企業概要
東北電力は、東北地方全域において発電事業・電気小売事業を展開する大手電力会社。1942年に国家総動員体制下における電力会社の統合により設立、1951年に東北電力として再編された。1970年代以降はオイルショックを契機に石油火力への依存緩和に向けて、大規模水力発電所や原子力発電所の開発に注力。電力会社としては中部電力に続く国内4位の売上高を誇り、東北地方に本社を置く企業としては傑出した企業規模を誇る。エリアが隣接する東京電力とは電力融通で協力関係。
・東北屈指の売上高を誇る大手電力会社、東北経済を牽引する名門企業
・売上高は過去最高を記録するも利益率低迷が深刻、財務体質も悪化傾向
・平均年収793万円と東北エリアでは最高峰の待遇、福利厚生は普通
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
大卒総合職の採用人数は年間110人~150人、うち技術コースが70人~100人を占める。総合職の出身大学は東北エリアの大学が多いが、首都圏の名門大学からのUターン就職者も多い。
採用大学:【国公立】東北大学・東京工業大学・北海道大学・岩手大学・秋田大学・長岡科学技術大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・立命館大学・中央大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
東北電力の売上高は2021年まで約2兆円レベルで安定していたが、2022年には売上高3兆円規模に急増して過去最高を更新*1。営業利益は2015年から右肩下がりが続いており、2022年には営業赤字1,801億円を計上*2。
*1:2022年にはロシアによるウクライナ侵攻で燃料油価格が急騰。燃料価格の上下変動を電気料金に転嫁する燃料費調整額が急増したことで売上高が急増した経緯。
*2:2023年には極端な利益増加が起こったが、これは燃料費調整制度によるタイムラグ影響。前年度における燃料価格の高騰分の収益がズレ込んだことによる大幅増益である。
✔セグメント別の状況
東北電力は発電・販売事業(火力・原子力・再生可能エネルギーの発電・販売など)、送配電事業(中立公平な電力ネットワークサービスなど)、建設事業(電気・通信・土木・建築工事および電力供給設備の設計・製作など)、その他(輸送・警備・住宅機器・福利厚生など)、の5事業を有する。
東北電力のコア事業は発電・販売事業と送配電事業の2事業であり、売上高の約90%を電力関連で稼いでいる。利益面でも同2事業によって全社利益の約90%を稼いでおり、非電力事業への依存度は低い。
✔最終利益と利益率
東北電力の純利益は2022年まで低迷が続いており、2021年・2022年にはそれぞれ純損失1,000億円以上を計上*3。が、2023年には純利益4,031億円まで急増。営業利益率は2021年にマイナス圏に転落したが、同年以降は回復傾向。
*3:2021年の純損失は同年の福島県沖地震による火力発電所の停止による特別損失などが主要因。2022年の純損失は2度目の福島県沖地震による火力発電所の停止長期化や卸電力市場での電力調達コスト負担による損失などが主要因。
✔自己資本比率と純資産
東北電力の自己資本比率は長年に渡って10%台での推移が続いている。2022年には自己資本比率10.5%まで低下して以降は微増傾向にあるが、他電力会社と比べても低めの推移である*4。
*4:経済産業省の有識者審議会は一般電気事業の適切な自己資本比率を30%と掲げるが、東北電力の自己資本比率はこれを下回る推移が続いている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
東北電力の平均年収は緩やかな増加傾向が続いており、直近の2022年には平均年収793万円に到達。大卒総合職の場合、30歳で年収650万~750万円ほど、40代の課長職レベルで1,100万~1,200万円ほど。東北地方の大手企業としては傑出した平均年収の高さを誇る。
✔従業員数と勤続年数
東北電力の単体従業員数は2020年の分社化によって急減少。1.25万人(2016年)から0.5万人(2021年)まで7,500人規模の減少となった*5。平均勤続年数は20年前後の高水準で安定推移している。
*5:送配電インフラの透明化を目的とした政府方針に従い、送配電事業を東北電力ネットワークとして分社化(参考:資源エネルギー庁)。
総合評価
企業格付け:A
■業界ポジション
電力会社としては中部電力に続く業界4位に位置しており、東北エリア全域への電力供給を一手に担う。1980年代から稼働を始めた女川原発は、東京電力への電力バックアップ機能をも持ち合わせる。が、2015年には東京ガスと折半出資でシナジアパワーを設立して東京エリアへの電力小売事業へと攻め込んだ(同社はのちに業績不振で経営破綻)。
■業績動向
回復傾向。燃料価格・原発政策に業績を左右されやすく、福島第一原発事故後の原発停止や2021年以降の燃料価格高騰に苦しんできた。が、2023年には燃料費調整制度によるタイムラグ影響で大幅増益に転換。電気価格の値上げも認められたことで、事業環境は好転しつつある。2024年には女川原発の再稼働を目指す。
■財務体質
弱い。東日本大震災以降の原発停止期間において深刻な業績不振に直面したこともあり、最悪期の2022年には自己資本比率10.5%まで低下しており危うい状況であった。2023年には業績回復もあって自己資本比率15.4%まで回復したが、今なお安心圏とは程遠い。
就職格付け:A
■業界ポジション
直近の平均年収は796万円と大手電力会社の名に恥じない給与水準。大卒総合職の場合、30歳で年収650万~750万円ほど、40代の課長職レベルで1,100万~1,200万円ほど。大手インフラの中でも上位級の平均年収であることは当然、東北エリアにおいては断トツで最高峰の給与水準を誇る企業である。
■業績動向
大手企業なりの制度が揃っているが、家賃補助制度がない点は辛い。事業所周辺には格安で利用できる社宅・寮が揃っているとはいえ、心理的に従業員コミュニティとは別に住居を構えたい場合や綺麗な新居に住みたい場合には自腹を切る必要がある。
■財務体質
総合コース・技術コースの2職種制。総合コースという聞き慣れない単語ではあるが、これは事実上の事務系総合職であり、営業・広報・経理・調達・人事・ITなどを担当する。総合コースで入社するとまずは支店での接客・営業にて1〜4年ほどを過ごして現場を知った後、適性に応じた本社部門へと配置されていく。技術コースは発電所・電力網の保守保全業務から入ることが多い。総合職は部門を跨ぐローテーションが比較的多く、経験値が分散しやすい傾向はある。