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【勝ち組?】かんぽ生命保険の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

かんぽ生命保険は、日本郵政グループに属する大手生命保険会社。1916年に逓信省が創設した簡易生命保険を源流とし、2007年に郵政民営化法に基づき設立された。同じく郵政民営化にあたって設立された日本郵政の傘下にあり、日本郵便・ゆうちょ銀行・かんぽ生命保険で日本郵政グループ3社を形成する。国内屈指の大手生命保険会社であり、総資産は日本生命に次ぐ規模。かつて日本全国に保険加入者向けの宿泊施設「かんぽの宿」を展開していた。

POINT

・総資産で国内2位の規模を誇る日本郵政グループの生命保険会社
・業績は明らかな衰退傾向、不適切販売問題で衰退が加速
・平均年収は650万程度、福利厚生は公務員時代の名残で良好

✔就職偏差値:63(中堅上位)

サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:中堅級~最難関級

一般職・エリア基幹職であれば年間300人以上が採用され、門戸は広い。ただし総合職は年間70人前後と門戸は狭まり、とりわけアクチュアリー職は最難関級の難易度。
採用大学:【国公立】東京都立大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・法政大学・関西大学・立教大学日本大学・専修大学・近畿大学など(出典:大学通信ONLINE

業績動向

✔経常収益と経常利益

かんぽ生命保険の経常利益は右肩下がりの減少傾向*1。2013年の経常収益11.2兆円から約半減にまで規模が縮小している。経常利益にも減少傾向が波及しており、2022年以降は1,100億~1,600億円レベルに後退*2。
*1:かんぽ生命保険の加入者層の高齢化で顧客が減少していたことに加え、2019年に判明した不適切販売問題によって18万件以上の不正契約が判明。高齢者からの信頼を逆手に取った営業手法の発覚により客離れが加速(参考リンク)。
*2:2022年から経常利益が急減した理由は、①保有契約数の減少、②COVID-19感染拡大による保険金支払いの増加、③有価証券売却損による損失、など。

✔セグメント別の状況

かんぽ生命保険は生命保険事業(個人保険・財形保険・個人年金保険・再保険、資産運用業務など)のみの単一事業会社である。
かんぽ生命保険は新規事業への進出が法律で制限されており、日本郵政によるかんぽ生命保険の株式保有割合が50%以上の場合は金融庁長官・総務大臣の認可が必要。株式保有割合が下がればこの制限は緩和されるが、当面は新規業務への進出が難しい。

✔最終利益と利益率

かんぽ生命保険の純利益は、経常収益の衰退とは対照的に増加傾向にあるが、これは業界特有の一過的事情*3で長期的には減少傾向に転じると推定。自己資本利益率は概ね4~6%レベルで推移していたが、直近では2.56%まで低下。
*3:生命保険の販売委託先へ支払う手数料は初年度が最も高額で2年目以降は一気に下がる。かんぽ生命保険は不適切販売問題で新規契約が取れなくなり、手数料コストが下がって利益増加した格好。長期的には新規契約が減ったことが将来の業績低迷に繋がるリスクが大きいため利益増加は一過性の可能性が高い。

✔自己資本比率と純資産

かんぽ生命保険の自己資本比率は5.6%と低めだが、保険業であれば健全な水準。保険業は顧客から保険料を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。純資産は緩やかな増加傾向が続いており、直近では3.4兆円規模。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

かんぽ生命保険の平均年収は直近で652万円と金融業としては凡庸な水準だが、これは①ボーナスが郵政グループ一律であること、②多くの一般職が在籍していること、③民営化以前の賃金制度が色濃く残っていることが要因。平均年齢は直近で43.2歳まで増加。

✔従業員数と勤続年数

かんぽ生命保険の単体従業員数は6,000人レベルで安定していたが、2023年に8,000人レベルへと増加。平均勤続年数は18.9年と保険会社としては長めではあるが、同グループのゆうちょ銀行(20年以上)と比べるとやや短め。

総合評価

企業格付け:C

■業界ポジション
かつて国内首位の資産規模を誇る保険会社であったが、高齢化の進展により過去の顧客層を失い、経常収益は右肩下がり。業績低迷を挽回するべく、高齢者を相手に不適切販売を行った結果、社会問題となり肝心の高齢者層の客離れが更に加速してしまった。1996年時点では8,432万件あった契約者数は2020年末には2,483万件まで激減。ネット保険の普及や若者の保険離れも痛い。

■業績動向
衰退傾向。かつてメイン顧客層であった高齢者は客離れが続いており、若者世代は他保険会社に流出。経常収益は右肩下がりであり、過去10年あまりで約半減。経常利益は2021年までは2,500億〜3,500億円ほどで堅調であったが、2022年からは1,000億円強にまで急落。

■財務体質
回復傾向。かつては業績悪化で自己資本比率10%台まで低下する危機的状況に追いやられたが、10年近くをかけて30%台まで持ち直した。有利子負債も圧縮を進めており、1,300億円以上(2008年)から572億円(2023年)まで縮小。負債依存度も軽減されつつある。

■不適切販売問題
2019年に高齢者などをメインターゲットとした不適切販売問題が発覚。判明した内容には「保険料を二重で徴収」「顧客にとって不利となる保険への乗り換え」「契約不備による保険料不払い」など。郵便局へ絶大な信頼を寄せていた高齢者に、顧客が不利となる契約を強引に締結していた悪質性・非道徳性は社会問題となり、企業イメージは最悪の状況となった(参考リンク)。

就職格付け:総合職=CC/地域基幹職=DDD

■給与水準
直近の平均年収は652万円と、大手保険会社と比較するとかなり控えめ。大卒総合職の場合、30歳で450万〜600万円ほど、課長職レベルで750万〜890万円ほど。かつては営業成績次第では年収1,000万円プレイヤーにもなれたが、不適切販売問題以降は難しくなっている。

■福利厚生
良い。公務員時代の制度が色濃く残存しており、格安で入居できる独身寮・社宅が充実。自己負担は1万円前後で独身から結婚後まで生活できるため、給与水準の低さを補う制度設計。家賃補助制度も月額2.7万円と補助額は微妙だが整備されている。ただし、金融機関ゆえに大卒総合職は定期的な全国転勤への覚悟は必須。

■キャリア
総合職・地域基幹職・一般職の3職種制。総合職は日本郵政グループの幹部候補採用であり、かつての郵政省キャリア官僚に相当する地位。従業員数22万人の巨大組織を背負って立つリーダーとしての役割を期待され、出世スピードは極めて速い。地域基幹職は各地域の実務指揮官としての役割を期待される職種であり、転勤エリアが限られる。一般職は実務担当者としての役割を期待され、転居を伴う転勤はない。当然ながら、地域基幹職・一般職の昇給・昇進スピードは総合職に遠く及ばない。

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出典:株式会社かんぽ生命保険(有価証券報告書)