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石油資源会社

石油資源開発の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

石油資源開発は、石油・天然ガスの開発・生産・販売を行っている大手石油開発会社。1955年に石油資源開発株式会社法に基づき設立された国策企業であり、現在も経済産業大臣が筆頭株主。北海道・秋田・山形・新潟にて原油・天然ガス開発を担う他、イラク・インドネシア・ロシアにおいて資源開発を行っている。同業のINPEXは石油資源開発の元子会社、現在も石油資源開発は同社の大株主である。

POINT

1.資源開発が主力だが、国内油田の権益が主であるため海外依存度は低い
2.資源価格・為替に業績を左右されやすいが、財務体質は極めて健全
3.平均年収856万円で課長職から1,000万円を超える、福利厚生も良好

業績動向

✔売上高と営業利益

石油資源開発の売上高は2,000億~3,000億円ほどで変動しており、直近の2022年には過去最高となる3,365億円に到達。営業利益は例年黒字を確保できているものの、年度によって好不調がハッキリと分かれる*1。
*1:業績が安定しない理由は、資源価格の変動が業績に及ぼす影響が大きい点にある。原油・天然ガス価格上昇と円安局面では業績が伸びやすい反面、資源価格低迷や円高局面では業績が悪化しやすい。

✔セグメント別の状況

石油資源開発は日本事業(国内・油田開発と販売)、北米事業(アメリカ・タイトオイル開発)、欧州事業(イギリス・シーガル油田開発)、中東事業(イラク・ガラフ油田開発)の4事業を有する。
当社は国内資源開発を重点的に進めてきた歴史的経緯から、売上高と利益いずれも国内比率が高い点が特徴。近年は海外での資源開発に積極的であるものの、業績面への貢献はまだまだ道半ばである。

✔最終利益と利益率

石油資源開発の純利益は▲310億~600億円ほどで推移しており、かなり不安定な推移となっている。資源開発成否や資源価格変動によって利益水準が変動しやすく、多額の純損失を計上することもある*2。
*2:2017年と2021年に300億円以上の純損失を計上したが、これはカナダでの資源開発からの撤退に伴う特別損失による(カナダ ブリティッシュ・コロンビア州における LNG プロジェクトの取りやめについて)。天然資源の開発は必ずしも成功するものではなく、また資源価格の上下変動によって採算性・利益が変わってしまう難しさがある。

✔自己資本比率と純資産

石油資源開発の自己資本比率は長期的に60%以上の高水準を維持しており、財務体質は大いに健全。政治的要素や資源価格変動による事業環境の激変に晒されやすい業種ではあるが、自己資本比率を厚くすることで企業体力を確保している。
純資産が右肩下がりで減少しているが、これは為替換算調整勘定によるものであり業績悪化や減損損失によるものではない。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

石油資源開発の平均年収は810万~850万円ほどの水準で長期的に推移している。大卒総合職の場合で、30歳で年収680万~750万円ほど、課長職レベルで980万~1,200万円が目安。業績悪化時であっても従業員の給与は守られるが、業績好調時でも急激な給与増加はない。

✔従業員数と勤続年数

石油資源開発の単体従業員数はやや増加傾向にあるものの、直近であっても900人規模の小さな組織体制。平均勤続年数は2018年頃までは増加傾向にあったが、近年は減少傾向にある。

総合評価

企業格付け:A

■業績動向
石油・資源業界の例に漏れず、売上高・利益いずれも変動幅が大きい。グローバルの原油・天然ガス価格および為替レートによって売上高・利益を大きく左右させられる。2020年までは資源価格の低迷によって業績は振るわなかったが、同年以降の資源価格高騰・円安によって業績は急改善。2022年には過去最高圏となる売上高3,365億円・純利益674億円を記録。

■財務体質
良好。自己資本比率は60%以上を長期的に確保し続けており、大いに堅実。2021年にはカナダシェールガスプロジェクトの権益譲渡を経て、自己資本比率が70%台にまで急上昇。負債に依存しない事業運営ができており、多少の業績悪化であっても優に乗り切れるだけの財務基盤を確立している。

■ビジネス動向
2030年までの中長期経営計画「JAPEX経営計画2022-2030」を策定。重点領域として、①新規権益確保への継続投資、②再生可能エネルギー事業拡大による資源価格変動への耐久力向上、などを掲げる。2030年度には事業利益500億円の確保を定量目標とする。

就職格付け:BBB

■給与水準
直近では平均年収850万円前後と大手メーカーに類似する給与レンジであり、石油・資源業界のトップ企業と比べると数段物足りない。国策企業ゆえに民間企業を脅かさない程度の給与に留める必要がある他、海外赴任者がそこまで多くないことも要因。とはいえ、大卒総合職であれば最速30代後半で管理職になれば年収1,000万円の大台は超えられる。

■福利厚生
見かけの給与を上げづらい国策企業であることから、福利厚生によって待遇を底上げしている。借上げ社宅制度では自己負担額が僅か8,000円で済むうえ、独身寮が各事業所に整備されている。東京都勤務の場合は吉祥寺にある立派な社宅に居住できる他、本社ビルは東京駅に隣接する好立地である。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職・一般職の3職種制。事務系総合職は入社後5年間はジョブローテーションを経ながら能力開発を進めるが、技術系総合職は探鉱系・開発系に分かれて専門性を深める。30歳以降にはマネジメントコースと専門職コースに分かれるため、管理職を目指すか否かを決めていくことになる。2023年からは一般職採用を開始。一般職廃止が相次ぐ時勢において、まさかの一般職採用スタートとなった。

■INPEXとの比較
出自が類似するINPEXと比べると企業規模・知名度・平均年収で一歩劣ってしまうのが悩み。実態は石油資源開発がINPEXの元親会社かつ現在は大株主という序列関係だが、現在においては事業規模・知名度いずれもINPEXに軍配。ただし、当社は国内比率が高いが故に、海外駐在を切望しない・国内に留まりつつ石油・資源業界に身を置きたい場合には優良企業といえるだろう。