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プラントエンジニアリング

日揮ホールディングスの企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

日揮ホールディングスは、石油・ガス・化学・食品・原子力など多種多様なプラント設備の設計・調達・建築などを手掛ける大手プラントエンジニアリング会社。1928年に製油所の運営を目指して日本揮発油の社名で創業したが、自前での製油所の建設は実現前に断念してプラントエンジニアリング事業へと転換。戦前~戦後は製油所エンジニアリングに特化していたが、1960年代には食品・医療・化学・原子力など対応領域を多角化。総合エンジニアリング事業へと転換したことで、1976年に現社名の日揮へと社名変更。世界80ヶ国以上で2万件以上のエンジニアリング実績を有しており、世界7位・国内首位のシェアを有する。

POINT

1.プラントエンジニアリング業界で国内首位、石油・ガス領域に強い
2.売上高は上下変動が激しいが利益はそこそこ安定、財務体質は良好
3.海外赴任者は20代で年収1,000万円を優に上回る

業績動向

✔売上高と営業利益

日揮ホールディングスの売上高は2015年の8,800億円をピークに減少、2022年は売上高6,069億円に回復したが低空飛行が続いている*1。営業利益は2016年を除けば安定的であり、営業利益200億~400億円レベルで推移*2。
*1:プラントエンジニアリング会社の売上高は大型プロジェクト有無・工事進捗・為替レートに大きく左右される特徴がある。加えて、日揮ホールディングスは採算性を重視して利益率が悪い案件の受注を避けている為に売上高は安定しない。
*2:2019年以降には、①COVID-19影響による工事計画の乱れ、②原材料価格の急激な高騰、などに見舞われたが利益率が高いプロジェクトを着実に進捗させることで営業利益をしっかりと確保。

✔セグメント別の状況

日揮ホールディングスは総合エンジニアリング事業(石油化学・ガス・LNG・一般科学・原子力・食品・環境に関するプラント設備の計画・設計・建設・試運転など)、機能材製造事業(触媒・ナノ粒子・電子材料・高性能セラミックスの製造・販売など)、その他事業(コンサルティング・オフィスサポート・水処理など)、の3事業を有する。
日揮ホールディングスは総合エンジニアリング事業が約90%を占めており、プラントエンジニアリングへの集中度が高い。機能材製造事業として触媒・電子材料などの製造も手掛けるが、業績への貢献度は少なめ。海外売上高比率が約70%を占めるグローバル企業である点も特徴的。

✔最終利益と利益率

日揮ホールディングスの純利益は▲400億~400億円ほどのレンジで推移しており、年度により好不調が分かれる。2016年と2021年には純損失に転落*3。営業利益率は3~5%レベルで概ね推移しており、大手企業としては標準的な水準である。
*3:2016年・2019年の純損失はいずれも大型プロジェクトでの計画混乱が主要因。2016年は中東石油プラント工事で現地工事会社の財務悪化で工事計画が大きく乱れたことによる損失、2019年はイクシスLNGプロジェクトに関わるINPEXとの訴訟による損失(詳細リンク)。

✔自己資本比率と純資産

日揮ホールディングスの自己資本比率は長年に渡って55%前後での推移が続いている。プラントエンジニアリングは大規模プロジェクトに失敗すると巨額の損失を計上するリスクがある為、堅実な財務体質をしっかりと維持している。純資産は4,000億円レベルでの横ばい推移が続いている。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日揮ホールディングスの平均年収は2018年まで1,000万円前後の高水準であったが、2019年以降は850万円レベルへ低下*4。国内勤務の場合は30歳前後で年収650~850万円に留まるが、海外赴任した場合には年収1,000万円を優に上回る水準に跳ね上がる。
*4:2019年に持株会社体制へ移行したことで、平均年収の算出母数が持株会社の300名ほどに縮小。海外赴任により年収1,000万円以上を稼ぐ従業員は事業会社へ移管された為に平均年収が低下している。

✔従業員数と勤続年数

日揮ホールディングスの従業員数は313人に過ぎず、従業員の大半は持株会社の傘下に置かれる事業会社に所属。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,800人ほど。平均勤続年数は14.8年前後と普通だが、持株会社の従業員のみの平均勤続年数なのであまり参考にならない。

総合評価

企業格付け:AA

プラントエンジニアリング業界では、千代田化工建設・東洋エンジニアリングと並んで業界御三家と称される企業。主力の石油・LNGプラントは大型プロジェクトの場合には数千億円レベルの受注高となることから、受注1件の重みが非常に大きい。成功すれば大きな利益を見込める反面、失敗すると数百億円レベルの特別損失が発生することも珍しくない。日揮ホールディングスの業績は売上高こそ上下変動が激しいものの、利益はかなり安定的に確保。2016年・2021年を除けば純利益も堅実に確保しており、受注戦略とプロジェクトマネジメントの巧さを感じさせる。財務体質も自己資本比率55%以上を確保しており、同業他社と比べると健全な財務基盤をしっかりと維持している。

就職格付け:A

日系プラントエンジニアリング会社では業界首位の存在であるが、石油・ガスなどの製造設備を製造する業界ゆえに一般社会での知名度はかなり低め。地元の神奈川県では日産自動車と並んで地元企業の雄として広く知られた存在であるが、他県では存在感は薄い。2013年にアルジェリアでガス処理施設がイスラム過激勢力に襲撃され、社員10人が死亡するという衝撃的な事件により日本国内で知名度が高まった時期もあった。給与水準は日本国内であっても平均年収850万円以上、海外赴任すれば年収1,000万円を優に上回る高給を得られる。2019年の持株会社体制への移行で平均年収が850万円レベルに後退したが、高給取りの海外赴任者が算出母数から外れただけである、海外赴任で発展途上国へ赴きダイナミックに働いて大きく稼ぎたいのであれば有力候補となる反面、赴任地にはイラク・アルジェリア・リビアなども並ぶため中途半端な海外への興味関心レベルで目指すべきではない。

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