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中部電力の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

中部電力は、電気販売量で国内第3位の大手電力会社。1951年に中部配電と日本配送電が合併して設立。地震多発地帯である中部地方を地盤とする事情から原子力発電所の新設に苦戦した歴史があり、原子力発電所は浜岡原子力発電所のみ。それゆえ火力発電依存度が高いが、福島第一原子力発電所事故後の原発政策の影響を最小限に留めた。2015年に東京電力と燃料・火力部門を統合、新会社JERAを設立。

POINT

・中部地方を地盤とする大手電力会社、業界3位だが中部財界の雄
・業績は2022年から回復傾向だが、火力発電・送配電部門などを続々分社化
・平均年収851万円、平均勤続年数は20年以上で従業員の定着はよい

業績動向

✔売上高と営業利益

中部電力の売上高は2.6億~3.1兆円前後で安定していたが、2022年以降は急激な増加傾向に転換*1。営業利益は2021年に赤字転落を経験したが、2023年には3,433億円まで増加*2。
*1:2022年以降の急激な売上高の増加は、世界的な原油価格の高騰による電力価格上昇が主要因。
*2:2023年には極端な利益増加が起こったが、これは燃料費調整制度によるタイムラグ影響。前年度における燃料価格の高騰分の収益がズレ込んだことによる大幅増益である。

✔セグメント別の状況

中部電力は、ミライズ事業(原子力発電・水力発電などによる電力供給、ガス供給)、パワーグリッド事業(電力ネットワークサービス)、JERA事業(燃料開発・調達・輸送、火力発電)、その他(不動産賃貸・電気計測機器製造・電柱広告・セキュリティ・情報処理サービスなど)の4事業を有する。
当社は2018年に火力発電事業を会社分割したうえで、東京電力フュエル&パワーと共同設立したJERAに統合しており、火力発電事業はJERA事業のなかに含まれる(参考資料)。中部電力グループとして電力以外の幅広い事業を展開しているが、これらは売上高の約10%程度に過ぎない。

✔最終利益と利益率

中部電力の純利益は2022年まで低迷していたが、2023年には純利益4,031億円を確保。営業利益率は平常時で4%~6%ほどで推移しており、高くも低くもない水準。

✔自己資本比率と純資産

中部電力の自己資本比率は長期的に30%台で推移しており、大手電力会社としてはトップクラスの水準にある。経済産業省の有識者審議会は一般電気事業の適切な自己資本比率を30%と掲げるが、中部電力の自己資本比率はこれを上回る*3。
*3:当社は火力発電比率がもともと高かったことから、他の大手電力会社よりも東日本大震災以降の業績不振が比較的軽傷で済んだ。そのため、財務基盤が他社よりも維持できている。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

中部電力の平均年収は直近で851万円。2014年頃には平均年収680万円まで下落したが、昨今は回復傾向。大卒総合職の場合、30歳で年収650万~750万円ほど、40代の課長職レベルで1,100万~1,200万円ほど。年功序列が強いため、若手の給与水準はあまり高くない。

✔従業員数と勤続年数

中部電力の従業員数は2020年に急減少。2020年には分社化によって従業員が約1.1万人も減少した*4。平均勤続年数は20年を上回っており、従業員の定着はよい。
*4:送配電インフラの透明化を目的とした政府方針に従い、送配電事業を中部電力送配電として分社化(参考:資源エネルギー庁)。販売部門を中部電力ミライズとして分社化。

総合評価

企業格付け:A

■業界ポジション
東京電力・関西電力に並ぶ大手電力会社であり、中部エリアへの電力供給を一手に担う。原子力発電の電源構成比率が少なかったことが幸いして、東日本大震災以降も業績・財務の悪化は東京電力・関西電力よりも限定的。規模こそ業界3位だが、業績・財務でみれば業界の優良児と評する声もなくはない。

■業績動向
世間の安定のイメージとは異なり、不安定。火力発電への依存度が高いがゆえに原油価格が業績に及ぼす影響は大きく、2022年には原油価格の急上昇によって純損失430億円を計上して最終赤字に転落。燃料費調整制度によって燃料価格の高騰分は電力価格に時期ずれで反映されるとはいえ、世間が思うような「安定企業」ではまったくない。

■財務体質
普通。直近の自己資本比率は36.4%と電力業界ではトップクラスであるが、他業界と比べればまったく凡庸な水準である。有利子負債は直近で2.79兆円にも達しており、相当の規模感である。

■海外戦略
2020年にはオランダの総合エネルギー企業Eneco社を買収。同社はドイツ・オランダ・ベルギーにおいて再生可能エネルギー発電などを手掛ける総合エネルギー企業であり、オランダでは業界2位に位置。海外事業の規模拡大を図りつつ、電力自由化・クリーンエネルギーで先行する欧州企業を傘下に収めることによるノウハウ蓄積を画策。

就職格付け:BBB

■給与水準
中部地方においてはトップクラスの給与水準。大卒総合職であれば30歳で年収650万~750万円には到達する。年功序列色が強いため、若手のうちはそれほど高い給与水準は得られないものの、勤続を重ねることで40代前後には課長職レベルに到達して年収1,100万~1,200万円ほどにはなる。東日本大震災以降には基準賃金・ボーナス・福利厚生のカットが連続して苦難の時期が続いた過去もあり、世間が思うような高給・安定のイメージと現実はやはり異なる。

■福利厚生
そこそこ。大手電力会社ゆえに独身寮・社宅は充実しており、住宅コストは大幅に抑制することができる。独身寮は35歳で退寮となり、家賃補助・住宅手当は40歳で支給終了となる。社内イベントを重視する社風であり、休憩時間・休日に「職場チームワークサポート行事」に駆り出される。毎年「CHUDEN RUNNING FESTA」には1万人以上の従業員が動員され、社内外への広報に福利厚生・健康増進活動として紹介されるが、今どきこれを有難がる社員は寧ろ少ないだろう。

■キャリア
事務職・技術職の2職種制。事務職は、経営戦略・調達・経理・営業・広報・海外事業をローテーションしながら経験と人脈を蓄積することが求められる。技術職は、原子力・再エネ・電気通信・配電・送変電などの各領域でのプロフェッショナルを目指すことが基本。転職市場で重宝される業界でもないため、事業環境が悪化した場合への覚悟と理解は必要。