していたが、2022年は爆発的に成長して2.32兆円に到達*1。直近の2023年にはやや鈍化したが、それでも売上高2.16兆円を確保。営業利益も売上高に比例して急成長を遂げ、2022年には1.25兆円に到達。
*1:INPEXの売上高は原油価格と為替レートによって大きく左右される。2021年は原油価格が1バレル62ドルから128ドルまで急騰したうえ、為替レートが1ドル130円以上の円安で推移したことで業績が急激に上向いた。外部環境に業績が極端に左右されることが特徴。

✔セグメント別の状況

INPEXは日本事業(南長岡ガス田・成東ガス田の開発)、アジア・オセアニア事業(オーストラリア・インドネシア・ベトナムにおける原油・天然ガスの開発、地熱発電など)、ユーラシア事業(カザフスタン・アゼルバイジャンにおける原油開発)、中東・アフリカ事業(アブダビにおける原油開発)、米州事業(テキサスにおけるシェールオイル開発)の4事業を有する。
INPEXはグローバルに世界各地で原油・天然ガスなどを開発しているが、売上高・利益の50%以上は中東・アフリカ事業が占める。同事業の中でもアブダビ海上油田は最重要拠点であり1973年から開発してきた歴史を持つ。アブダビプロジェクトの詳細についてはINPECの特設サイトを参照されたい(参考リンク)。

✔最終利益と利益率

INPEXの純利益は2021年以降に急増しており、2022年には純利益4,383億円を記録。売上高と同様に原油価格と為替レートによって左右されやすい。営業利益率は業績不調時であっても30%を上回り、業績好調時には60%以上もの高利益率に達する。

✔自己資本比率と純資産

INPEXの自己資本比率は60%以上の高水準で安定的に推移しており、安定した利益体質を加味すれば倒産リスクとはおよそ無縁。純資産は概ね3兆円規模で推移していたが、直近の業績好調により2022年には4兆円を突破。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

INPEXの平均年収は900万円台で極めて安定的に推移していたが、2023年には1,117万円まで増加*2。基本的な給与水準が充実していることに加えて、海外赴任時に給与手当が急増する。平均年齢は39歳前後で安定、イメージの割に社員の年齢構成はやや若め。
*2:業績好調による給与増加に加えて、為替レートの円安推移によって海外出張・赴任の外貨建て手当が増加している事情もある。

✔従業員数と勤続年数

INPEXの単体従業員数は1,200人~1,300人規模で安定的に推移しており、日本のエネルギー供給を担う国策企業の割にはコンパクトな組織規模。平均勤続年数はやや低下傾向にあり、直近で13.1年。高待遇&安定企業の割にはやや短め。

総合評価

企業格付け:AA

■業績動向
絶好調。石油価格・為替レートに業績を左右されやすい性質が強いが、2021年以降は世界的な資源価格高騰・円安の恩恵をフル享受。かつては売上高1兆円・営業利益3~5,000億円が標準的であったが、直近2年間は売上高2兆円・営業利益1兆円にまで業績拡大している。資源価格・円安が落ち着けば業績一服するのは明白であるが、それでも過去圏の業績を謳歌できているのは心強い。

■財務体質
良好。直近では自己資本比率60%以上をしっかり確保できている。資源開発・探鉱は多額資金を投じても成功するとは限らず、発見できても商業生産できない小規模埋蔵量であることも少なくない。資源開発に成功したとしても、資源価格・為替レートなどの外部環境の変化で採算が急悪化することも。そのため、堅実な財務体質の維持に神経を払っている。

■ビジネス動向
中期ビジョン「INPEX vision@2022」を策定。昨今の社会的要求であるカーボンニュートラルに真っ向から逆行する石油開発を主力事業としているが故に、2050年までの事業多角化を見据えた投資を急ぐ。具体的には、①石油・天然ガス開発のCO2排出量削減、②水素・アンモニア製造開始、③再生可能エネルギー開発、④カーボンリサイクル技術開発、など。既存の石油開発事業は柱として維持しつつも、2030年までに最大1兆円規模のカーボンニュートラル投資を目指す。

就職格付け:A

■給与水準
直近2年は業績絶好調で平均年収1,000万円を超えるが、業績通常時なら900万円台。国策企業トップ級の給与テーブルであるが、民間の石油開発会社にはやや劣る。年功序列色が強いこともあって昇給スピードは意外と速くはなく、総合職の30歳で年収800万円強が1つの目安となる。海外赴任すれば年収1.5倍ほどに跳ね上がるが、総合商社の海外赴任と比べるとやはり待遇時は劣るか。

■福利厚生
特筆すべき点はない。若手社員には独身寮が月額1万円で提供されるが、築古物件の比率が高いため評判は良くはない。住宅補助はあるものの35歳まで月額3.5万円(首都圏勤務なら5万円)であり、企業イメージの割には少ないと言わざるを得ない。公式サイトの初任給に左記の家賃補助を加えて示しており、初任給を高く見せようとしている(通常は初任給に家賃補助は加算しないのが慣例)。フレックス勤務・特別休暇制度などは揃っているが、今時の民間大手ならば普通レベルの水準。

■キャリア
ビジネス総合職・技術総合職の2職種制。ビジネス総合職は、営業部門・コーポレート部門・プロジェクトマネジメント等に従事する一方、技術総合職は技術開発部門・探鉱部門・生産部門などに配属される。現代表取締役社長も含め、官僚OBの天下り先として著名であり、プロパー入社での出世枠が削られている一面も。2023年には行政改革担当大臣が天下り人事を問題視した時期もあったが、続報は特にない。

就職偏差値ランキング【完全版】はこちら!