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プラントエンジニアリング

千代田化工建設の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

千代田化工建設は、LNGプラント・製油所・銅精錬工場などの設計・建設・保守を主力とする三菱グループの大手プラントエンジニアリング会社。1948年に三菱石油工事部が分離独立して創業、石油精製装置や油脂抽出装置などを設計してプラントエンジニアリング会社としての歩みを始めた。製油所・LNGプラントの建造実績に富み、世界60ヶ国以上での建築実績がある。売上高の約56%はLNG関連施設とガス関係に強く、LNG受入基地建設では業界首位の日揮を差し置いて国内首位のシェアを誇る。筆頭株主は三菱商事であり、会長・社長・役員などの経営層には三菱商事出身者が名を連ねる。

POINT

1.プラントエンジニアリング業界で国内2位、LNGプラントに強い
2.2018年に深刻な業績悪化で債務超過に陥り、三菱商事が救済
3.海外赴任者は20代で年収1,000万円を優に上回る

業績動向

✔売上高と営業利益

千代田化工建設の売上高は2015年の6,115億円をピークに減少、2022年は売上高4,602億円に回復したが低空飛行が続いている*1。営業利益は2018年に営業損失1,998億円という規格外の損失を計上*2した以外は、営業利益70~180億円ほどで推移している。
*1:2015年頃の千代田化工建設は大型プロジェクトを多数手がけており、同年にはイクシスLNG・ヤマルLNG・ニソン製油所・米国LNGなどで完成工事高を得て、過去最高に達した。
*2:2018年の営業損失は、①キャメロンLNGプロジェクトでの熟練工の不足による工事不具合の続出、②タングーLNGプロジェクトでの工事遅延による損失拡大、が主要因。いずれも大型プロジェクトでの工事計画の見誤りによる大損失が重なった点が主要因。

✔セグメント別の状況

千代田化工建設はLNGプラント事業(LNGプラントの設計・調達・建設・保守など)、その他ガス事業(カタールにおけるLNG・ガス処理プラントの改造・改修など)、石油・石油化学関係事業(石油会社向け製油所の設備更新工事・耐震工事など)、医療・生化学・一般化学関係事業(医薬品メーカー向け製造設備の設計・建設・保守など)、環境・新エネルギー・インフラ関係事業(石炭火力発電所向け排煙脱硫設備・銅精錬工場・バイオマス発電所の設計・建設・保守など)、その他事業の6事業を有する。
千代田化工建設はLNGプラント事業が売上高の約55%を占めており、LNGプラントにおける競争力の高さを示している。一般化学・石油化学などのプラント建築も手掛けてはいるが、売上高に占める割合は高くない。海外売上高比率が約80%を占めるうえ、カタール・インドネシアでの売上高が高い点も特徴的。

✔最終利益と利益率

千代田化工建設の純利益は平常時であれば▲100億~150億円れべるで推移しているが、2016年・2018年には巨額の純損失を計上*3。営業利益率は2018年を除けば▲2%~6%ほどの水準で推移している。
*3:2016年の純損失は海洋石油・ガス海底生産システムを手掛ける海外子会社での業績悪化に伴う特別損失238億円の発生が主要因(参考リンク)。2018年の純損失は*2で解説した大型プロジェクトでの工事混乱が主要因。

✔自己資本比率と純資産

千代田化工建設の自己資本比率は2017年まで35%前後の水準で推移していたが、2018年には自己資本比率が債務超過によってマイナスに転落。2019年には三菱商事・三菱UFJ銀行による総額1,800億円もの支援に乗り出したことでマイナス圏は脱したが、依然として自己資本比率10%に満たない低空飛行が続いている。純資産は4,000億円レベルでの横ばい推移が続いている。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

千代田化工建設の平均年収は900万円前後での水準で安定的。国内勤務の場合は30歳前後で年収650~800万円に留まるが、海外赴任した場合には年収1,000万円を優に上回る水準に跳ね上がる。

✔従業員数と勤続年数

千代田化工建設の従業員数は1,500人レベルで安定的、債務超過に陥った時期も含めて社員数の減少は起こっていない。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3,900人ほど。平均勤続年数は12.2年と大手企業としてはやや短めな印象。

総合評価

企業格付け:BBB

プラントエンジニアリング業界において、日揮・東洋エンジニアリングと並んで業界御三家と称される企業。将来的に需要拡大が期待されるLNGプラントを重視した事業展開を進め、売上高の半分以上をLNGプラントで稼ぐ。業績は2016年頃までは売上高・利益いずれも好調であったが、難易度が高い大規模プロジェクトを同時並行しての業績拡大は千代田化工建設の工事遂行能力を超過していた。2017年以降には無茶な同時並行で工事混乱が続出、純損失2,149億円を計上して債務超過に転落。三菱商事・三菱UFJ銀行の支援を経て再建に向かいつつあるものの、依然として財務体質は自己資本比率が10%を下回る状況が続く。親会社の三菱商事は将来的なLNG需要の拡大に対して千代田化工建設の技術力は有益と評価している為、会長・社長など経営陣を送り込むことでテコ入れを図っている。

就職格付け:A

日系プラントエンジニアリング会社では日揮に続く業界2位の地位を長年に渡って占めてきた企業であるが、石油・ガスなどの製造設備を製造する業界ゆえに一般社会での知名度はかなり低め。深刻な業績悪化に陥ったとはいえ給与水準は依然として魅力的であり、日本国内でも平均年収800万円以上、海外赴任すれば年収1,000万円を優に上回る高給を得られる。福利厚生も恵まれており、入社後10年間に渡って借上げ社宅制度の対象。借上げ社宅という形態で最大7万円/月ほどの手当効果が得られるうえ、家賃補助制度と異なり手当部分に税金もかからない。海外赴任で発展途上国へ赴きダイナミックに働いて大きく稼ぎたいのであれば有力候補となる反面、海外赴任先は発展途上国が多いうえタフネスな異文化コミュニケーションが求められる。生半可な覚悟で目指す会社ではないが、他社にはないダイナミックな海外赴任経験が得られるだろう。