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重工メーカー

【勝ち組?】IHIの就職偏差値と平均年収・待遇【企業研究レポート】

企業概要

IHIは、航空/船舶エンジン・産業機械・原子力設備・防衛機器・交通システムなどを製造する総合重工メーカー。1853年に江戸幕府が開所した石川島造船所を源流とし、近代以前から現代に至るまで航空機・船舶・産業機械における総合重工メーカーとして君臨。現在では航空エンジンシャフト・ターボチャージャーなどで世界シェア上位。現在のいすゞ自動車・ジャパンマリンユナイテッドはIHIから分離独立した企業である他、かつて造船所があった東京都・豊洲地区に多くの土地を保有する「豊洲の大家」でもある。

POINT

・大手総合重工メーカーの一角、航空エンジン関連事業が利益を下支え
・売上高・利益いずれも停滞、財務体質も自己資本比率20%未満
・平均年収792万円で最速30代で課長職に、配属事業部で人生が変わる

就職偏差値

68(上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

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業績動向

✔売上高と営業利益

IHIの売上高は概ね1.1兆~1.5兆円のレンジで推移しており、長期的な横這い傾向が続いている*1。営業利益は2022年まで400億~820億円ほどで推移していたが、2023年には純損失701億円に転落。
*1:IHIの売上高は長期的に伸び悩むが、①主力事業が成熟産業であり需要急拡大しにくい点、②IHI自身が過去の経営計画において売上拡大よりも利益・採算を重視してきた点、がある。

✔セグメント別の状況

IHIは資源・エネルギー・環境事業(陸用原動機・船舶原動機・カーボン・原子力機器など)、社会基盤・海洋事業(橋梁・水門、交通システム、建材、都市開発など)、産業システム・汎用機械事業(ターボチャージャー・機械式駐車場・産業システム・物流機械など)、航空・宇宙・防衛事業(航空エンジン・ロケット・防衛機器)、の4事業を有する。
IHIは事業多角化が進んだ企業であるが、売上高・利益いずれも特定事業に依存しないバランス型である。本来であれば航空・宇宙・防衛事業が全社利益を支える稼ぎ頭となっているが、直近では航空エンジンの不具合問題によって同事業は赤字転落している状況。

✔最終利益と利益率

IHIの純利益は80億~600億円ほどのレンジで推移していたが、2023年には純損失682億円に転落*2。営業利益率は2~6%と大手メーカーとしては凡庸な水準に留まる。
*2:2023年には利益の屋台骨を支えてきた航空エンジン事業においてPW1100G-JMエンジンの不具合が判明、大規模な追加検査・保障に伴う費用負担が発生(参考リンク)。

✔自己資本比率と純資産

IHIの自己資本比率は15~22%ほどの水準で推移。大手メーカーとしては低水準であり、負債比率の高さが目立つ。純資産も長期的に伸び悩んでおり、財務体質の改善が進んでいない。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

IHIの平均年収は長年に渡って710~790万円レベルで推移しており、業績に応じた上下変動が大きめ。年功序列型の給与制度であり、大卒総合職は30歳前後で年収550万~670万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,150万が目安。

✔従業員数と勤続年数

IHIの単体従業員数は微減傾向が続いており、直近では7,700人ほどの組織規模。ただし子会社や関連会社が約200社にも及ぶため、連結従業員数は2.84万人ほどである。平均勤続年数は直近で16.5年と大手メーカーの標準的水準。

総合評価

企業格付け:BB

■業界ポジション
日系三大重工メーカーとして三菱重工業・川崎重工業と並びたつ知名度がある総合重工メーカー。規模感では三菱重工業には売上高で2倍以上の差が付けられており、かつて同格であった川崎重工業にも引き離されつつある。

■業績動向
売上高・利益はいずれも長期的に横這い傾向が強く、成長性は希薄。それでも2010年代以降は利益が安定している点に強みがあったが、2023年には航空エンジンの不具合問題によって巨額損失に転落してしまった。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた政府の防衛予算の拡充は追い風となり得るものの、業績悪化を受けた事業構造の見直しは必要となるであろう。

■財務体質
微妙。自己資本比率が15%~20%で推移しており、大手メーカーとしては低めの水準に留まる。2022年には自己資本比率22%まで回復させたものの、2023年に巨額損失を計上したことで再び17%台まで後退してしまっており、財務体質の良化がなかなか進まない。有利子負債は5700億円以上(2023年)となっており、業績に対して負債の重さが辛い。

■土地の切り売りの限界
業績悪化時には土地資産を切り売りして凌ぐ特徴があり、過去の業績悪化時にもかつて造船所があった東京都・豊洲エリアの土地資産を売却して凌いできた歴史がある。直近でも2021年・2024年に土地売却を予定しており、巨額の含み益と現金創出力がある土地を売却する点には疑問の声も。土地資産の切り売りには限界があるため、それまでには財務体質の改善が必要であろう。

就職格付け:BB

■給与水準
直近の平均年収は792万円であり、業界2位の川崎重工業を凌ぐ水準にある。大卒総合職は30歳前後で年収550万~670万円ほど、課長職レベルで年収1,000万~1,150万が目安。年功序列色が強いものの、最優秀層であれば30代中盤には課長職レベルに昇格することも不可能ではない。

■福利厚生
福利厚生は重厚長大メーカーのイメージに反して凡庸であり、大手メーカー並みに独身寮・転勤者用社宅などがあるが、若手社員向けの家賃補助制度がないのは減点要素。独身寮には最長で35歳まで居住できるため他企業よりも期間が長めであるが、最後まで居続けるケースは結婚適齢期を考えるとそれほど多くはないだろう。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。技術系総合職は研究開発・生産技術・設計・品質保証・情報システムなどに配属され、事務系総合職は事業企画・マーケティング・経理・法務・人事などに配属される。いずれも入社時の職種で専門性を高める道が基本形である。現代表取締役会長は航空宇宙畑の出身、現取締役社長は資源エネルギー畑の出身である。

■配属先と人生
ポイントは事業部門が多岐に渡る点にあり、どの部門に配属されるかで人生が決まる点。過去を振り返れば、①2002年に船舶部門を分社化、②2019年にプラント事業を分社化、③2016年にIHI建機を加藤製作所へ売却、④2022年にIHI原動機の一部を三井E&Sへ売却、など。コア事業へ配属されるか、傍流事業への配属かで大きく人生が変わるだろう。

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出典:株式会社IHI(有価証券報告書)