企業概要
NTNは、ベアリング・自動車部品を主力とする機械メーカー。1918年に西園二郎がベアリングの開発を目指して三重県桑名市で創業。戦前から「産業のコメ」とも言われるベアリングを大量生産して工業化の礎を支えた。主力工場が戦災で大打撃を受けるも、戦後には統計的品質管理を導入して高品質・大量生産を実現。1950年には日系機械メーカーとして初めてデミング賞を受賞。現在では、日本精工・ジェイテクトと並んでベアリング御三家と称され、自動車向けハブベアリングで世界シェア首位を誇る。
・ベアリング大手御三家の一角、自動車向け製品群が売上高の半分以上
・売上高は横ばいだが利益低迷が長期化、財務体質も微妙
・平均年収699万円で同業他社並み、平均勤続年数20年超で従業員の定着が良い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:62(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用人数は年間40名~60名ほど、うち技術系採用枠が30名ほどを占める。世界的ベアリングメーカーであるが一般知名度は高くないため倍率は高まりにくい。大阪本社のため関西圏の出身者が多め。
採用大学:【国公立】東北大学・金沢大学・信州大学・三重大学・岐阜大学・東京農工大学・名古屋工業大学・大阪公立大学・長岡技術科学大学など、【私立】関西大学・学習院大学・東京理科大学・芝浦工業大学・関西外国語大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
NTNの売上高は長期的に6,600億〜7,700億円レベルで推移しており、横ばい。営業利益は2015年の477億円をピークに減少傾向にあり、同年以降は冴えない推移が続いている。
*1:利益が冴えない理由は、①主力の自動車向け製品の競合環境が厳しい点、②鉄鋼価格・人件費・物流費などのコスト高騰の価格転嫁が遅れている点、③規模拡大路線の結果として薄利多売に陥った点、など。
✔セグメント別の状況
NTNは、自動車事業(自動車向けのドライブシャフト・ハブベアリング・モータ・テンショナ・ブレーキシステムなど)、産業機械事業(製鉄機械・工作機械・医療キイ・ロボット向けのベアリング・ジョイント・異常検知装置など)、アフターマーケット事業(自動車・一般機械・設備向けの補修用ベアリングなど)、の3事業を有する。
NTNの主力事業は自動車向け製品群であり、同事業で売上高の約65%を占める。自動車向け事業の売上高の約80%がドライブシャフト・ハブベアリングであり、これら2製品に業績を大きく左右される。直近では自動車向け事業が赤字のため、産業機械事業・アフターマーケット事業が利益の柱。
✔最終利益と利益率
NTNの純利益は年度により好不調が別れるが、2019年には純損失439億円を計上して大幅赤字に転落*2。営業利益率は2015年から2019年まで悪化傾向が続いたが、直近は持ち直しつつある。
*2:2019年に大幅赤字の要因は、①COVID-19感染拡大により主要顧客の自動車メーカーが大幅減産した点、②価格カルテルに関与したとして公正取引委員会から課徴金を課された点、③過剰化した生産能力について減損損失を計上した点、など。
✔自己資本比率と純資産
NTNの自己資本比率は20%台での推移が長年に渡って継続しており、低めの水準での推移が続いている。純資産は2019年の業績悪化で大幅減少しており、同年以降は回復途上にある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
NTNの平均年収は長期的に650万~700万円ほどで安定。同業の日本精工・ジェイテクトと遜色ない給与水準。総合職の場合、30歳で年収450万~550万円、課長職レベルで年収800万~900万円が目安。平均年齢は直近で41.2歳と、大手メーカーの標準的水準。
✔従業員数と勤続年数
NTNの単体従業員数は2019年まで微増傾向が続いたが、同年以降は減少傾向に転換。直近では5,600人ほどの企業規模だが、子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.3万人ほど。平均勤続年数は直近で20.3年に達しており、従業員の定着の良さは業界トップクラス。
総合評価
企業格付け:C
■業績動向
冴えない。売上高は横ばいを維持しているが、利益低迷が苦しい。2018年以降は黒字・赤字を往復しており、安定的な利益確保に課題。2023年は純利益175億円まで回復する見通しだが、事業好調というよりも為替レートの円安推移に助けられた側面が大きい。
■財務体質
厳しい。歴史的に自己資本比率30%前後での推移が続いてきたうえ、2019年の巨額損失によって自己資本比率20%台まで急落。本業の利益が低迷しているため、財務体質の回復にも時間を要する。ベアリング御三家の他2社は40%〜50%レベルにあり、差がある状況。
■ビジネス動向
中期経営計画における重点領域を「財務体質強化・利益率改善」に設定。高付加価値商品を開発すべく、2023年には電気自動車向けの耐高電圧ベアリングを開発。他方で、自動車事業への依存度を低減するため、ロボット分野・発電機分野などへの製品投入も急ぐ。
■価格カルテル
ベアリング業界は大手4社(ジェイテクト・NTN・日本精工・不二越)が国内シェア80%以上を抑える寡占市場であり、価格カルテルを繰り返してきた過去がある。当社は他ベアリング大手と同様に1970年代にカルテルで行政処分をうけ、2012年にも行政処分を受けた。
就職格付け:CC
■給与水準
ベアリング大手3社で概ね横並び。平均年収は長期的に650万〜700万円ほどで安定的。総合職なら30歳で年収450万~550万円ほどだが、独身寮が充実しているため実質的な生活水準は額面年収よりも上。40代には700万円前後に達するため大手上場メーカーなりの水準になる。拠点立地は地方都市に集中しているため、周囲と比べた生活水準は高く保てるだろう。
■福利厚生
良好。若手社員は独身寮に入ることで家賃を月1万円まで大幅節約できる。会社都合の転勤であれば借上げ社宅が与えられる。家賃補助制度の支給額は最大でも1万円/月と少ないが、年齢制限なく終身支給される点において卓越。平均有給休暇取得率は90%以上としっかり休めるうえ、有給休暇とは別にリフレッシュ休暇3日・誕生日休暇1日が毎年付与される。平均勤続年数20年以上は大手優良メーカーにも勝る定着のよさであり、従業員の幸福度は相当に高い模様。
■キャリア
事務系・技術系の2職種制。年功序列色が強いが、短期昇格試験に合格することで早期昇進が可能。そこまで優秀でない社員にも年功序列で温情を与えつつ、意欲的・優秀な社員は短期昇格の道もある。入社5年目以降には海外赴任のチャンスも増えるため、海外勤務に関心がある場合にも柔軟。昇格試験では英語力・SPI・論文などが求められるため、それなりの自己研鑽がないと上にはいけない。