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ANAホールディングスの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

ANAホールディングスは、航空機による旅客・貨物輸送を主力とする大手航空会社。1952年に日本ヘリコプター輸送として創業、1954年には航空旅客輸送へと進出。設立から長らくは国内線のみに従事していたが、1971年には国際線へも進出。世界最大の航空アライアンスであるスターアライアンスに1999年から加盟しており、同業の日本航空と並んで日本を代表する航空会社として世界的に著名。

POINT

1.JALと双璧を為す大手航空会社、傘下にはピーチ航空なども
2.売上高・利益いずれも不安定、2020年にはCOVID-19で大打撃
3.平均年収691万円だが、業績悪化時には平均年収495万円まで減少

業績動向

✔売上高と営業利益

ANAホールディングスの売上高は2019年までは1.7兆~2.1兆円で安定していたが、2020年に急減して現在は回復途上*1。営業利益は2018年までは1,300億~1,600億円で推移していたが、2019年~2021年に大赤字を経験。
*1:世界的なCOVID-19感染拡大により、国際線・国内線がいずれも劇的に悪化。実質的な鎖国状態となったことで国際線の利用率は極端に落ち込んだうえ、政府からの補助金もなかった。従業員を家電量販店へ派遣するなどの奇抜な方策も使いながら売上高の確保に励んだ。

✔セグメント別の状況

ANAホールディングスは、航空事業(全日本空輸・ANAウイングス・エアージャパン・ピーチ航空による旅客輸送・貨物輸送など)、航空関連事業(空港サービス・予約案内・航空整備・航空地上支援など)、旅行事業(ANAトラベラーズによるパッケージ旅行商品の企画販売)、商社事業(全日空商事による航空関連資材の輸出入、店舗・通信販売など)、その他事業(ビル管理・人材派遣など)、の5事業を有する。
ANAホールディングスは売上高の90%以上を航空関連の事業で稼いでおり、航空事業に特化した企業である。旅客・貨物輸送のニーズが高い好景気・安定期であれば業績好調となる反面、政治・経済の動向によって航空産業が落ち込むと業績が顕著に悪化しやすい。

✔最終利益と利益率

ANAホールディングスの純利益は2019年~2021年にかけて極端な悪化に見舞われ、2020年には純損失4,046億円を計上。直近の2022年には黒字圏へと回復したが全盛期には及ばず。営業利益率は2018年以前には8%レベルで推移しており、そこそこ高めの利益率であった。

✔自己資本比率と純資産

ANAホールディングスの自己資本比率は2019年には41.4%を記録したが、大赤字の計上により財務体質は悪化。直近の2022年は25.6%に留まっており、自己資本比率は低めの状況。純資産も2018年のピークから減少しており、直近の2022年の純資産は0.87兆円。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

ANAホールディングスの平均年収は2015年の853万円から長期的な減少傾向が継続。2021年には平均年収495万円まで減少しており中堅メーカーにも劣る給与水準に激減*2。直近の2022年には平均年収691万円に回復したが、業績悪化に伴う手当削減などにより給与水準は良好とはいえない。
*2:2020年には業績悪化により冬ボーナス0円に転落。基本給・諸手当も一律5%削減され、従業員の年収を30%カットすると宣言。これにより給与水準が大幅下落した事情がある。

✔従業員数と勤続年数

ANAホールディングスの従業員数は253人に過ぎず、従業員の大半は持株会社の傘下に置かれる事業会社に所属。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4.0万人ほど。平均勤続年数は直近で3.5年と極めて短いが、持株会社と事業会社の間での異動などが理由と推定。

総合評価

企業格付け:B

JALと双璧を為す大手航空会社。かつてはJALが日本のフラッグキャリアであったが、2010年のJALの経営破綻により相対的にANAの地位は向上。国際線の就航経験ではJALの歴史の長さに敵わないとはいえ、現在ではJALと並んで日本を代表する航空会社である。業績は2018年までは堅調であったが、2019年のCOVID-19感染拡大により業績が劇的に悪化。2020年には売上高が半分以下に落ち込み、純損失4,046億円を計上する事態に陥った。2000年代にも9・11同時多発テロ事件やSARS流行によって業績悪化を経験しており、歴史的にみても定期的にこうした業績悪化に見舞われている点も特徴的。直近の2022年には黒字化を果たしたものの、数年間に及ぶ業績不振で財務体質は悪化。自己資本比率は20%台にまで低迷しており、COVID-19に続く次なる環境悪化が起こる前に財務体質の回復を達成できるかが焦点。

就職格付け:B

知名度と企業イメージでは群を抜く企業であるが、就職格付けはそこまで高くはない。航空会社は「華やかな安定業界」に思われがちだが、経営危機と統廃合を繰り返してきた不安定な業界である。2000年代には9・11同時多発テロ事件とSARS流行、2020年代にはCOVID-19感染拡大によって、全世界の航空会社が経営危機に陥っている。先進国の大手航空会社も数多の倒産を繰り返しており、過去に倒産した大手航空会社は枚挙に暇がない(参考リンク)。ANAホールディングスは過去に経営破綻を経験していないが、業績悪化時には極端な人件費カットが実行されるため片働きで住宅ローン返済などを抱えた社員などは危機的な状況に陥る。煌びやかなイメージから「勝ち組」業界と思われがちだが、実際には極めて不安定な業界であることへの理解は必要。そして、業績悪化時に大きく年収が下がるリスクへの覚悟はしっかりとしておき、業績好調時にも質素倹約と貯蓄に励んでおきたい。

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