企業概要
シマノは、自転車部品と釣具の製造販売を主力事業とするスポーツ用品メーカー。1921年に島野庄三郎が自転車部品工場として創業、1970年に釣具の製造に進出したことで現在の自転車部品・釣具の二大事業部が揃う。自転車部品のコンポーネント化に先鞭を打った先駆者であり、自社部品をセットで使用することを前提とした設計で、調整・修理の利便性を飛躍的に向上。現在では自転車部品における世界標準の地位を確立。スポーツ自転車部品では世界シェアの85%を占め、圧倒的な首位の座を誇る。
・自転車部品で世界シェア断トツ首位のスポーツ用品メーカー、大阪企業
・売上高・利益はやや失速するも高利益率、実質無借金経営で財務盤石
・平均年収846万円でメーカー上位級で高待遇、社宅は築浅で豪華
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:69(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
採用人数は年間25~40人と門戸は非常に狭い。ニッチ業界とはいえ高待遇の有名企業、昨今のサイクリングブームもあって倍率は相当に高い。大阪本拠の企業であるため関西出身者が多い。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・東京工業大学・名古屋大学・神戸大学・広島大学・東京農工大学・名古屋工業大学・奈良先端科学技術大学院大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・同志社大学・日本大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
シマノの売上高は2020年から急増して2022年に売上高6,289億円に到達*1したが、同年以降は下落傾向。営業利益は2022年に営業利益1,691億円まで増加したが、2023年には836億円まで後退*2。
*1:当社はCOVID-19の感染拡大で業績を大きく伸ばした企業。感染リスクにより行動制限が課される中で、自転車が感染リスクが低い娯楽として需要急増したことで業績躍進。
*2:2023年にはCOVID-19以降の自転車ブームが終焉。業績好調時に積み上がった在庫調整が長期化しているため利益が減少した。
✔セグメント別の状況
シマノは自転車部品事業(変速機・ホイール・クランクセット・チェーン・ブレーキ・制動用部品・ペダルなど)、釣具事業(リール・ロッド・ルアー・フィッシングギアなど)、その他事業(ロウイング関連用品など)の3事業を有する。
当社はBtoCで事業展開している釣具事業のイメージが強いが、実態はBtoBの自転車部品事業が売上高・利益の約80%を占めている。海外売上高比率が約90%にも及んでいるが、これは海外の大手自転車メーカーへ部品を納入している関係による。
✔最終利益と利益率
シマノの純利益は2021年・2022年にはCOVID-19による自転車ブームで純利益1,000億円を超えたが、同年以降は後退。営業利益率は18%~27%の水準で安定推移、大いに優良な利益率を誇る。
✔自己資本比率と純資産
シマノの自己資本比率は概ね90%前後の超高水準で推移しており、大手メーカーとしては卓越して高い水準*3。純資産は右肩上がりで増加しており、直近では8,023億円に到達。
*3:自己資本比率が高いのみならず、有利子負債額を現預金額が上回る実質無借金経営である。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
シマノの平均年収は850万円前後で推移しており、大手メーカーにも勝るとも劣らない給与水準。大卒総合職ならば30歳で年収650万~750万円、課長職になれば1,100万~1,300万円ほど。平均年齢は41.3歳と大手メーカーとしては標準的な水準。
✔従業員数と勤続年数
シマノの単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、直近では1,651人に到達。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は9,700人規模となっている。平均勤続年数は14.2年と大手メーカーとしてはやや短めだが、これは積極採用を進めている影響であり問題はない。
総合評価
企業格付け:BBB
自転車部品において世界首位に君臨するニッチトップ企業。卓越したコンポーネント戦略によって競合他社を圧倒するポジションを確立、事実上のデファクトスタンダードの地位を確立しているために「自転車界のインテル」とも称される。業績はCOVID-19による自転車ブームで売上高・利益が急増したが、2023年には遂にブームの終焉によって減収・減益に直面。しかしそれでも、COVID-19以前の水準にまで戻っただけであり、重篤な経営不振に陥っているわけではない。注目すべきは営業利益率20%にも迫る高利益率であるが、これは高付加価値なスポーツ自転車部品において世界シェア70%以上を掌握している競争力が理由。財務体質においては極端なまでに堅実志向が強く、自己資本比率90%に近い実質無借金経営。高利益率かつ財務盤石というケチのつけようがない優良企業である。
就職格付け:BBB
関西が誇る優良メーカーの一角であり、自転車業界の巨人。一般認知度は(自転車・釣りファンを除けば)それほど高くはなく、精々「釣具メーカーの1社」程度であろう。しかし、その実態はグローバルで圧倒的な競争力を確立した自転車部品メーカーであり、欧州・北米において高いブランド力を築き上げている。給与水準については関西の名門であるパナソニック・ダイキン・クボタに勝るとも劣らず、大卒総合職ならば30歳で年収650万~750万円、課長職になれば1,100万~1,300万円ほどに達する。主力拠点は大阪府・堺市に集結しているが、生産拠点は熊本・山口にも分散している点にはやや注意か。社員の住宅支援も手厚く、独身寮「シマノ菱木レジデンス」・新婚者社宅「シマノ泉ヶ丘レジデンス」・転勤社宅「シマノ新金岡レジデンス」はいずれも2010年代の建築で新しいうえに贅沢な構造で知られる。