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プラントエンジニアリング

【勝ち組?】日揮の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

日揮ホールディングスは、石油・ガス・化学・食品・原子力などの設計・調達・建築を手掛ける大手プラントエンジニアリング会社。1928年に製油所の運営を目指して日本揮発油の社名で創業したが、製油所の運営は断念してプラントエンジニアリング事業へと転換。戦前~戦後は製油分野に特化していたが、1960年代に食品・医療・化学・原子力などに多角化。総合エンジニアリング事業へと転換したことで、1976年に現社名の日揮へと社名変更。世界80ヶ国以上で2万件以上の実績があり、世界7位・国内首位のシェアを有する。

POINT

・プラントエンジニアリング業界で国内首位、石油・ガス領域に強い
・売上高・利益いずれもムラあり、財務体質はかなり良好
・海外赴任者は20代で年収1,000万円を超えるが危険地域も多い

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:73(最上位)

日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関上位級

採用人数は年間150人前後だが、技術系130名・文系20名程度と理系採用枠に偏る。世間における知名度はやや低いが、やはり総合職の出身大学は旧帝大・早慶がボリューム層。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・東京工業大学・大阪大学・名古屋大学・横浜国立大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・東京理科大学など(出典:unistyle

業績動向

✔売上高と営業利益

日揮ホールディングスの売上高は2020年まで減少傾向にあったが、同年以降は急回復。2023年には8,325億円まだ急増*1。営業利益は2016年を除けば安定的であったが、2023年には赤字転落*2。
*1:当社の売上高は大型プロジェクト有無・工事進捗・為替レートに大きく左右される特徴がある。2021年以降は世界的な景気回復による設備投資活性化や、為替レートの円安推移が売上高を急増させた。
*2:2023年に赤字転落した理由は、①リージョン経営化への移行失敗、②大型工事の重複によるプロジェクト遅延の発生、③遅延挽回のためのリソース投入、など。

✔セグメント別の状況

日揮ホールディングスは総合エンジニアリング事業(石油化学・ガス・LNG・一般科学・原子力・食品・環境に関するプラント設備の計画・設計・建設・試運転など)、機能材製造事業(触媒・ナノ粒子・電子材料・高性能セラミックスの製造・販売など)、その他事業(コンサルティング・オフィスサポート・水処理など)、の3事業を有する。
日揮ホールディングスは総合エンジニアリング事業が約90%を占めており、プラントエンジニアリングへの集中度が高い。機能材製造事業として触媒・電子材料などの製造も手掛けるが、業績への貢献度は少なめ。海外売上高比率が約70%を占めるグローバル企業である点も特徴的。

✔最終利益と利益率

日揮ホールディングスの純利益は▲400億~400億円ほどのレンジで推移しており、年度により好不調が分かれる。2016年・2021年・2023年には純損失に転落*3。営業利益率は3~5%レベルで概ね推移しており、大手企業としては標準的な水準。
*3:2016年・2019年の純損失はいずれも大型プロジェクトでの計画混乱が主要因。2016年は中東石油プラント工事で現地工事会社の財務悪化で工事計画が大きく乱れたことによる損失、2019年はイクシスLNGプロジェクトに関わるINPEXとの訴訟による損失(詳細リンク)。

✔自己資本比率と純資産

日揮ホールディングスの自己資本比率は55%前後での推移が続いていたが、2023年には48.7%に後退。プラントエンジニアリングは大規模プロジェクトに失敗すると巨額損失を計上するリスクがある為、堅実な財務体質の維持を試みている。純資産は4,000億円レベルでの横ばい推移が継続。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日揮ホールディングスの平均年収は2018年まで1,000万円前後の高水準であったが、2019年以降は850万円レベルへ低下*4。国内勤務の場合は30歳前後で年収650~850万円に留まるが、海外赴任した場合には年収1,000万円を優に上回る水準に跳ね上がる。
*4:2019年に持株会社体制へ移行したことで、平均年収の算出母数が持株会社の300名ほどに縮小。海外赴任により年収1,000万円以上を稼ぐ従業員は事業会社へ移管された為に平均年収が低下している。

✔従業員数と勤続年数

日揮ホールディングスの従業員数は313人に過ぎず、従業員の大半は持株会社の傘下に置かれる事業会社に所属。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は7,800人ほど。平均勤続年数は14.8年前後と普通だが、持株会社の従業員のみの平均勤続年数なのであまり参考にならない。

総合評価

企業格付け:AA

■業界ポジション
プラントエンジニアリング業界では、千代田化工建設・東洋エンジニアリングと共に御三家と称される企業。実際には他2社を突き離して当社が業界首位の地位にある。主力の石油・LNGプラントは大型プロジェクトの場合には数千億円レベルの受注高となり、受注1件の重みが大きい。成功すれば大きな利益を見込める反面、失敗すると数百億円レベルの特別損失が発生することも珍しくない。

■業績動向
暗転。2021年から業績回復が進んでおり更なる躍進が期待されていたが、2023年は営業赤字に沈んだ。海外グループ企業の対応能力を超える中規模案件を並走させたことでプロジェクト進捗が悪化。遅れを取り戻すためのリソース注入によりコストが大幅悪化。

■財務体質
後退。長年に渡って自己資本比率55%近傍で推移していたが、2023年は久々に50%割れに。依然として高めの水準であるが、プラントエンジニアリング業界は大型案件に成功すれば大きな利益を見込め、失敗すれば大きな損失が発生するハイリスク・ハイリターンな業界。早めの財務体質の回復が望ましいか。

就職格付け:A

■給与水準
直近の平均年収は844万円となり、イメージほどは高くない。が、これは持株会社の300人強の平均年収に過ぎない。事業会社の大卒総合職の平均年収はこれよりも高く、30歳前後で年収650~850万円に。海外赴任した場合には赴任手当が乗るために、年収1,000万円を優に上回る。

■福利厚生
良い。独身寮は横浜市内に2か所あり、「32歳未満かつ通勤2時間以内に実家がない場合」に入居できる。プロジェクト遂行のための赴任者ならば会社負担で住居が用意され、生活コストを大幅圧縮できる。本社オフィスは横浜・みなとみらいの一等地に所在しておりロケーションは抜群。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。事務系総合職は持株会社への配属となり、技術系総合職は事業会社である日揮グローバル社・日揮社のいずれかに配属となる。入社後の配属職種で経験を深めつつ専門性を高めるキャリアが主。意外と入社10年目までは横並び評価の傾向が強く、優秀であっても昇進・昇給に差がつき始めるまで時間が掛かる傾向。

■危険地域への覚悟
石油分野に強い性質から、赴任地にはイラク・アルジェリア・リビアなどの危険地域が並ぶ。海外赴任で発展途上国へ赴きダイナミックに働いて大きく稼ぎたいのであれば魅力的である反面、生半可な覚悟では心が折れる。

■2013年の悲劇
2013年にアルジェリアでガス処理施設がイスラム過激勢力に襲撃され、当社の社員10人が死亡するという衝撃的な事件が発生(参考リンク)。数多くの社員を失った記者会見においては役員層が声を詰まらせながら状況を説明する悲劇的な事態となった。危険地にも厭わず赴任してプラント建設を遂行することが当社の誇り高い使命である反面、やはり地域によっては相応の危険はある。

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出典:日揮ホールディングス株式会社(有価証券報告書)