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重工メーカー

IHIの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

IHIは、航空/船舶エンジン・産業機械・原子力設備・防衛機器・交通システムなどを製造する総合重工メーカー。1853年に江戸幕府が開所した水戸藩・石川島造船所を源流とし、近代以前から現代に至るまで航空機・船舶・産業機械において日本を代表する総合重工メーカーとして君臨。現在においても、航空エンジンシャフト世界シェア約60%・LNG貯蔵タンク世界シェア20%・ターボチャージャー世界シェア20%を掌握。現在のいすゞ自動車・ジャパンマリンユナイテッドはIHIから分離独立した企業である他、かつて造船所があった東京都・豊洲地区に多くの土地を保有する「豊洲の大家」でもある。

POINT

1.大手総合重工メーカーの一角、航空エンジン関連事業が利益を下支え
2.売上高・利益いずれも停滞、財務体質も自己資本比率20%ほどで低い
3.平均年収792万円とやや高め、福利厚生は意外と普通レベル

業績動向

✔売上高と営業利益

IHIの売上高は概ね1.1兆~1.5兆円のレンジで推移しており、長期的な横這い傾向が続いている*1。営業利益は年度によってまちまちであるが、営業損失には転落しにくい。
*1:IHIの売上高は長期的に伸び悩むが、①主力事業が成熟産業であり需要急拡大しにくい点、②IHI自身が過去の経営計画において売上拡大よりも利益・採算を重視してきた点、がある。

✔セグメント別の状況

IHIは資源・エネルギー・環境事業(陸用原動機・船舶原動機・カーボン・原子力機器など)、社会基盤・海洋事業(橋梁・水門、交通システム、建材、都市開発など)、産業システム・汎用機械事業(ターボチャージャー・機械式駐車場・産業システム・物流機械など)、航空・宇宙・防衛事業(航空エンジン・ロケット・防衛機器)、の4事業を有する。
IHIは事業多角化が進んだ企業であるが、売上高・利益いずれも特定事業に依存しないバランス型である。ただし、利益面においては航空・宇宙・防衛事業が最大となっており、同事業が利益面を下支えする構造。

✔最終利益と利益率

IHIの純利益は80億~600億円ほどのレンジで推移。COVID-19感染拡大期にも利益を確保できる底堅さが強みであったが、2023年には巨額の純損失を計上する見込み*2。営業利益率は2~6%と大手製造業としては凡庸な水準。
*2:2023年は純損失900億円を計上する見通し。利益の屋台骨を支えてきた航空エンジン事業においてPW1100G-JMエンジンの不具合が判明、大規模な追加検査・保障に伴う費用負担が発生(参考リンク)。

✔自己資本比率と純資産

IHIの自己資本比率は15~22%ほどの水準で推移。大手製造業としては低水準であり、負債比率の高さが目立つ。純資産も長期的に伸び悩んでおり、財務体質の改善が進んでいない。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

IHIの平均年収は長年に渡って710~790万円レベルで推移しており、横ばい傾向が続く。年功序列型の給与制度であり、大卒総合職は30歳前後で年収550万~670万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,150万が目安。

✔従業員数と勤続年数

IHIの単体従業員数は微減傾向が続いており、直近では7,700人ほどの組織規模。ただし子会社や関連会社が約200社にも及ぶため、連結従業員数は2.84万人ほどである。平均勤続年数は直近で16.5年と大手メーカーの標準的水準。

総合評価

企業格付け:A

日系三大重工メーカーとして三菱重工業・川崎重工業と並びたつ知名度がある総合重工メーカー。規模感では三菱重工業の約半分程度の売上高であり、川崎重工業とほぼ同格。売上高・利益はいずれも長期的に横這い傾向が強く、成長性は希薄。財務体質も自己資本比率が15%~20%で推移しており、いまいち。2023年には利益貢献が大きかった航空エンジン事業で巨額損失を計上する見込みで、もともと弱かった財務体質へ追い打ちのダメージが発生する。業績悪化時には土地資産を切り売りして凌ぐ特徴があり、過去の業績悪化時にもかつて造船所があった東京都・豊洲エリアの土地資産を売却して凌いできた歴史がある。直近でも2021年・2024年に土地売却を予定しており、巨額の含み益と現金創出力がある土地を売却する点には疑問の声も。土地資産の切り売りには限界があるため、それまでには財務体質の改善が必要であろう。

就職格付け:BBB

BtoBに特化した総合重工メーカーであるが、その割には一般的知名度が高めであり世間体はかなり良好。航空エンジンをはじめとするダイナミックな事業内容から理系人材からの人気度はかなり高い。直近の給与水準は平均年収792万円となかなか良好だが、業績悪化時には700万円台前半まで後退するため大手メーカーとしては中の上レベル。福利厚生でも大手メーカー並みに独身寮・転勤者用社宅などがあるが、若手社員向けの家賃補助制度がないのはやや減点要素。ポイントは事業部門が多岐に渡る点にあり、どの部門に配属されるかで人生が決まる点。過去を振り返れば、①2002年に船舶部門を分社化、②2019年にプラント事業を分社化、③2016年にIHI建機を加藤製作所へ売却、④2022年にIHI原動機の一部を三井E&Sへ売却、など。コア事業へ配属されるか、傍流事業への配属かで大きく人生が変わるだろう。

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