企業概要
三菱ケミカルグループは、石油化学製品・フィルム・医薬品・炭素繊維など多種多様な機能性材料や先端・基礎材料を製造する大手化学メーカー。1934年に三菱鉱業と旭硝子(現・AGC)が設立した日本タール工業を源流とし、2005年に三菱化学・三菱ウェルファーマが合併。2007年には三菱樹脂を買収、2010年には三菱レイヨンを買収して傘下に加えた。日系化学メーカーで売上高首位を誇り、世界45ヶ国・関係会社625社で事業を展開する巨大企業。アクリル樹脂の主原料であるMMAにおいて世界シェア首位。
・売上高で国内首位の大手化学メーカー、規模と事業領域の広さが強み
・売上高は増えるも利益は停滞、財務体質はやや微妙
・大卒総合職なら平均年収800万円ほど、福利厚生は制度改正で弱体化
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:73(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
採用人数は年間200人前後と門戸は広いが、うち150名ほどが理系院卒と理系偏重型の採用。総合職の出身大学は旧帝大・早慶の他、東京工業大学・東京理科大学などの勢力も強い。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・東京工業大学・九州大学・神戸大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・東京理科大学など(出典:リクナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
三菱ケミカルグループの売上高は2020年を底に回復傾向にあり、2022年には4.63兆円に到達*1。営業利益は年度によるばらつきが大きいが、リーマンショックやCOVID-19感染拡大の時期も含めては営業黒字をキープしている。
*1:2021年から売上高が増加した理由は、①原油価格の上昇を受けた販売価格の値上げ対応、②産業ガス・ヘルスケア分野などの非石化部門の販売好調、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
三菱ケミカルグループは機能商品事業(ポリマー・添加剤・フィルム・炭素繊維・半導体/電池材料など)、ケミカルズ事業(MMAモノマー・石化基盤・炭素など)、産業ガス事業(産業ガス)、ヘルスケア事業(医薬品・ライフサイエンスなど)、その他事業、の5事業を有する。
三菱ケミカルグループは様々な機能性素材を製造しているが、特定事業に依存しないセグメント構造事業となっている。利益面では、ケミカルズ事業と産業ガス事業が稼ぎ頭となっている状況。
✔最終利益と利益率
三菱ケミカルグループの純利益は年度により好不調が分かれており、2017年の純利益3,557億円が過去最高記録。2020年には純損失に転落*2。営業利益率は1桁%台での低空飛行が常であり、大手化学メーカーの割に利益率は微妙。
✔自己資本比率と純資産
三菱ケミカルグループの自己資本比率は直近で26.2%と低めの水準、景気変動に敏感な業態であることを考慮するとやや不安。純資産も1兆円台で上下変動を繰り返しており、長期的な成長傾向は見られない。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三菱ケミカルグループの平均年収は直近で949万円とかなり高めの水準だが、これは持株会社の223名のみの平均年収。大卒総合職の平均年収は750~850万円程度と推定され、管理職に昇格すれば1,000万円を越える。
✔従業員数と勤続年数
三菱ケミカルグループの従業員数は7万人前後の水準で安定しており、社員規模は一定をキープ。平均勤続年数は18.5年前後と大手メーカーとしては標準的な水準だが、これは持株会社の223名のみの平均勤続年数。
総合評価
企業格付け:A
■業界ポジション
化学業界において売上高首位に君臨する業界の巨人。売上高4兆円規模は他化学メーカーを引き離して断トツ首位であるが、最終利益では信越化学工業の後塵を拝する状況。規模の大きさは強みであれども、肝心の石油化学部門の利益率が高くないのが痛い。
■業績動向
売上高は伸びるが利益が伸びず。原油価格の上昇分を値上げしたことで売上高は伸びているものの利益水準が上がったわけではない。人件費・原材料価格の高騰もコスト要因となっており、利益が伸び悩む。利益率が低い石化部門の分社化を2023年に予定していたが、競合他社との交渉が難航して実現に至らず。
■財務体質
微妙。2019年から自己資本比率は改善傾向にあるが、直近でも28.9%とそれほど高い水準にはない。2019年には田辺三菱製薬を約5,000億円で買収するなど積極策により、有利子負債は直近で2.2兆円(2023年)にも及ぶ。当社が純利益1,000億〜2,000億円レベルであることを思うと、負債規模は大きい。
就職格付け:A
■給与水準
直近の平均年収は1,045万円と高いが、これは持株会社の430人に限った給与水準。事業会社の場合は総合職・30歳で年収700万〜800万円ほど、課長代理に昇格すると年収1,000万円に到達する。同業他社をベンチマークした給与水準とはなっているが、他社よりも特段高い賃金レンジに設定されているわけでもない。そのため給与水準は業界の他大手と同レベルである。
■福利厚生
微妙。2021年に人事制度を大改訂して家族手当・住宅手当を廃止。社員の平等性を考慮しての制度改正との建前があるが、実際には年齢や扶養家族の有無によって生活に必要な資金は異なるため、若手社員や扶養家族の多い社員は相対的に不利な環境に置かれる。燻り続けている石化部門の分社化リスクの再燃も考慮しておく必要があるだろう。
■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。事務系総合職は営業・事業管理・生産管理・経理・人事・総務・購買・物流・ITに配属され、技術系総合職は研究開発・生産技術などに配属される。意外と年功序列色が強く、30代中盤にある課長職レベルへの昇格試験までは昇進に差がつきにくい。