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重工メーカー

三井E&Sの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

三井E&S(旧・三井造船)は、船舶エンジン・港湾クレーンを主力とする重工メーカー。1917年に三井物産造船部として岡山県児島郡で創業。1924年には国産初のディーゼルエンジン船の建造に成功し、戦前から造船業界の雄として君臨。1970年代には港湾クレーン・浮体式石油ガス生産設備(FPSO)へと事業領域を拡大し、FPSO分野で世界2強の一角である三井海洋開発を誕生させた。2017年以降に海外事業の失敗で業績悪化、造船・艦艇・エンジニアリング事業から事実上撤退。船舶エンジン・港湾クレーンを軸に再出発。

POINT

・船舶エンジン・港湾クレーンが主力の重工メーカー、業績悪化で事業再編
・深刻な業績悪化に苦しんだが2022年からは回復傾向、財務体質も改善
・大卒総合職は30歳で年収550万円強・課長職で870万円ほどが目安

業績動向

✔売上高と営業利益

三井E&Sの売上高は右肩下がりで減少。全盛期の2014年には売上高8,165億円を記録したが、2022年には売上高2,623億円まで急落*1。営業利益は2017年~2021年まで大赤字が続いたが、2022年には6年ぶりに黒字化を果たした*2。
*1:売上高が急減した理由は、2017年からの業績悪化を受けた事業整理。2021年に祖業の船舶事業を常石造船へ売却、艦艇事業を三菱重工業へと譲渡。エンジニアリング事業も完全撤退の予定。
*2:三井E&Sの業績悪化の理由は、エンジニアリング事業のインドネシア火力発電所工事で巨額損失を計上した点。現地の過酷な気象環境・海流の見積もりが甘く、海底配管の工事が難航。度重なる再工事を強いられたうえ、工事遅延によるペナルティにより大損失が発生した。

✔セグメント別の状況

三井E&Sは、船舶事業(船舶・船舶関連装置の製造)、海洋開発事業(三井海洋開発による浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出装置)、機械事業(船舶エンジン・ガスエンジン・コンテナクレーン・コンテナターミナルシステムなど)、エンジニアリング事業(発電事業、海外土木・建築工事)の2事業を有する。
かつては事業多角化に成功していたが、2017年以降の業績悪化により事業整理。造船事業は常石造船へ売却、艦艇事業は三菱重工業へ譲渡、エンジニアリング事業は撤退。現在では機械事業が売上高・利益の70%以上を占めており、船舶エンジン・港湾クレーンが主力となっている。なお、優良子会社である三井海洋開発の株式は保有し続けており、同社の海洋開発事業も利益を支えている。

✔最終利益と利益率

三井E&Sの純利益は2017年~2021年まで大赤字が継続、累計1,800億円以上の純損失を計上した。2022年には純利益155億円を確保、6年ぶりに好転を果たした*3。営業利益率は2018年の大底から回復傾向にあるが、直近でも3.57%と高くはない水準。
*3:業績回復の理由は、①エンジニアリング事業のインドネシア火力発電所工事が進捗率90%に達して完工寸前となった点、②機械事業の港湾クレーン・船舶エンジンの利益が堅調であった点、が理由。

✔自己資本比率と純資産

三井E&Sの自己資本比率は2017年以前も20%台で低めであったが、同年以降の業績悪化で10%未満の危機的水準にまで急降下。2022年に自己資本比率24%まで急増させた*4ことで峠は越えたが、依然として高くはない水準。純資産は2017年以降の業績悪化で大きく毀損、純資産の多くを失う結果となった。
*4:2022年に自己資本比率が急回復した理由は、毀損した財務体質を回復させるために第三者割当によるA種優先株式・新株予約権を発行した点にある(参考リンク)。割当先となる三井住友フィナンシャルグループから約170億円を調達。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

三井E&Sの平均年収は直近2年間は800万円以上で推移しているが、これは持株会社の40人のみの平均年収。2018年に持株会社制へ移行する以前は平均年収610万円前後であった。総合職の場合、30歳で年収550万~630万円、35歳前後で年収700万円を超える。課長職レベルで年収870万~980万円が目安。

✔従業員数と勤続年数

三井E&Sの単体従業員数は2018年の持株会社制への移行によって急減、直近の2022年には40人のみ。事業会社も含めた連結従業員数は5,700人ほど。平均勤続年数は直近で20.6年と長いが、これは持株会社の40人のみの平均勤続年数であるため参考にならない。持株会社制に移行する以前は、平均勤続年数が15年前後となっており、大手メーカー並みの水準であった。

総合評価

企業格付け:CCC

■業績動向
極端な業績悪化からようやく回復。2017年以降のインドネシア火力発電所工事の失敗により、極端な業績悪化を経験。財務体質が毀損したことで数多くの事業を手放さざるを得ない状況に追い込まれ、売上高8,000億円規模から2,500億円規模まで縮小する悲劇的結果となった。2022年には船舶エンジン・港湾クレーンを主力とする機械メーカーとして再出発したが、2023年には旺盛な受注によって利益も回復傾向。失うものは多すぎたが、いったんは再建を果たした。

■財務体質
改善傾向。2017年以降の巨額損失によって一時は自己資本比率7%代まで低下、企業存続が危ぶまれるも峠は越えた。財務体質は大きく悪化したが、2022年にはA種優先株式・新株予約権を発行した資金調達で手元資金を確保。2023年には本業の業績回復により、財務体質の改善が更に進む予定。

■ビジネス動向
新しい中期経営計画では積極攻勢フェーズへの移行を志向。新たな柱である船舶エンジン・港湾クレーンの育成に集中投資。2022年にはIHI原動機から大型船舶エンジン事業を買収する契約を締結。船舶エンジン分野での国内首位のシェアを更に向上させる。港湾クレーン分野では、自動運転化・自動保守化の研究開発を急ぐ。良くも悪くも事業分野が絞り込まれた為、競争力を底上げしての生き残りを図る。

就職格付け:CC

■給与水準
大手重工メーカーよりやや少ない水準。直近は平均年収840万円であるが、これは持株会社の従業員40人のみの平均年収。持株会社制へと移行する前の給与水準を勘案すると、事業会社の一般社員を含めた平均年収は600万円前後と推定される。大卒総合職の場合は35歳前後で課長補佐へと昇進すると年収700万円は超え、課長職レベルで年収900万円前後が目安。2023年に人事制度を20年ぶりに刷新、給与水準を引き上げると共に年功序列色を薄めた。

■福利厚生
企業規模なり。主力事業所には社宅・独身寮が整備されており、1万円/月ほどの自己負担で居住できる。ただし家賃補助制度はないため、社宅を利用しない場合は自己負担となる。年間休日が127日と多めであるうえ、入社初年度から有給休暇が22日も付与される。

■キャリア
事務系・技術系の2職種制。入社後は事業分野に応じて三井E&Sグループ各社へと配属される。本社部門は東京都・築地での勤務となるが、主力事業所は岡山県・大分県に所在しているため技術系職種は地方勤務が主。2023年の人事制度改定によって若手人材の抜擢人事にも可能としており、今後は能力がある若手人材を早期登用する方針。海外事業にも力を入れており、海外赴任・出張のチャンスも。

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