企業概要
住友重機械工業は、精密機械・船舶・物流設備・半導体製造装置などを製造する総合機械メーカー。1888年に設立された別子銅山の採鉱機械部門を源流とする名門企業。多岐に渡る事業領域を持っているが、それぞれの事業部門で世界的シェアを有する製品も多い。変速/減速機で国内シェア1位、射出成型機で国内シェア首位級、バイオマス発電向け蒸気タービンで世界シェア首位級、循環流動層ボイラで国内シェア1位。2018年には伊ラファ―ト社を買収して、産業用モータ事業を強化。
・極めて広範な事業領域を持つ住友Gの重工メーカー、世界シェア上位製品多数
・売上高は緩やかな増加傾向、利益体質と財務体質は安定的
・平均年収835万円と業界上位級、家賃補助制度が手厚いうえ終身受給できる
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。業績は横ばいで事業内容も華やかさに欠けるが、質実剛健に利益を確保する事業展開に強み。待遇も良好で一般知名度も低くなく、総じて弱点がない。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用人数は年間100人前後ほどだが、うち事務系採用枠は20名前後。日本全国の著名大学から採用を幅広く行っているが、総合職はハイレベル大学の出身者がやはり多い。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・九州大学・筑波大学・千葉大学・横浜国立大学・新潟大学・静岡大学・佐賀大学・名古屋工業大学・豊橋技術科学大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・青山学院大学・関西学院大学・立命館大学・東京理科大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と経常利益
住友重機械工業の売上高は0.7兆~0.8兆円レベルで推移していたが、2023年には過去最高となる売上高1兆円を突破*1。営業利益は440億~750億円レベルを安定的に確保しており、重工メーカーでありながら景気後退局面にも底堅い推移となっている。
*1:2023年に売上高が増加した理由は、①物流業界の人手不足による物流機械の需要増加、②原材料価格の高騰を受けた値上げ対応による増収効果、③為替レートの円安進行による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
住友重機械工業は、メカトロニクス事業(モータ・減/変速機・インバータ・位置決め装置など)、インダストリアルマシナリー事業(プラ/フィルム加工機・冷凍機・半導体製造装置・工作機械・防衛装備品など)、ロジスティクス&コンストラクション事業(油圧ショベル/クレーン、物流/駐車場システム、運搬荷役機械など)、エネルギー&ライフライン事業(造船、ポンプ、タービン、発電装置、大気汚染防止装置など)、その他事業、の5事業を有する。
当社の事業領域は非常に多岐に渡っており、機械技術と電気電子技術をベースに幅広く事業展開していることが特徴。超微細加工を行う半導体製造装置から大型タンカーをはじめとする船舶建造までを事業領域としており、ここまで多角的な事業展開を行う会社も珍しい。2024年には造船事業からの撤退を表明したが、修繕船事業は継続する(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
住友重機械工業の純利益は200億~400億円レベルで推移してきたが、2022年には急失速して58億円に縮小*2。営業利益率は5%~8%レベルで長期的に安定しており、利益率においては重工大手3社を凌駕する水準にある*3。
*2:2022年に純利益が減少した理由は、業績不振に陥った海外子会社の減損損失。2017年に買収した蘭FWエナジー社で減損損失177億円を計上、2020年に買収した伊ラファ―ト社で減損損失30億円を計上。この減損損失で207億円の下振れとなり、純利益が急減した。
*3:三菱重工業は営業利益率3~5%レベル、IHIは3~5%レベル、川崎重工業は2~4%レベルである。
✔自己資本比率と純資産
住友重機械工業の自己資本比率は50.8%(2024年)となっており、重工大手3社を大きく突き放す高水準にある*4。純利益を安定確保してきた過去の蓄積が幸いして財務健全性は優良。純資産も堅調な増加を示しており、2024年には6,464億円に到達。
*4:三菱重工業は営業利益率35%ほど、IHIは17%ほど、川崎重工業は23%ほどである。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
住友重機械工業の平均年収は835万円と大手メーカーとしては標準的な水準。大卒総合職であれば30歳で600万~700万円、課長職レベルで990万~1,200万円ほどに達する。平均年齢は43歳レベルで横ばいで推移しており、大手企業の標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
住友重機械工業の単体従業員数は右肩上がりの増加傾向が続いており、2024年には4,410人の組織体制となっている。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は2.53万人ほど。平均勤続年数はやや減少傾向にあり、2024年には13.5年となっている。
総合評価
企業格付け:BBB
■業界ポジション
重工メーカーとしては三菱重工業・川崎重工業・IHIに続く業界4位。一括りに重工メーカーと呼ばれるが、それぞれ得意とする領域はかなり異なっているので注意が必要。ちなみに当社の得意領域は物流機械・産業機械であり、とりわけ物流機械においては国内トップクラスの存在感。
■業績動向
やや成長。顧客業界の旺盛な設備投資を追い風に業績を拡大しており、得意分野の物流機械は人手不足による自動化ニーズによって受注活況。長年に渡って売上高6,000億〜8,000億円ほどで横ばいであったが、2023年には売上高1兆円を突破。販管費のコスト高によって利益はやや伸び悩むが、概ね堅調と評価できる。売上高だけで言えば業界3位だが、利益率においては大手3社を上回っているうえ、利益の安定性においても傑出。
■財務体質
良好。自己資本比率は50.8%(2024年)と高水準。安定的な利益を長年に渡って蓄積してきたことで、負債に依存しすぎない健全な財務体質を築いている。有利子負債は2,386億円(2023年)に留まっており、企業規模を考えれば相当に少なめの水準。
就職格付け:BB
■給与水準
平均年収は835万円(2024年)と、他の重工メーカー大手と大きくは変わらない水準。大卒総合職ならば30歳で600万〜700万円、課長職レベルで990万〜1,200万円ほど。年功序列色が強いために給与・昇進差はつきにくいが、大卒総合職かつ一定以上の能力を示し続ければ管理職ポストを与えられる可能性が高い。
■福利厚生
良い。大手メーカーらしく独身寮・社宅・家賃補助制度などが整っている。特筆すべきは家賃補助制度、最大6.5万円かつ家賃の65%を”終身”受給できるうえ、社宅や独身寮も充実。生活費に占める支出が大きい住宅費を手厚くサポートして貰える制度は、安定した雇用と生活を保障する日本企業の鏡か。有給休暇は新卒から22日を付与しており、3大連休には9連休以上の休みもある。
■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。事業部門別採用を導入しており、研究開発・設計・生産技術・製造・品質保証・営業技術・情報システムなどの部門別で入社が決定する。そのため配属ガチャと呼ばれる儀式がなく、ミスマッチが起こりにくいのは美点。入社後は採用部門での経験を蓄積して専門性を高めることが期待され、部門間を跨いだローテーションは多くはない。