企業概要
日産自動車は、世界180ヶ国以上でNissan・infinitiブランドの自動車を製造・販売する大手自動車メーカー。1914年に日本で初めて自動車エンジンを国産化し、1934年に現社名へと社名変更。終戦後には海外市場へと大規模進出して、世界的な自動車メーカーに躍進。現代では仏ルノー・三菱自動車工業とアライアンスを形成、世界第4位の販売台数を誇る巨大グループを形成。技術志向の高い自動車開発を得意とし、中~大型サイズのセダン・SUVに強み。
・世界シェア上位級の大手自動車メーカー、三菱自動車の筆頭株主
・2019年に業績悪化するも再建に成功、売上高・利益いずれもV字回復
・平均年収877万円と自動車業界2位、福利厚生も独身寮・家賃補助制度が充実
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:73(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
採用人数は年間300人以上と門戸は広いが、大卒総合職の出身大学は旧帝大・早慶がボリューム層。グローバル企業ゆえに英語力を重視、新卒採用はTOEIC730点が応募条件。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・九州大学・一橋大学・東京工業大学・大阪大学・名古屋大学・北海道大学・筑波大学・東京外国語大学・国際教養大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・明治大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
日産自動車の売上高は10兆円規模で安定推移。2019年には業績悪化で落ち込んだが、再建に成功して2023年には過去最高となる12.7兆円に到達。営業利益も2019年に業績悪化したが、こちらも2023年には5,687億円に到達。
*1:日産自動車は2019年頃に主力車種の陳腐化により販売不振に陥り、業績が悪化。カルロス・ゴーンが新興国市場を重視したため、最重要の先進国市場の主力車種が軒並み陳腐化して販売不振に陥った。2020年以降は経営体制が刷新され、先進国市場に新鋭車種を連続投入して業績が再建された。
✔セグメント別の状況
日産自動車は日本事業、北米事業(アメリカ・カナダ・メキシコなど米州全域)、欧州事業(フランス・イギリス・スペインなど欧州全域)、アジア事業(中国・タイ・インドなどアジア全域)、その他事業(中近東・中南米・アフリカほか)の5事業を有する。
日産自動車は世界180カ国以上に進出するグローバル企業であるが、北米事業が売上高・利益に占める割合が高い。ただし、販売台数では北米が90万台/年に対して中国が130万台/年を占めており、中国市場も極めて重要(中国は現地合弁会社を比例連結する関係上、数値に重要性が現れにくい特殊性がある)。
✔最終利益と利益率
日産自動車の純利益は2017年の純利益7,469億円をピークに低迷*2したが、2021年以降は黒字化。営業利益率は2020年にはマイナス圏に沈んだが、同年以降は利益率の増加傾向が続いている。
*2:2019年に巨額の減損損失により純損失6,912億円を計上。カルロス・ゴーンが新興国市場・拡大路線に注力して過度な設備投資を行った負の遺産が元凶。2020年以降は負の遺産が整理され黒字化。
✔自己資本比率と純資産
日産自動車の自己資本比率は30%前後の水準で推移しており一見すると低いが、これは販売金融による負債が計上されている事情があり特段の問題はない。純資産は2020年に4兆円台にやや減少したが、2021年以降は右肩上がりで増加。2023年には6.47兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日産自動車の平均年収は2021年から増加傾向にあり、直近では877万円に到達。大卒総合職の給与水準はより高く、30歳で年収800万~950万円、課長職レベルで1,200~1,350万円ほど*2。海外赴任した場合には給与水準は更に跳ね上がる。
*2:自動車メーカーは製造ラインを担う現業職を大量採用している事情があり、表面上の平均年収は低めになる傾向が強い。そのため、大卒総合職に限った平均年収は、開示されている平均年収を上回る。
✔従業員数と勤続年数
日産自動車の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、直近では2.40万人に到達。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は13.3万人の大所帯である。平均勤続年数は2017年頃までは20年を上回っていたが、採用拡大によって直近で15.0年となった。
総合評価
企業格付け:AA
■業績動向
2019年にはカルロス・ゴーンによる新興国市場・規模拡大を重視する経営戦略の失敗によって急激な業績悪化に見舞われたが、経営体制が刷新されて以降は業績回復が大きく進展。事業構造改革計画「Nissan NEXT」によって利益率を重視する方針へと舵を切った。2023年には売上高13兆円に達する見通しであり、過去最高を更新する見込み。
■財務体質
自己資本比率は30%前後の水準で推移しており一見するとそれほど高い水準ではない。が、これはローンやリースによって新車を販売するビジネスモデルゆえに貸借対照表の負債が広がりやすいことが主要因。実際には1兆円を超える手元資金をしっかりと確保しており、財務健全性には相当に保守的な性質であることが垣間見える。
■仏ルノー・三菱自動車との関係
1999年から筆頭株主の仏ルノーと包括的なアライアンス関係を結んできたが、2023年に資本関係の見直しを発表。同社が保有株式数を削減することで、対等関係へと移行。2016年には三菱自動車工業の発行済み株式数の約34%を取得することで筆頭株主になり、親密な関係。
就職格付け:AA
■給与水準
平均年収877万円と自動車業界2位の給与水準。大卒総合職に限れば平均年収は900万円を上回っており、30歳で年収800万~950万円に到達する。課長級で年収1,200万円は超え、部長級で年収1,800万円ほど。年功序列色が薄いために優秀であれば早々に抜擢されて30歳で年収1,000万円を超える。海外赴任した場合には給与水準は更に跳ね上がる。
■福利厚生
良好。各拠点に独身寮・社宅が整備されているが家賃補助制度も選択可能であり、他社員との共同生活を避けたい場合にも柔軟(独身寮に入寮しないと家賃補助がゼロという会社は珍しくない)。家賃補助制度は月額家賃の75%が会社負担となるため手厚い。主要拠点が関東地域に集結しており、大手メーカーながらも僻地勤務リスクが少ないのは珍しい。ファミリーサポート休暇という休暇制度を導入しており、有給休暇とは別に年間12日の休暇が全従業員に毎年付与され、これを加味した年間休日日数は130日を優に超える。
■キャリア
部門別採用を早期から採用した企業であり、本人が望まない限りは入社した部門でキャリアを歩む。大手メーカーでありながら年功序列色は薄く、実力がある社員は30代前半で課長クラスに昇進して年収1,200万円台に到達する。「ハイポテンシャル制度」により、優秀人材は30代から経営人材としての鍛錬を積む。現社長は中途入社組であり、プロパー入社でなくても経営トップに就ける他、創業家が現存しないため血縁縁故による登用が一切ない。
■自動車ブランド
自動車という商材を扱う関係上、日本人ならば知らない者はいない企業の一社。日本を代表する自動車メーカーの一角として世界170ヵ国以上に進出。インターブランド車による世界ブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2023」では世界63位。