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東京電力ホールディングスの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

東京電力ホールディングスは、関東地方全域において発電事業・電気小売事業を展開する大手電力会社。1883年に渋沢栄一が設立した東京電燈を源流とし、1951年に東京電力として再編。1973年には当時世界最大級の福島第一原子力発電所を開設。過去100年以上に渡って首都圏一円の電力供給を一手に担ってきた。電力業界では中部電力に大差をつけて断トツ首位。2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、原子力損害賠償支援機構が筆頭株主となり事実上の国有企業に。

POINT

1.インフラ業界において断トツ首位の企業規模を誇る大手電力会社
2.売上高は過去最高を記録するも利益率は低迷、巨額の賠償義務を背負う
3.平均年収815万円とインフラ業界では最高峰の待遇、福利厚生もそこそこ充実

業績動向

✔売上高と営業利益

東京電力の売上高は2021年まで5~6兆円レベルで安定していたが、2022年には売上高7.8兆円に急増して過去最高を更新*1。営業利益は2015年から右肩下がりが続いており、2022年には営業赤字2,290億円を計上*2。
*1:2022年にはロシアによるウクライナ侵攻で燃料油価格が急騰。燃料価格の上下変動を電気料金に転嫁する燃料費調整額が急増したことで売上高が急増した経緯。
*2:2018年以降の東京電力は利益率は低迷気味。主要因は、①燃料費価格・卸電力価格の上下変動による損失、②卸電力市場における電力価格の高騰、③電力小売全面自由化による競争激化、など。

✔セグメント別の状況

東京電力はホールディングス事業(グループ事業会社への共通サービス提供、原子力発電など)、フュエル&パワー事業(火力発電による電力販売、燃料調達、火力電源開発など)、パワーグリッド事業(送電・変電・配電による電力供給、送配電設備の建設・保守など)、エナジーパートナー事業(顧客向けソリューション提供など)、リニューアブルパワー事業(再生可能エネルギー発電など)の5事業を有する。
東京電力のコア事業は売上高の約80%を占めるエナジーパートナー事業であり、同事業の事業会社である東京電力エナジーパートナーは日本最大の電力小売り会社として約2,945万口もの契約数を誇る。

✔最終利益と利益率

東京電力の純利益は年度により好不調が分かれるが、2022年には純損失1,236億円を計上しており業績低迷*3。営業利益率も低空飛行が続いており、2022年からは営業利益率もマイナスの状況。
*3:2022年には営業損失2,290億円を計上したが、①合弁会社のユーラスエナジーホールディングスの保有株式を豊田通商へすべて売却、②東京都港区三田の保有不動産を売却、により約1,000億円もの特別利益を確保して純損失を圧縮した。

✔自己資本比率と純資産

東京電力の自己資本比率は長年に渡って増加傾向が続いていたが、2020年の25.8%をピークに停滞傾向*4。大手企業としては少なめの自己資本比率にも感じるが大手電力会社としてはそこそこ高めの水準を確保している*5。
*4:東京電力は2011年の福島第一原子力発電所事故による巨額賠償義務を背負ったことで一時は債務超過への転落を危ぶまれたが、原子力損害賠償支援機構が公的資金を注入したことで債務超過を回避。事実上の国有企業となったことで現在に至るまで破綻せず存続できている。
*5:経済産業省の有識者審議会は一般電気事業の適切な自己資本比率を30%と掲げるが、多くの大手電力会社の自己資本比率はこれを下回る推移が続いている。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

東京電力の平均年収は緩やかな増加傾向が続いており、直近の2022年には平均年収815万円に到達。ただし、これは持株会社の7,113名のみの平均年収。平均年齢は長年に渡って45歳前後の高水準で安定推移。
*1:2011年には福島第一原子力発電所事故を受けて大幅な年収カットを断行、2012年には平均年収620万円まで暴落する事態となった。そこから長い時間をかけて平均年収は徐々に回復。世間からの目が厳しい為に年棒制を採用することで賞与を廃止しつつ平均年収を回復させた。

✔従業員数と勤続年数

東京電力の従業員数は2016年の会社分割によって急減少。3.24万人(2015年)から0.71万人(2021年)まで2.5万人規模の減少となった*3。平均勤続年数は22年前後と極めて高い水準だが、これは持株会社の7,113名のみの平均勤続年数。

総合評価

企業格付け:A

日本の電力業界を長年に渡って牽引してきたリーディングカンパニーであり、業界団体の電気事業連合会に多数の会長を送り込んできた名門企業。かつては就職偏差値ランキングにおいてトップクラスの地位を占めていたが、2011年の福島第一原子力発電所事故を機にすべてが一転。巨額の賠償義務を背負ったことで債務超過に陥りかけ、事実上の国営企業となることで生き延びた。現在においても企業として存続するものの、原子力損害賠償支援機構は総額10兆円以上を支援してきた経緯があり、極めて特殊な立場に置かれている。業績は売上高・利益は共に安定的であったが、最近は燃料価格の乱高下により業績低迷。財務体質は自己資本比率20%以上と大手電力会社としてはそこそこ高めの水準だが、原子力損害賠償支援機構が巨額の賠償金を肩代わりしていなければ債務超過になっていたと思うと複雑。良くも悪くも「インフラ企業は潰れない」を体現する企業であるが、国の支援なくして耐えられない賠償義務を背負いながら存続している不名誉な烙印を背負い続ける業は決して褒められたものではない。

就職格付け:BBB

電力・ガス業界において業界2位の中部電力を大きく引き離す断トツ首位の企業規模を誇り、首都圏一円の電力供給を一手に担う点においては高く評価できるものの、福島第一原子力発電所事故という極めて異例な過去を背負っている点は大きなマイナスポイント。給与水準は平均年収815万円とインフラ業界における最優良クラスにあるものの、国から巨額の支援を受けてきたことから賞与はなし。年棒制を採用することで賞与制度を廃止して、世論に配慮する涙ぐましい配慮も。福利厚生はそこそこ充実しており、34歳までは独身寮へ入寮できるほか借上げ社宅制度も存在。福島第一原子力発電所事故を契機に福利厚生は大きく削減されたものの、依然として多くの民間企業と比べれば恵まれた環境が整っている。最大の課題は企業ブランドが大きく毀損していることであり、廃炉処理や損賠賠償に関わるニュースが流れるたびに負の歴史が想起される他、福島県をはじめとする被災地エリアでは大きなマイナスイメージが残っている。福島第一原子力発電所の廃炉処理は2064年まで続く計画となっており、残り40年以上に渡って尾を引くことが確定的。

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