企業概要
三菱ガス化学は、天然ガスを原料とするメタノール・アンモニア分野における基礎化学原料・機能材料を展開する三菱グループの化学メーカー。1972年に三菱江戸川化学と日本瓦斯化学が対等合併して設立。ベネズエラやサウジアラビアなどにメタノール製造プラントを有しており、メタノールでは国内シェア首位。機能化学品分野にも強く、ポリカーボネートやレジンプリント配線板用材料において世界首位級。社名が類似する三菱ケミカルグループとは特段の資本関係はない。
・メタノール分野では国内シェア40%以上、シェア1位の大手化学メーカー
・化学メーカーでありながら利益確保は安定的、財務体質も極めて健全
・大卒総合職なら平均年収900万円以上、福利厚生も手厚い
業績動向
✔売上高と営業利益
三菱ガス化学の売上高は概ね5~6,000億円規模で推移しているが、2021年からは増加傾向。2023年には過去最高となる8,134億円に到達*2。営業利益は安定的に確保できており、近年は3~600億円規模での推移となっている。
*1:2021年からはメタノールの市況上昇と販売数量の増加によって売上高が過去最高を更新。ただし、原燃料価格の上昇によるコスト増加に押されて営業利益は寧ろ減少している。
✔セグメント別の状況
三菱ガス化学は基礎化学品事業(メタノール・アンモニア・芳香化学品・プラスチック類など)、機能化学品事業(エンジニアリングプラスチック・電子材料・脱酸素剤など)、その他事業の3事業を有する。
当社はメタノール・アンモニアの供給を主力事業としているが、これら製品を扱う基礎化学品事業の売上高は約49%ほど。最近ではエンジニアリングプラスチックや電子材料などの機能化学品事業の成長が著しく、基礎化学品事業の構成比率は低下傾向。利益面に至っては機能化学品事業が全社利益の約80%を占めるほど。
✔最終利益と利益率
三菱ガス化学は10年以上に渡って安定的に純利益を確保できており、2012年を最後に赤字転落はない。2019年を除けば*2、概ね3~400億円規模での推移となっている。景気動向に業績を左右されやすい化学メーカーでありながら純利益を堅実に確保している。
*2:2019年はメタノールやポリカーボネートの市況下落、サウジアラビア合弁事業での特別損失・海外メタノール生産会社の持分法損益悪化などが重なって純利益212億円まで縮小した。
✔自己資本比率と純資産
三菱ガス化学の自己資本比率は直近で61.3%と高水準であり、安定的な利益体質もあわせて考えれば堅実な財務体質。純資産は堅調な増加を継続しており、直近では6,848億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
三菱ガス化学の平均年収は直近で871万円と大手化学メーカーに引けを取らない水準。大卒総合職であれば30歳で年収650万~800万円ほど、課長職レベルで1,050万~1,250万円ほど。平均年齢は40歳を上回っているが、平均年齢は直近8年間でほぼ横ばい。
✔従業員数と勤続年数
三菱ガス化学の単体従業員数は長期的に2,400人前後で安定的に推移。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は約1万人ほどである。平均勤続年数は17.8年前後と大手メーカーの標準的な水準にある。
総合評価
企業格付け:BBB
規模感では業界首位級の化学メーカーには遠く及ばないものの、エタノール分野では唯一無二の存在感を誇る優良化学メーカー。エタノールは生活用品(医薬品・化粧品・洗剤など)から飲食料品(みそ・醤油・加工食品・食品防腐剤など)に利用される、国民生活及び産業活動に必要不可欠な製品であり、三菱ガス化学の業績・財務いずれも堅実。技術開発にも長けており、機能化学品分野ではポリカーボネートやレジンプリント配線板用材料において世界首位級の製品を有し、今では利益の大半を機能化学品分野で獲得する巧者でもある。
就職格付け:A
規模感と知名度では業界首位級の化学メーカーに及ばないが、待遇と安定性は引けを取らない。大卒総合職なら平均年収900万円を上回る水準にあり、福利厚生も充実。社宅や寮がよく整備されている他、住宅手当も手厚いため、住居費が抑制できることから従業員の実生活は給与水準を上回る。年功序列色と終身雇用に重きを置く典型的な日本企業である為、安定して長く勤続する人生を希望する人間にとっては極めて魅力的な企業であろう。知名度が低い点は惜しいが、社名に三菱を冠することからまったくの無名ではない。世間体より実利を重視するなら問題なく無視できる話であろう。