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化学メーカー

旭化成の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

旭化成は、基礎原料品・合成樹脂・電子材料・注文住宅・医薬品などを展開する総合化学メーカー。1922年に化学繊維の製造を目的に創業、1933年には同業の延岡アンモニア絹絲・日本ベンベルグ絹絲と合併して日窒コンツェルンの中核企業へと転換。戦後には合成樹脂・建築材料・石油化学へと事業多角化を推進、1970年には「へーベルハウス」ブランドで住宅事業へと進出。現在ではリチウムイオン電池用セパレータ・電解槽・電子コンパス・半導体向け感光性樹脂において世界シェア上位を誇り、世界20ヵ国以上で事業展開。

POINT

・化学繊維から発展した総合化学メーカー、医薬品・住宅・電子材料なども展開
・売上高は増加するもM&A失敗で利益低迷、2022年は過去最悪の純損失に転落
・平均年収760万円で年功序列色が強い、平均勤続年数13.9年とやや短め

業績動向

✔売上高と営業利益

旭化成の売上高は2020年まで2兆円前後での推移が続いていたが、同年以降は増加傾向へと転換。2022年には売上高2.73兆円を達成*1。営業利益は1,500億~2,000億円レベルで横ばい傾向が続いているが、2022年は1,284億円まで低下した。
*1:2021年から売上高が増加した主要因は、①前年までCOVID-19感染拡大で需要低下していた反動増、②世界的な原材料費の高騰を受けた石化製品・樹脂製品などの値上げ対応による増収、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2022年に営業利益が減少した理由は、①マテリアル事業が販売数量減・固定費増加で減益に陥った点、②電池向けセパレータ事業が買収失敗と需要減少により利益急減した点、など。

✔セグメント別の状況

旭化成は、マテリアル事業(スチレンモノマー・ポリエチレン、電池用セパレータ、繊維材料・樹脂、電子材料、フィルムなど)、住宅事業(注文住宅「へーベルハウス」・都市型マンション「アトラス」、リフォーム、建築材料など)、ヘルスケア事業(医薬衣料品・血液透析機器・心肺蘇生器など)、その他事業(エンジニアリング事業・人材派遣など)、の6事業を有する。
祖業のマテリアル事業は、基礎原料(基礎原料・合成樹脂・合成ゴムなど)から電池用セパレータ・濾過膜などの製品群までを幅広く扱っているため、売上高の約48%を占める規模感。2022年はマテリアル事業が減益に沈んだこともあり、住宅事業・ヘルスケア事業が全社利益を大きく下支えする構造となっている。

✔最終利益と利益率

旭化成の純利益は2017年の1,702億円をピークに横ばいが続いていたが、2022年には過去最悪となる純損失919億円に転落*3。営業利益率は8%~9%前後の高めの水準で推移していたが、2022年には4%代まで急落。
*3:2022年の巨額損失の理由は、2015年に買収した電池セパレータ企業の米・ポリポア社における減損損失が主要因。同社の買収によって電池セパレータで世界シェア首位を掌握する想定であったが、同社の業績悪化で減損損失の計上に至った。

✔自己資本比率と純資産

旭化成の自己資本比率は50%前後の水準を長年に渡って継続しており、良好。ただし2019年以降は積極的M&Aにより有利子負債が増加*4しており、自己資本比率は微減傾向。純資産は過去8年間でほぼ倍増しており、直近は1.3兆円規模に到達。
*4:2019年に免疫抑制剤の医薬ベンチャー企業の米・ベロキシス社を買収(参考リンク)。従業員60人のベンチャー企業の買収ながらも約1,400億円を投じる必要があったため、ブリッジローンで資金調達したことで有利子負債が増加。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

旭化成の平均年収は長期的に750万~770万円ほどで推移しているが、2018年頃と比べると平均年収は微減傾向。総合職の場合、30歳で年収700万~770万円、課長職レベルで年収900万~1,050万円が目安。財閥系大手化学メーカーには劣るが、中堅化学メーカーは上回る給与水準である。

✔従業員数と勤続年数

旭化成の単体従業員数は長期的に増加傾向が続いており、直近では8,787人に到達。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4.88万人に達する。平均勤続年数は減少傾向にあり、直近で13.9年と企業規模の割に従業員の定着は今ひとつ。

総合評価

企業格付け:BB

■業績動向
横ばい。売上高こそ2021年から増加傾向にあるが、利益は低迷。2022年には過去最悪となる純損失919億円を計上するに至っている。もともとは営業利益率が7%~9%ほどで安定している点が強みであったが、2022年にはマテリアル事業の低迷で4%台までの後退を強いられた。

■財務体質
良好。やや自己資本比率が低下傾向にあるものの、依然として自己資本比率47%とかなりの高水準を維持。が、かつて有利子負債を3,000億円強ほどに留めていたのに対して、直近の2022年には有利子負債9,394億円まで増加しており、負債比率は増加。積極的M&Aの推進のために負債が増加している格好だが、米・ポリポア社の買収は失敗に終わっており、米・ベロキシス社の買収には従業員60人のベンチャー企業にも関わらず約1,400億円もの資金を投入。

■ビジネス動向
中期経営計画においては「2030年までの営業利益4,000億円・純利益3,000億円」を目標として掲げる。が、直近の業績は行き詰まり感が強いため、事業戦略を見直し中。稼ぎ頭の事業でありながら利益低迷するマテリアル事業の構造転換を見据える他、住宅事業では海外展開も推し進める方針。失敗に終わった電池セパレータ事業の再建には、他社資本の活用も見据える。

■電池セパレータの失敗
かつては電池セパレータで世界シェア首位を誇ったが、現在では中国・上海エナジーに世界シェア首位を奪われており、世界シェアも2倍以上の差が開いている。2015年に乾式セパレータを主力とする米・ポリポア社を約2,600億円で買収して世界シェアの半分以上を握ろうとしたが、結果的には失敗。乾式セパレータ事業の強化に打ち込んでいる間に、要であった湿式セパレータで中国企業の躍進を許してしまい、大差をつけられてしまった。

就職格付け:CCC

■給与水準
平均年収760万円前後で推移しており、財閥系化学メーカー以下・中堅化学メーカー以上の給与水準。当社は売上高において業界5位の大手企業であるものの給与水準は控えめであり、高い利益率の割には従業員の還元が進んでいない印象。大卒総合職であれば35歳前後で年収700万円は超えるが、年収1,000万円を超えるには課長職レベルまでの昇進が不可欠。

■福利厚生
良好。日本全国に拠点が分散しているため独身寮・社宅の有無は配属先拠点によって分かれる(独身寮・社宅がない拠点は借上げ社宅制度となる)。借上げ社宅制度では家賃額の約70%が補助されるため、住宅補助は手厚い。勤務地の物価に応じて変動する地域手当があり、都市部配属の社員はやや給料が高まる。

■キャリア
年功序列色が強い。入社1年目~5年目は担当者としてスキルを磨き、大卒総合職は30歳を過ぎると主任級へと昇格。課長補佐以降は能力に応じて昇進スピードが分かれるが、有能であっても大抜擢人事は滅多になく横並び意識は強い。入社時の配属先部門で出世を目指すことになるため、配属先次第で人生が大きく変わる。

■事故・火災の多発
最近は事故が多く、世間を騒がせている。2022年3月には宮崎県延岡市の工場において、ダイナマイトの原料のニトログリセリンが大爆発を起こして従業員に死傷者が多数発生して近隣住宅街の建物125棟を損壊。2020年4月には宮崎県延岡市の半導体工場で大火災が発生して設備焼損・稼働停止に陥った他、2022年4月にもベンベルグ工場が火災で供給停止に陥っている。

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