企業概要
AGCは、ガラス製品・電子部品・化学品・セラミックス製品などを展開する三菱グループのガラス系素材メーカー。1907年に岩崎俊弥が「旭硝子」として創業、日本板硝子と双璧を為す日系ガラスメーカーとして戦前からガラス産業を牽引。苛性ソーダをはじめとする化学品分野でも存在感があり、戦後は電子部品や半導体分野にも積極進出。現在ではガラス・電子・化学品・ライフサイエンス・セラミックスなど幅広く事業展開。自動車用ガラス・フッ素樹脂・フロート板ガラスで世界トップシェアである。
・日系ガラスメーカー断トツ首位、事業多角化でガラス依存度は低い
・売上高・利益いずれも好調、財務体質も堅実で隙がない
・平均年収825万円と良好だが超高給ではない、福利厚生は住宅補助が手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:71(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間150人以上だが、技術系採用に偏重しており事務系採用は25名に過ぎない。大卒総合職の出身大学は旧帝大・早慶がボリューム層。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・国際教養大学・横浜国立大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・同志社大学・関西学院大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
AGCの売上高は2021年から増加傾向が続いており、直近では2兆円以上に到達して過去最高を更新*1。営業利益は2021年に急増加を遂げた*2が、同年以降は減少傾向にある。
*1:2021年以降の売上高の増加は、①世界的な物価高騰によるガラス・フッ素・苛性ソーダ・塩化ビニル樹脂などの販売価格上昇、②半導体・バイオ医薬品など戦略事業の業績拡大。
*2:2021年の営業利益の急伸は、①中国の規制強化による塩化ビニル樹脂の販売価格上昇、②赤字転落していたガラス事業の構造改革による黒字回復、が主要因。
✔セグメント別の状況
AGCは、建築ガラス事業(建築用ガラス・装飾ガラス・板ガラスなど)、オートモーティブ事業(自動車用ガラス・車載ディスプレイ用ガラスなど)、電子事業(液晶ガラス基板・有機ELガラス基板・ソーラー用ガラス・半導体プロセス部材など)、化学品事業(塩化ビニル・苛性ソーダなど)、ライフサイエンス事業(医農薬原体・バイオテクノロジーなど)、その他事業(セラミックス製品・金融・物流サービスなど)、の6事業を有する。
AGCは複数事業がバランスよく売上高・利益を支えているが、利益面では化学品事業の貢献が大。2020年以降は化学品事業が急速に利益率を高めており、直近では全社利益の約46%を化学品事業が占める。
✔最終利益と利益率
AGCは景気後退局面にも純利益を確保できる安定性に強みがあったが、2022年は純損失に転落*3。営業利益率は2021年に12%まで伸びたが、同年以降は下落傾向。営業利益率は長期的に7%~9%ほどであり、大手メーカーとしては良好な利益率。
*3:2022年の純損失転落は、同年に減損損失1,284億円を計上したことが理由。本業こそ好調であったが、ディスプレイ・プリント基板材料・ロシア事業などでの損失計上が打撃となった。
✔自己資本比率と純資産
AGCの自己資本比率は概ね50%前後の水準で、安定的に推移している。利益が安定しているうえ、堅実な財務基盤を有していることが強み。純資産は2021年から増加傾向へと転換しており、直近では1.65兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
AGCの平均年収は長年に渡って790万~820万円ほどの水準で極めて安定的。大卒総合職の昇進スピードが速い官僚型組織となっており、30代後半の課長補佐で年収900万~1,000万円ほど。課長職レベルに到達すれば年収1,200万以上となる。
✔従業員数と勤続年数
AGCの単体従業員数は緩やかな増加が続いており、直近では7,400人規模に到達。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は5.7万人ほどである。平均勤続年数は直近で17.6年と大手メーカーでは平均的水準であり、ホワイト企業のイメージの割には長くない。
総合評価
企業格付け:AA
■業界ポジション
日本板硝子と双璧を為す日系トップの大手ガラスメーカーだが、AGCは売上高において2倍以上の大差をつけて引き離しており事実上のトップ企業である。最近ではグローバルの競争環境が厳しいガラス事業よりも、電子事業・化学品事業へのテコ入れを加速させており、素材メーカーとしての自負を強めている。
■業績動向
堅調。売上高・利益いずれも2021年から好調。営業利益は2021年にピークアウトして減少傾向にあるが、それでも2020年以前と比べれば依然高水準。世界的な物価高騰により化学品事業の利益率が急速に高まっている状況。2022年のみ減損損失の計上によって最終赤字に転落したが、あくまで一過性の損失であるため心配には及ばない。
■財務体質
良好。自己資本比率50%前後の高水準をキープしており、負債に依存しすぎない事業運営を志向。有利子負債は直近で1,200億円(2023年)規模に過ぎず、企業規模を考えれば非常に少ないレベルに留めている。2016年頃からバイオ医薬品企業を相次いで買収しているが、財務体質は依然としてまったく健全である。
就職格付け:A
■給与水準
直近の平均年収は825万円と大手化学メーカー・大手自動車メーカー並み。大卒総合職なら30代後半の課長補佐で年収900万~1,000万円ほど。課長職レベルに到達すれば年収1,200万以上となる。2022年には人事制度改革を実施、若手社員の昇給ペースを速めて給与面における競争力を高めようとしている。
■福利厚生
良好。若手社員には独身寮(家賃1.6万円/月)が付与される他、既婚者についても借上げ社宅制度により最大7.5万円/月が補助される。製造拠点が茨城・愛知・大阪・福島・山形などに分散しているため、転勤あり職種の場合には長距離転勤もありうる。年末年始は7連休でゴールデンウイークは10連休である。
■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。事務系職種は、営業・マーケティング・調達・物流・人事・総務などに配属され、技術系職種は研究開発・製品開発・生産技術・品質保証・ITなどを担当する。基本的には入社時の職種において経験を蓄積して専門性を高めるキャリアが主であるが、部門間を跨ぐローテーションも不可能ではない。
■就職人気
素材メーカーでありながらテレビCM・電車広告に熱心なことで著名。その甲斐もあって一般知名度もかなり高く、就職人気ランキングでも上位常連の企業である。そのため、入社倍率はかなり高く、文系採用枠の倍率は素材メーカーでもトップ級である。が、超高給・・・でもなく難易度に見合った待遇かは微妙。