企業概要
ゆうちょ銀行は、日本郵政グループに属する大手普通銀行。2007年の郵政民営化に伴い設立された。同じく郵政民営化にあたって設立された日本郵政の傘下にあり、日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険で日本郵政グループ3社を形成。貯金残高は190兆円規模に及び、メガバンクに匹敵する規模感。全都道府県に支店を有するのは、みずほ銀行と本行のみである。旧国有企業ゆえに、民業圧迫とならないよう上乗せ規制が課せられている。
・日本郵政Gの金融機関、預金額ではメガバンクに匹敵する巨大銀行
・業績は概ね横ばいで衰退も成長もない現状維持型
・平均年収は670万程度だが総合職は昇進・昇給はより恵まれる、福利厚生は良い
就職偏差値
総合職:64(中堅上位)
地域基幹職:58(中堅)
■総合職
日本企業における中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
■地域基幹職
日本企業における中堅クラスの1社。数ある日本企業の中でも一定の成功を収めた企業群であり、各業界における有名企業である。まずは入社して堅実にキャリアを重ねるも良し、更なる大手企業への転職も狙うことも良いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
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業績動向
✔経常収益と経常利益
ゆうちょ銀行の経常利益は2兆円前後の推移が過去8年間に渡って継続していたが、2023年には2.65兆円まで急伸。経常利益は3,700億~4,900億円で長期的に安定しており、景気後退局面にも底堅い。
✔セグメント別の状況
ゆうちょ銀行は銀行業(資金運用、資金調達、手数料ビジネスなど)のみの単一事業会社である。
ゆうちょ銀行は新規事業への進出が法律で制限されており、日本郵政グループによるゆうちょ銀行の株式保有割合が50%以上の場合は金融庁長官・総務大臣の認可が必要。株式保有割合が下がればこの制限は緩和されるが、当面は新規業務への進出が難しい。
✔最終利益と利益率
ゆうちょ銀行の純利益は2,600億~3,500円ほどで長期的に安定している。自己資本利益率は概ね2~3%レベルで推移しており、直近では3.68%とやや好調。
✔自己資本比率と純資産
ゆうちょ銀行の自己資本比率は直近で4.1%と低めだが、銀行業であれば健全な水準。銀行業は顧客から預金・有価証券を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産はやや減少傾向がみられるものの、直近でも10兆円前後の水準にある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
ゆうちょ銀行の平均年収は直近で668万円と金融業としては凡庸な水準*1。大卒総合職であれば30歳で550万円~650万円ほど、課長職レベルで年収700万~850万円になる。
*1:平均年収が低めである理由は、①窓口業務などを担う一般職が数多く在籍していること、②民営化以前の賃金制度が色濃く残っていること、などがある。
✔従業員数と勤続年数
ゆうちょ銀行の従業員数は2017年をピークに緩やかな減少傾向にあるが、概ね1万人強のレベルで推移している。他方、平均勤続年数は20年を上回っており金融業としては異例の長さ。かつて公務員であった時代の名残か、安定した勤続ができる環境と推定。
総合評価
企業格付け:B
■業界ポジション
銀行としては国内首位級の規模感を誇り、世界的に見ても200兆円規模の運用を行っている金融機関は極めて希少。かつてら運用資金の大半を国債運用に注ぎ込む保守的体質であったが、民営化後は積極的に名門金融機関の有識者を招き入れ、積極攻勢に転換。今では株式・債券による高度な運用に取り組んでいる。
■業績動向
安定的。経常収益・利益いずれも過去8年間に渡って一定レンジで安定しており、良くも悪くも業績の浮き沈みは少ない。2021年から米国債・日本国債など債券利回りが上昇しており、伝統的に債券運用を得意とする当行にとっては事業環境も追い風が吹きつつある。
■財務体質
まずまず良好。自己資本比率は4.1%と一見すると低いが、銀行業であれば問題ない水準。総資産230兆円以上という圧巻の資産規模に加えて、純資産も9.57兆円レベルと大きい。業績の安定性も加味すれば、まず問題ない水準である。
■日本郵政との関係性
課題は日本郵政グループとの関係性であり、特に日本郵政による株式保有割合が50%以上のうちは新規事業にも進出できない。かといって当社が稼ぎ頭となる事業であるが故に、日本郵政グループにとっては虎の子である。今の体制下において将来的にも共存するのか、自主独立の道を歩むのかは依然として不透明な状況。
就職格付け:総合職=BB/地域基幹職=CC
■給与水準
直近の平均年収は684万円と、国内首位の規模感を誇る金融機関であるがメガバンクには遠く及ばない給与水準。かつての公務員時代の年功序列型の給与制度が踏襲されており、若手社員の昇給ペースは緩慢。大卒総合職で30歳・500万〜650万円が目安となり、課長職レベルで年収850万〜1,000万円ほど。
■福利厚生
良い。これも公務員時代の制度が色濃く残存しており、格安で入居できる独身寮・社宅が充実。自己負担は1万円前後で独身から結婚後まで生活できるため、給与水準の低さを補う制度設計となっている。金融機関にも関わらず平均勤続年数が20年以上というのは驚異的である。ただし、金融機関ゆえに大卒総合職は定期的な全国転勤への覚悟は必須。。
■キャリア
総合職・地域基幹職・一般職の3職種制。総合職は日本郵政グループの幹部候補採用であり、かつての郵政省キャリア官僚に相当する地位。従業員数22万人の巨大組織を背負って立つリーダーとしての役割を期待され、出世スピードは極めて速い。地域基幹職は各地域の実務指揮官としての役割を期待される職種であり、転勤エリアが限られる。一般職は実務担当者としての役割を期待され、転居を伴う転勤はない。当然ながら、地域基幹職・一般職の昇給・昇進スピードは総合職に遠く及ばない。