企業概要
積水ハウスは、戸建住宅・分譲住宅・マンション開発・リフォーム・不動産運営などを手掛ける大手住宅メーカー。1960年に積水化学工業のハウス事業部が分離独立して誕生。現在でも積水化学工業が発行済株式の約5%を保有する大株主であるが、積水ハウスも積水化学工業の発行済株式の約5%を保有する関係。積水化学工業は1971年にセキスイハイムの名称で住宅事業に再参入しており、競合関係でもある。住宅メーカーとしては大和ハウス工業に続く業界2位、日本を代表するハウスメーカーの1社。
・積水化学工業から分離した業界2位の大手住宅メーカー、大阪本社
・売上高・利益は右肩上がりで増加、財務体質もかなり健全
・平均年収882万円だが営業職は成績次第で超高給に、福利厚生はそこそこ
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:68(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間400人~500人とかなりの大量採用。総合職の出身大学は多様性に富み、営業職・技術職についてはハイレベル大学の出身者でなくとも実力さえあれば採用されやすい。
採用大学:【国公立】九州大学・神戸大学・大阪公立大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・関西大学・日本大学・近畿大学・東海大学・甲南大学・龍谷大学など(出典:大学通信ONLINE)
業績動向
✔売上高と営業利益
積水ハウスの売上高は長期的な成長基調が継続しており、2023年に過去最高となる売上高4.05兆円に到達*1。営業利益も売上高の成長に連動した成長基調にあり、2023年に過去最高となる2,615億円に到達。建築業界には珍しく、景気後退局面にも安定した利益確保ができている。
*1:当社の売上高は過去10年間で倍増。2014年以降の好景気により住宅需要が堅調に推移したことが追い風に。戸建・分譲・開発などの各事業がいずれも売上高を伸ばしている他、2024年には米・MDC社を買収したことで4兆円超えを達成している。
✔セグメント別の状況
積水ハウスは、戸建住宅事業(戸建住宅の設計・施工請負)、賃貸住宅・事業用建物事業(賃貸住宅・事業用建物の設計・施工請負)、建築・土木事業(建築・土木工事の設計・施工請負)、賃貸住宅管理事業(賃貸住宅の借上げ・管理)、リフォーム事業(増改築)、開発事業(オフィスビル・商業施設の開発、都市再開発)、国際事業(海外事業)、その他事業、の8事業を有する。
当社は大手ハウスメーカーではあるが、戸建て住宅に限らず、マンション・事業用建物・リフォームなど多種多様な事業を複合的に展開。海外展開にも力を入れており、2024年には米国11位のハウスメーカー・MDC社を買収(参考リンク)。現在では国際事業の売上高が約30%を占めるまでに伸びている。
✔最終利益と利益率
積水ハウスの純利益は2021年まで1,200億~1,400億円ほどで安定していたが、同年以降は増加傾向。2024年には過去最高となる純利益2,177億円まで到達*2。営業利益率は7%~9%程度の水準で推移、建設業界としては上位級の利益率を安定的に確保できている。
*2:2024年の利益好調の理由は、①原材料価格・人件費の上昇に対応した値上げ対応、②高付加価値提案による1棟あたり単価の上昇、③北米における戸建住宅事業の好調、など。
✔自己資本比率と純資産
積水ハウスの自己資本比率は概ね50%前後の水準で推移してきたが、2024年には40.8%に後退*3。ただし、利益体質が安定的であることを加味すれば、財務健全性は十分であろう。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2023年には2.01兆円に到達している。
*3:2024年に自己資本比率が低下した理由は、同年における米・MDC社の買収費用6,879億円を金融機関からの借入金によって調達したことが主要因(参考リンク)。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
積水ハウスの平均年収は2022年までは790万~830万円ほどで推移していたが、2024年には882万円まで上振れ。大卒総合職は30歳で年収600万〜680万円ほど、課長職レベルで1,100万〜1,300万円に到達する。給与体系は実力主義であり、営業職は実績により大きく給与額が変動するため個人差が大きい*4。
*4:営業職は販売実績に応じて青天井でインセンティブが加算される給与体系となっており、トップ営業マンであれば年収2,000万円以上にも達する。が、販売実績が振るわないと給与は伸び悩む傾向。
✔従業員数と勤続年数
積水ハウスの単体従業員数は2020年に1.5万人を超えたが、同年以降は横ばい。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は3.22万人規模となっている。平均勤続年数は16.5年ほどでの横ばいが継続。大手企業としては標準的な水準だが、実力主義色の強い企業としてはかなり長めの部類。
総合評価
企業格付け:A
住宅メーカーとしては大和ハウス工業に続く業界2位に位置する大手。戸建・分譲住宅が主力ではあるが、最近では不動産開発・運営や上場投資信託ファンドの運営にまで事業領域を拡大。業績においては長期的な成長が継続しており、売上高はかつての母体企業である積水化学工業の3倍以上にまで拡大。規模拡大に連動して営業利益・純利益も増加傾向が続いており、健全な成長を続けている。現在の当社は単なるハウスメーカーの枠を超え、賃貸住宅・賃貸管理・都市開発などの広範な事業領域を有しており、これらの事業の相乗効果が成長サイクルとなる好循環にあると評価できる。かつては海外展開が小規模であったが、2024年には米・MCD社の買収によって海外売上高比率は30%を突破するに至っている。財務体質においては自己資本比率40.8%(2024年)にやや後退しているが、米・MCD社の買収費用を資金調達したことによる影響。とはいえ、景気後退局面にも利益を安定的に確保できる利益体質も鑑みれば、倒産リスクとは当面無縁であろう。
就職格付け:BBB
住宅メーカーとしては大和ハウス工業・三井ホーム・住友林業などと並び立つブランド力を誇る名門中の名門。大阪本社の企業として知られ、本社は世界的な知名度が高い梅田スカイビルに所在している。給与水準においては、大卒総合職・30歳で年収600万〜680万円ほど、課長職レベルで1,100万〜1,300万円に到達する。大手メーカーと遜色ない給与水準ではあるが、実力主義の給与体系である点が最大の相違点であり、営業職は販売実績によりインセンティブ・賞与が大きく変化するため個人差が大きくなる。その他の職種は営業支店の業績により評価されるため、所属支店の実力値により給与水準が左右される。とはいえ過度な実力主義に傾倒しているわけでもなく、ブランド力が高い為に無理な営業の必要もない。過酷なノルマに追い詰められることもないため、平均勤続年数も16.4年(2024年)とそこそこ長め。福利厚生もそこそこ恵まれており、30歳未満の独身社員で条件を満たせば月5,000円で社宅に入居可能。社宅として自社賃貸ブランド「シャーメゾン」の物件が与えられるケースも多い。