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農林中央金庫の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

農林中央金庫は、長期資金供給を主力事業とする政府系金融機関。1923年に産業組合中央金庫法に基づき国策金融機関として設立。1943年に農林中央金庫へと改称され、1986年に完全民間金融機関へと移行。農林水産業者の共同組織として設立された経緯から、金融サービスを通じて農林水産業の発展に寄与することを社会的使命とする。JAバンク事業を農協・JA信農連と共同構成する他、JFマリンバンクを漁協・JF信漁連・JF全漁連と展開。

POINT

・農林水産業のメインバンクとして機能する金融機関、1986年に完全民営化
・世界的な利上げで2022年は大幅減益、巨額含み損で自己資本比率も急低下
・メガバンクに勝るとも劣らない給与体系だが、転勤なしだと給与・福利厚生カット

業績動向

✔経常収益と経常利益

農林中央金庫の経常収益は長年に渡って1.2兆~1.7兆円ほどで推移していたが、2022年は2.17兆円に急増。経常利益は2015年・2020年に3,000億円以上を記録したが、2022年には404億円まで減少*1。
*1:2022年は主要先進国での利上げの影響によって外貨調達コストが急増、経常費用が増加。当行は投資資金を外貨調達によって賄っていることもあり、大幅減益に沈んだ。

✔セグメント別の状況

農林中央金庫は、協同組織金融業(預金業務・農林債業務・決済業務・有価証券運用・トレーディング・資金貸出)のみの単一事業組織である。
農林中央金庫の預金残高の約87%は日本全国の農業団体に由来するものであり、農林水産業の共同組織とは言いつつも、実態は農業団体が主な預金基盤であることが伺える。

✔最終利益と利益率

農林中央金庫の純利益は2015年・2020年頃に大幅増益を遂げたが*2、2020年以降は減益傾向。直近では純利益927億円まで回復している。自己資本利益率は2%前後で低迷するが、これは純資産が潤沢ゆえに仕方がない側面が強い。
*2:COVID-19感染拡大による景気後退局面であった2020年に純利益が急増した要因は、①米国の利下げによる外貨調達コストの低下、②金融緩和による株価上昇に伴う有価証券売却益の獲得、が主要因であった。

✔自己資本比率と純資産

農林中央金庫の自己資本比率は6.0%と低めだが、銀行業界においては問題ない水準。銀行業は顧客から預金・有価証券を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産は6.7兆~7.9兆円ほどで推移してきたが、2022年には5.69兆円まで急下降。

社員の待遇

✔平均月収と平均年齢

農林中央金庫の平均月収*3は微増傾向にあり、直近の2022年で54.1万円ほど。給与制度上はメガバンク並みの給与水準であり、総合職であれば30歳で880万円~930万円ほど、課長職レベルで年収1,300万~1,500万円レベル。が、役職定年が53歳頃にあるため、給与ピークが早々に到来するのがネック。
*3:農林中央金庫は平均年収を公開しておらず、平均月収のみを公表している。

✔従業員数と勤続年数

農林中央金庫の単体従業員数は増加傾向が続いており、直近では3,400人規模の組織体制。平均勤続年数は直近で14.1年ほどであり、安定・高給のイメージの割にはそれほど長くはない。

総合評価

企業格付け:AA

■業績動向
長らく安定的であったが、2022年は久々の大幅減益に直面。主要先進国における利上げが相次いだことで外貨調達コストが急増。そのうえ、金利上昇によって保有する有価証券評価損が拡大しており、2023年11月には2.5兆円にも達したと報道された。金利上昇が経営の逆風となる金融機関であるため、主要先進国の利上げが一服しない限りは苦しい状況が続く見込み。

■財務体質
一時的に悪化。金利上昇によって有価証券評価損が拡大すると自己資本比率が低下する構造にあり、2022年の自己資本比率は0.8%にまで後退。銀行業は自己資本比率が低くなりやすい業態ではあるが、自己資本比率0.8%というのは相当の低水準である。

■ビジネス動向
中期ビジョン「Nochu Vision 2030」を策定。2030年のありたい姿として、①ITデジタルを活用したデータビジネス展開、②デジタル・リアルの最適融合による価値創造、③変化の激しい市場環境・顧客ニーズに対応できる財務・収益基盤の構築、などを掲げる。農業分野における個人事業者の減少により、将来的にスマートアグリ市場・法人経営体シフトが進む点への適合も急ぐ。

就職格付け:AA

■給与水準
メガバンクに勝るとも劣らない給与体系。総合職であれば30歳で880万円~930万円ほど、課長職レベルで年収1,300万~1,500万円レベル。ただし、役職定年が53歳頃にあるため、給与ピークが早々に到来するのがネック。人事制度改定によって、総合職であっても転勤なしを選択できるようになったが、転勤なし総合職は年収が大幅減少する他、福利厚生の社宅入居も30歳までに削られる。

■福利厚生
良好。借上げ社宅制度が充実しており、独身者には月額1万円未満で都心部マンションが与えられるため、生活コストを大きく削減できる。結婚後も社宅に入居できるため、長期的に家賃コストを抑えられる点は美点。が、総合職は北海道~沖縄までが転勤範囲となるため、数年おきの引越には覚悟が必要。

■キャリア
総合職・特定職・地域職の3職種制。総合職は主要部門・支店をローテーションしながら経験を蓄積することが求められ、数年おきの転勤が発生する。特定職は事業企画・ITのみに特化したキャリア形成となる。給与制度・昇進においては転勤あり総合職が最優遇されるため、出世レースを争うには転勤ありへの覚悟が必要。意外と年功序列色が強いため、10年目を過ぎるまでは目に見える昇進差は生じにくい。

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