企業概要
フジクラは、電力ケーブル・光ファイバ・情報通信機器・自動車向けワイヤハーネスを主力製品とする電機メーカー。1885年に藤倉善八が綿巻線の製造を目指して創業。1890年にはゴム巻線の国産化に成功して、日系電線メーカーの雄として躍進。1970年代から光ファイバの研究開発を進め、現在では情報通信機器・光ファイバも主力事業の一角。自動車向け電装品にも強く、独フォルクスワーゲンと親密。同業の住友電気工業・古河電気工業と並んで電線御三家と称され、企業規模は業界3位。光ファイバ融着機で世界シェア首位、フレキシブルプリント基盤では世界シェア3位を掌握。
・電線メーカー御三家の一角、光ファイバなど情報通信分野でも世界的
・売上高・利益いずれも急改善、財務体質も健全化を果たした
・平均年収845万円だが業績次第で大きく変動、住宅補助が手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用実績は年間20名~30名と企業規模の割には門戸が狭い。一般知名度はそれほど高くないうえ事業内容もマイナー寄りであるため穴場感はある。
採用大学:【国公立】北海道大学・九州大学・筑波大学・千葉大学・群馬大学・電気通信大学・東京農工大学・名古屋工業大学・豊橋技術科学大学など、【私立】同志社大学・明治大学・立教大学・立命館大学・東京理科大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
フジクラの売上高は2020年まで6,500億〜7,400億円ほどで推移してきたが、2022年は売上高8,065億円に急増。営業利益は2019年に急落*1したが、2022年は702億円に急増して過去最高を更新*2。
*1:2019年の業績悪化は、①光通信分野で中国メーカーとの価格競争激化による市況悪化、②COVID-19感染拡大による混乱で自動車向けワイヤーハーネスの売上急落、に起因。
*2:2022年の業績好調は、①世界的なデータセンター投資ブームによる情報通信分野の販売好調・高利益商品の拡販、②光ファイバ・電力ケーブルの需要急増による利益率改善、③為替レートの円安推移による為替効果、に起因。
✔セグメント別の状況
フジクラは、情報通信事業(光ファイバ・光ケーブル・ネットワーク機器など)、エレクトロニクス事業(プリント配線板・電子ワイヤ・ハードディスク部品・各種コネクタなど)、自動車事業(自動車向けワイヤハーネス・電装品)、エネルギー事業(電力ケーブル・通信ケーブルなど)、不動産事業(不動産賃貸など)、その他事業(新規事業など)の6事業を有する。
当社は電力ケーブルや自動車部品で発展した企業であるが、現在では情報通信事業とエレクトロニクス事業が大きな利益貢献を果たしている。最近では生成AIの普及を追い風にデータセンター向け製品群が高い利益率で業績回復を牽引。自動車事業は売上高の約20%を占めるが、低利益率に苦しむ状況。
✔最終利益と利益率
フジクラの純利益は年度によって好不調がハッキリと分かれる。2019年・2020年は純損失に転落した反面、2021年・2022年には利益急増を謳歌*3。営業利益率は長期的に0%~8%で推移しており、年度によって好不調が分かれている。
*3:当社の利益率が不安定である理由は、①主力事業がいずれも景気動向に需要が大きく左右される点、②光ファイバ・電子部品は市況次第で販売価格が大きく変動する点、に起因。2019年には中国で光ファイバの急激な価格下落に直面して利益率が低迷した経緯がある。
✔自己資本比率と純資産
フジクラの自己資本比率は長期的に30%~40%ほどで推移しているが、2023年には47.1%とかなりの高水準に到達。純資産は2019年に最終赤字を計上したことで急減したが、同年以降は急回復。2023年には純資産3,665億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
フジクラの平均年収は2022年に700万~760万円ほどで推移していたが、2023年は業績好調をうけて845万円まで増加。総合職であれば30歳で580万円~650万円ほど、課長職レベルであれば900万~1,050万円に達する。
✔従業員数と勤続年数
フジクラの単体従業員数は長年に渡って2,400人~2,600人規模で推移してきたが、2022年には2,108人に減少*3。平均勤続年数は16年~17年前後で推移しており、従業員の定着のよさは大手メーカーなり。
*4:2022年の従業員数の減少は、フレキシブルプリント基盤の製造・販売機能をフジクラプリントサーキットとして会社化したことが主要因。
総合評価
企業格付け:B
■業績動向
景気動向に左右されやすい。主力製品の光ファイバ・フレキシブルプリント基盤・自動車向けワイヤーハーネスはいずれも景気動向に販売・価格が大きく左右される。2020年には著しい市況悪化に苦しんだ反面、わずか2年後には過去最高レベルの好業績を叩き出すなど良くも悪くも安定感はない。直近では生成AIブームによるデータセンター投資の活況を受けて、業績好調を謳歌している。
■財務体質
良好。2019年の業績悪化では巨額損失によって自己資本比率26%まで急落したが、2020年以降の業績回復によって財務体質は良化。直近では自己資本比率47.1%にまで急回復を果たしており、大いに健全な水準に。次の不況が到来しても当面は凌げる財務基盤を得たと評価できる。
■ビジネス動向
新たな中期経営計画では、重点領域として「情報インフラ・データセンター・情報端末(含コネクテッドカー)」を選定。利益率が低迷する自動車向けワイヤーハーネス事業の規模縮小を模索しつつ、需要拡大が続くデータセンター等の情報通信分野への集中を決意。光ファイバの高密度化による技術革新にも意欲的。
就職格付け:B
■給与水準
メーカー上位級。長年に渡って当社の給与水準は「電線御三家では住友電気工業には及ばず、古河電気工業に勝るとも劣らない」レベルであったが、2023年は平均年収845万円まで増加して電線御三家トップに躍進。総合職なら30歳650万円・35歳700万円が目安だが、住宅補助が手厚いため実生活水準は見た目の数字以上。課長職になれば年収900万円を超え、年収1,000万円も視野に入る。。
■福利厚生
良好。家賃補助制度・借上げ社宅制度いずれも整っており、住宅補助が手厚い。若手社員なら1万円/月未満で独身寮に入れるうえ、結婚しても35歳まで借上げ社宅に住める。節税効果もあわせた実質的な所得は見た目の平均年収+100万円は見込める。
■キャリア
事務系・技術系の2ルートが存在。事務系総合職は営業・人事・経理・法務などのコーポレート部門に配属され、技術系総合職は技術営業・開発・生産技術・品質保証に配属される。年功序列色が強く、リーダークラスへの昇進は30代中盤から。
■一般知名度・世間体
事業規模の割に一般知名度は低い。取扱製品が電線・光ファイバゆえに一般消費者には馴染みはない。どちらかと言えばゴルフクラブを製造するグループ会社の藤倉コンポジットの方が有名かもしれない。が、平均年収・福利厚生の待遇を思えば、下手な大手企業にも勝るポテンシャルがあるので惜しい。隠れ優良メーカーを探す場合には有望株かも。