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【勝ち組?】日野自動車の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

日野自動車は、トラック・バスなどの商用車およびディーゼルエンジンなどを製造販売する大手自動車メーカー。1942年にヂーゼル自動車工業(現・いすゞ自動車)日野製造所が分離独立、戦後にトラック・バスなどの商用車分野に進出した。現在では小型・中型・大型トラックの他、トヨタ自動車から乗用車・トラック・ディーゼルエンジンを受託生産。2022年にエンジン不正問題が発覚して巨額損失を計上。2023年にはダイムラートラック社の仲介で三菱ふそうトラック・バスとの経営統合を宣言(参考リンク)。

POINT

・日系商用車メーカーの雄であったが、不正問題を経て業績不振に
・業績・財務は不正問題を経て急激悪化、2023年は営業赤字に転落
・平均年収654万円だが、若手社員の離脱で平均年齢・勤続年数が急上昇

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:61(中堅上位)

サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:やや易しい

総合職の採用数は年間50人~100人規模だが、うち60%以上が技術系採用。エンジン不正問題と業績悪化を経て人気度は低下しており、入社難易度は下がっている。
採用大学:【国公立】岡山大学・岩手大学・埼玉大学・信州大学・豊橋技術科学大学など、【私立】青山学院大学・中央大学・東京理科大学・東京電機大学・東京都市大学など(出典:マイナビ2025

業績動向

✔売上高と営業利益

日野自動車の売上高は2018年の1.98兆円をピークに減少、2020年以降は売上高1.5兆円規模で低空飛行が続く*1。営業利益は右肩下がり、2014年に記録した営業利益1,121億円から大幅減少。2023年には赤字圏に転落。
*1:2020年はCOVID-19による世界的な混乱により販売台数がグローバルで急減。2021年は北米のエンジン認証試験をクリアできず販売台数が79.5%減少する事態に追い込まれ(参考リンク)、2022年には日本でエンジン不正問題が発覚して主力車種が販売停止に陥るなどのトラブルが頻発。

✔セグメント別の状況

日野自動車は日本事業(日本国内における商用車販売、トヨタ自動車からの受託生産、ディーゼルエンジンなど)、アジア事業(タイ・インドネシアなど)、その他事業(アメリカ・オーストラリアなど)、の3事業を有する。
日野自動車は販売台数の約10%を日本国内向け、販売台数の約90%が海外市場向けのグローバルな自動車メーカー。ただし、セグメント別に見ると日本事業の売上高が約50%を占める。これは、①日本向けトラックが比較的高額である点、②日本からの輸出が含まれる点、③トヨタ自動車からの受託生産が含まれる点、に起因。

✔最終利益と利益率

日野自動車の純利益は2018年には500億円を越えていたが、2022年には純損失1,177億円を計上*2。2023年には純利益170億円を確保しているが、これは資産売却によるもの*3。営業利益率は右肩下がりで低下、2023年にはマイナス圏に転落。
*2:2021年・2022年の決算には日本国内でのエンジン不正問題に関する特別損失を計上、大幅赤字の要因となっている。2021年は特別損失400億円、2022年は特別損失900億円と巨額損失に苦しむ。
*3:2023年は純利益170億円を確保しているが、これは固定資産売却益883億円・有価証券売却益191億円によるもの。社名の由来たる日野工場を一部売却(参考リンク)、子会社工場と敷地を売却(参考リンク)、など。日野工場の全面的売却も視野に入れた検討が進められている。

✔自己資本比率と純資産

日野自動車の自己資本比率は2020年の45%をピークに急減少。エンジン不正問題による巨額損失によって、直近では自己資本比率26%まで下落している。純資産も2020年から減少傾向が続いており、2022年には4,334億円まで下落。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日野自動車の平均年収は650万円前後の水準で極めて安定的に推移しており、業績悪化の局面でも底堅く推移している。大卒総合職の場合は30歳で年収500~700万円程度、課長職に昇進すれば年収850~950万円程度。従業員の平均年齢が右肩上がりで増加しているが、これは若手社員が退社して高齢社員が取り残されている可能性がある。

✔従業員数と勤続年数

日野自動車の従業員数は2019年までは微増傾向が続いていたが、2020年以降は減少傾向に転換。平均勤続年数が右肩上がりで伸びているが、2019年以降に増加ペースが加速していることから勤続年数が短い若手社員の離職による増加が発生している可能性がある。

総合評価

企業格付け:C

■業界ポジション
いすゞ自動車と双璧を為す日系商用車メーカーの雄、であったが2019年以降は続々と経営課題に直面して業績悪化。2020年にはアメリカでエンジン認証を取得できず、半年以上に渡って現地工場が車両生産を停止する悲惨な事態に陥り、2022年には日本国内でのエンジン不正問題により主力車種が軒並み販売停止に。2023年には三菱ふそうトラック・バスとの経営統合を発表、再建に向けた道のりは厳しい。

■業績動向
悪化傾向。2022年のエンジン不正問題による混乱で売上高・利益いずれも急落。2022年までは最終赤字を計上しつつも営業利益だけは確保できていたが、2023年には営業赤字に転落。2023年は最終利益170億円を確保しているものの、これは本社工場の一部売却などによる黒字であり内実は苦しい。

■財務体質
悪化。2020年は自己資本比率45%と良好な水準にあったが、同年以降に巨額損失を繰上げしたことで自己資本比率26.8%(2023年)まで低下。これでも倒産を心配するような水準ではないものの、景気動向に業績を左右されやすい自動車メーカーとしては低めの水準に低落。

就職格付け:DD

■給与水準
直近の平均年収は654万円と完成車メーカーとしては低めの水準。業績好調であった2018年の平均年収667万円と比べて下落幅は限られるが、業績悪化してから平均年齢が急上昇している(≒若手社員が離脱している)事情を考えれば楽観視もできない。大卒総合職の場合は30歳で年収500~700万円程度、課長職に昇進すれば年収850~950万円程度。

■福利厚生
まずまず。自動車メーカーの例に漏れず、独身寮は整備されているものの、原則入社5年以内に退寮して自立する必要がある。家賃補助制度もあるが月額1万円程度と、金額としては多くもない。三大連休は連続10日程度の休みがしっかりと確保されており、ゆっくり休むことができる。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職・デザイン職の3職種制。事務系総合職は営業・生産管理・経理・調達・法務・総務などに配属され、技術系総合職は研究開発・生産技術・品質保証・ITなどに配属される。部門間を跨ぐローテーションも少なくなく、複数領域を経験しながら知見を深めることが要求される。年功序列色が強いために抜擢人事などはあまりない。現経営陣はトヨタ自動車・三井物産・商船三井などの出身であり、当社出身者は1名のみ。プロパー入社で役員まで上り詰めるのは中々に難しい。

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出典:日野自動車株式会社(有価証券報告書)