企業概要
日本特殊陶業は、スパークプラグ・センサ・セラミック切削工具などを製造する大手セラミックスメーカー。1918年に日本陶器(現・ノリタケ)から日本ガイシが独立した後、1936年に日本ガイシからスパークプラグ部門が分社化されて設立。スパークプラグ・排ガスセンサ・セラミック切削工具で世界シェア首位、マイクロプロセッサ用ICパッケージで世界シェア第3位。ノリタケカンパニー・TOTO・日本ガイシと共に、世界最大級のセラミックス企業グループである森村グループを形成。
・スパークプラグ・排ガスセンサで世界シェア首位、森村グループ中核企業
・売上高・利益は成長基調かつ利益率も高い、財務体質も優良
・平均年収894万円と業界上位クラスに急上昇、福利厚生はやや凡庸
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間45人~70人と、それほど多くはない。最近ではテレビCMにも力を入れており、知名度上昇により応募数が増加している可能性が高い。中部地方出身者が多い。
採用大学:【国公立】名古屋大学・金沢大学・横浜国立大学・熊本大学・新潟大学・岐阜大学・滋賀県立大学・名古屋工業大学・電気通信大学・豊橋技術科学大学など、【私立】同志社大学・青山学院大学・中央大学・立命館大学・学習院大学・南山大学・中京大学・東京理科大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
日本特殊陶業の売上高は2020年まで4,000億〜4,200億円ほどで推移していたが、同年以降は増加傾向。2024年には過去最高となる売上高6,529億円に到達*1。営業利益は2021年から増加傾向が続いており、2024年には過去最高となる1,296億円に到達している。
*1:2024年に売上高・利益が増加した理由は、①原材料価格の高騰を受けた値上げ対応の迅速な遂行、②ガソリン車向けのスパークプラグの販売好調、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
日本特殊陶業は、自動車関連事業(スパークプラグ・グロープラグ・自動車用センサなど)、セラミック事業(切削工具・産業用セラミック・半導体製造装置部品など)、新規事業事業(環境エネルギー・燃料電池など)、その他事業(福利厚生サービス)、の4事業を有する。
当社は売上高の約82%を自動車関連事業で稼いでおり、自動車用スパークプラグ・センサが主力製品。この他にも医療機器・水素発電・全個体電池など様々な領域で研究開発を試みており、自動車関連事業・セラミック事業に続く第三の事業領域を模索している。が、利益においては自動車関連事業が約98%を占めており、同事業への利益依存は解消していない。
✔最終利益と利益率
日本特殊陶業の純利益は2021年から増加傾向が続いており、2024年には過去最高となる926億円に到達している。営業利益率は平常時でも15%以上を確保しており、2024年には19.8%にまで上昇。自動車部品メーカーとしてはトップクラスの水準にある*2。
*2:当社はスパークプラグ分野で世界シェア首位の地位にあり、世界的な知名度を誇る。そのため、消費者から指名買いされるブランド力を活かした強い価格転嫁力によって高利益率を確保できている。
✔自己資本比率と純資産
日本特殊陶業の自己資本比率は概ね60%以上の水準で安定推移しており、2024年は68.1%となっている。純資産は2020年から増加傾向が続いており、2024年には6,747億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日本特殊陶業の平均年収は630万〜690万円で推移していたが、2024年には894万円まで上振れている。中堅自動車メーカーを上回る給与水準に拡大しており、自動車部品メーカーとしてはトップクラスの水準。大卒総合職なら30歳で年収550万〜650万円ほど、課長職レベルで年収980万〜1,150万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
日本特殊陶業の単体従業員数は2020年まで、5,800人ほどで推移していたが、同年以降は3,600人ほどに急減。事業会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.59万人に達する。平均勤続年数は16.2年(2023年)前と大手企業としては普通の水準。
総合評価
企業格付け:BB
セラミックス企業グループである森村グループにおいて、TOTO・日本ガイシと並ぶ中核企業として知られる自動車部品メーカー。かつては日本ガイシの一部門であったが、1936年に同社から分離独立。現在では分離元である日本ガイシと並び立つ売上高にまで成長を果たしている。業績においては売上高・営業利益・純利益いずれも過去最高を更新し続けているうえ、利益率は自動車部品メーカーとしてトップクラスの営業利益率15%以上。当社が得意としているスパークプラグはエンジン向けの部品であるだけに斜陽産業のイメージがあるが、高いブランド力を武器とした価格転嫁力によって高利益率を稼ぎ続けている。財務体質においても大いに優良であり、自己資本比率60%以上を維持し続けている。現時点は優良企業そのものであるが、問題は将来性。あくまでエンジン部品の1つであるスパークプラグが売上高の大半を占めるため、将来的に電気自動車が増加した場合には事業喪失の危機に晒される。そのため、万が一の事態に備えて新規事業の創出を急いでおり、医療機器・水素発電・全個体電池など様々な領域で研究開発を試みているものの、第三の柱となる事業規模まではまったく育っていない。
就職格付け:B
名古屋圏の有名企業のひとつ。自動車部品メーカーでありながら宣伝広告にも熱心な企業であり、近年は「特殊に輝け!」をキャッチフレーズとした広告を大量展開。スパークプラグ分野においては世界シェア首位を独創しており、消費者から名指しで選ばれるだけのブランド力があることも強み。給与水準においては2022年まで平均年収670万円前後で推移していたが、2023年には平均年収894万円まで急伸。中堅自動車メーカーを上回る待遇にまで改善された。大卒総合職の場合、30歳で年収550万〜650万円ほど、課長職レベルで年収980万〜1,150万円が目安となるだろう。福利厚生においては住宅補助制度こそないが、若手社員向けには独身寮が整備されており月5,000円程度の負担で入居or借上げ社宅制度と利用可能。また、工場の社員食堂は1食300円程度と格安であり、良心的である。主力工場は名古屋・小牧・伊勢などの名古屋経済圏に集中するため遠方転勤リスクは低いが、鹿児島県薩摩郡という超遠方かつ僻地にさつま工場が存在する点には注意。