企業概要
商船三井(略称:MOL)は、三井グループに属する国内最大手の大手海運会社。1942年に三井物産船舶部が分離独立して創業、1964年には大手海運会社の大阪商船と合併。1965年には世界初のRO-RO式外航自動車輸送船”追浜丸”を建造、国産車の北米向け大量輸出を実現した。1998年にはナビックスラインと合併、業界首位の日本郵船に並ぶ企業規模へと躍進。2017年に日本郵船・川崎汽船とコンテナ船部門と合併させて発足した、新会社ONEは世界第6位のコンテナ船運航規模を誇る。
・日本郵船と並ぶ大手海運会社の一角、三井物産から分離独立した企業
・売上高・利益いずれも2021年から絶好調、財務体質も急回復
・平均年収1,000万円前後、業績好調なら1,500万円以上
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:77(最高峰)
日本企業における最高峰クラスのキャリアであり、誰もが勝ち組として認めるレベルの待遇・名声が得られる。入社するためには人並み外れた能力・努力は当然、運も必要である。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:最難関級
総合職の採用数は年間30人ほどに過ぎず、知名度の高さもあって倍率は極めて高い。大卒総合職の出身大学もトップレベルの大学が大多数であり、極めて狭き門である。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・一橋大学・大阪大学・九州大学・神戸大学・東京外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
商船三井の売上高は長年に渡って0.9兆~1.6兆円のレンジで推移しており、年度により好不調が大きく分かれる*1。営業利益も年度により極端に分かれていて安定性はないが、2022年からは1,000億円を上回って推移している*2。
*1:海運業界は極めて市況変動が激しい業界であり、市況高騰と低迷を歴史的に繰り返している特徴がある。2020年以降には歴史的な海運バブルが10年ぶりに到来、海運各社は大幅な増収増益を遂げた。
*2:2021年はCOVID-19感染拡大によるサプライチェーンの混乱で海運市況が大幅高騰、海運運賃の上昇によって売上高・利益が急増。過去最高を記録した2008年には営業利益2,912億円を記録している。
✔セグメント別の状況
商船三井はドライバルク事業(石炭・鉄鉱石・木材チップ運搬船など)、エネルギー事業(タンカー・LNG船など)、製品輸送事業(コンテナ船・自動車専用船・フェリー・内航Ro-Ro船など)、不動産事業(土地建物貸借・ビル管理など)、関連事業(クルーズ・曳船・商社など)、その他の4事業を有する。
商船三井の売上高を支えているのは、ドライバルク事業・エネルギー事業・製品輸送事業の3事業。直近数年はコンテナ運賃市況の急騰によって製品輸送事業の売上高・利益が急増しており、業績を牽引している。コンテナ船事業は2017年の分社化により現在は持分法適用会社のONEに委ねられているが、同社からの配当金が業績に組み込まれている事情がある。
✔最終利益と利益率
商船三井の純利益は2020年まで低空飛行が続いていたが、2020年以降は右肩上がりで増加。2022年には純利益7,961億円に到達して過去最高を更新。営業利益率は0~6%レベルで推移しているが、営業利益には持分法適用会社あるコンテナ船部門の利益が計上されないため業績好調が数字に表れにくい
✔自己資本比率と純資産
商船三井の自己資本比率は長年に渡って20%台での推移が続いていたが、2021年以降は業績好調で急回復。直近の2023年には57.1%に到達して大いに健全な水準へ到達。純資産も2021年から急増加、直近の2023年には純資産2.36兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
商船三井の平均年収は長年に渡って1,000万円前後での推移が続いているが、直近の2022年は業績好調により1,517万円へと急増。大卒総合職であれば30代で1,000万円を超える。業績によりボーナス額が変動するため、業績低迷時は平均年収900万円台に後退する。平均年齢は37歳前後で横ばい推移。
✔従業員数と勤続年数
商船三井の従業員数は1,168人に過ぎず、少数精鋭の組織となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は8,748人ほど。平均勤続年数は13.5年前後であり、大手企業としてはやや短めの水準。
総合評価
企業格付け:AAA
■業界ポジション
日本郵船と並び立つ国内最大手の海運企業。戦前からの超名門企業である日本郵船とは異なり、戦時中までは三井物産の一部門として事業展開をしてきた歴史がある。戦後に大阪商船・ナビックスラインとの合併を経て業界2位の規模までの拡大を果たした点では新興企業。
■業績動向
浮き沈みが極端に激しい。2020年までは長引く海運不況で業績低迷していたが、2021年以降は海運市況の高騰で純利益7,000億円を超える絶頂期が再来。海運業界は海運市況による乱高下を歴史的に繰り返す特徴がある為、業績に安定感はまったくないのも仕方がない。
■財務体質
急回復。2020年までは自己資本比率20%台まで衰弱していたが、2021年以降の利益急増をよって2023年には自己資本比率57.1%まで急回復を遂げた。純資産は2兆円以上に膨れ上がっており、次の海運不況が到来しても生き永らえるだけの財務体質の健全化を果たした。
就職格付け:AAA
■給与水準
直近の平均年収は1,517万円と高いが、これは業績好調により賞与が激増したことが主要因。海運不況期には平均年収900万円台まで後退するため、安定性はない。大卒総合職かつ業績堅調ならば30代で900万〜1,000万円、課長職レベルなら1,200万〜1,500万円にはなる。総じて恵まれてはいるが、海運不況期には給与水準が大幅下落すると大手メーカーの総合職とそれほど大差はない。
■福利厚生
意外と普通。家賃補助制度はあるものの、支給額は月額2.5万円と中堅企業並みの金額。若手社員には独身寮・社宅が与えられるが、都心からやや離れた立地で利便性は微妙。サークル活動が盛んであり、ボート部・野球部・サッカー部・ヨガ部など約30組織もある。
■キャリア
陸上職事務系・陸上職技術系・海上職の3職種制であり、このうち陸上職がいわゆる総合職に該当する。陸上職事務系は営業・運航管理・経営企画・法務・人事などに従事し、陸上職技術系は造船計画・発注・建造監督・技術開発などに従事する。総合職の異動は概ね3年〜5年周期。海上職は機関士や航海士などを経験しつつ、最終的には船長・機関長を目指す。