企業概要
HOYAは、眼鏡レンズ・コンタクトレンズ・半導体製造装置材料などを主力とする光学機器メーカー。1941年に山中正一が光学ガラスメーカーとして創業、戦時中には軍用双眼鏡のレンズを供給した。終戦後には食器・シャンデリアの製造を主力としたが、1962年には眼鏡向けレンズの生産に参入。その後はガラス・レンズ分野での事業多角化を進め、半導体製造装置部品・コンタクトレンズなど事業を拡大。現在では眼鏡レンズで世界シェア2位、コンタクトレンズ・医療用内視鏡でも高シェアを確立している。
・眼鏡レンズで世界シェア2位、事業多角化によって情報通信分野も稼ぎ頭に
・売上高・利益は成長基調で高利益率、実質無借金経営で財務盤石
・平均年収821万円と高めだが実力主義、福利厚生はかなり弱め
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:66(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間5人~10人に過ぎず、門戸は極めて狭い。ニッチ業界とはいえ一般知名度もかなり高いため、選考倍率は高止まり傾向が続いている。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・九州大学・横浜国立大学・岡山大学・信州大学・埼玉大学・山口大学・山梨大学・電気通信大学・東京農工大学・豊橋技術科学大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・中央大学・成蹊大学・東京理科大学・東京電機大学など(出典:リクナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
HOYAの売上高は2020年を除けば長期的な増加傾向が続いており、2023年には過去最高となる7,626億円に到達している*1。営業利益については非開示となっている*2。
*1:当社の売上高の成長が続いている理由は、①情報通信事業におけるハードディスク部品や半導体製造装置部品の販売急増、②為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:当社は国際会計基準(IFRS)を採用しているが、同基準では営業利益の開示が義務付けられていない。当社は営業利益を開示しない方針のため、非公開となっている。
✔セグメント別の状況
HOYAは、ライフケア事業(メガネレンズ・コンタクトレンズ、内視鏡・眼内レンズ・人工骨・メディカルアクセサリー・自動内視鏡洗浄装置など)、情報通信事業(半導体用マスクブランクス・フォトマスク、FPD用フォトマスク・ハードディスク用ガラスサブストレート、光学レンズ・レーザー機器など)、その他事業(音声合成ソフトウェアなど)、の3事業を有する。
当社は眼鏡レンズメーカーとして著名であり、ライフケア事業が売上高の約69%を占めている。1970年代から事業多角化を進めたことで参入した情報通信事業は売上高に占める割合は30%に満たないが、全社利益の約47%を占めるほどに成長している。
✔最終利益と利益率
HOYAの純利益は長期的な増加傾向が続いており、2023年には過去最高となる1,825億円に到達している。純利益率は18%~24%の水準で推移しており、大いに優良な利益率を誇る*3。
*3:当社は営業利益が非公開であるため、営業利益率に代わって純利益率を掲載している。
✔自己資本比率と純資産
HOYAの自己資本比率は80%前後の超高水準で長期的に推移しており、大手メーカーとしては傑出して高い水準*4。安定した高利益体質を加味すれば、財務体質はまさしく鉄壁に等しい。純資産は右肩上がりで増加しており、2024年には9,677億円に到達している。
*4:自己資本比率が高いのみならず、有利子負債額を現預金額が上回る実質無借金経営である。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
HOYAの平均年収は年度による上下変動が大きいが、710万~840万円ほどで長期的に推移している。大卒総合職の場合、30歳で年収580万~650万円、課長職レベルで950万~1,150万円ほどが目安。実力主義によって昇給・減給が決定され、年功序列による昇給には乏しい。平均年齢は47.8歳(2024年)と、やや高齢化が進んでいる。
✔従業員数と勤続年数
HOYAの単体従業員数は微増傾向が続いており、直近では3,042人に到達している。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は3.57万人規模となっている。平均勤続年数は19.7年(2024年)と大手企業の標準的な水準を上回る。
総合評価
企業格付け:BB
眼鏡レンズ分野において伊・エシロールルックスオティカ社に続く世界シェア2位を掌握する業界大手であり、内視鏡・コンタクトレンズ・半導体製造装置部品なども手掛ける。また、国内370店舗を展開するコンタクトレンズ小売店・アイシティの運営元でもある。業績においては売上高・利益の増加が続いており、実はかなりの成長企業でもある。とりわけ当社の業績拡大を支えているのは、情報通信事業におけるハードディスク部品や半導体製造装置部品の販売急増。世界的にデータセンター投資が過熱する状況において、当社はハードディスク用ガラスサブストレートで世界シェア100%を掌握することで需要拡大の恩恵をフル享受できている。財務体質においても自己資本比率80.4%(2024年)と圧巻の水準にあり、高利益率でありながら財務規律は過剰なほどに堅実志向である。
就職格付け:B
戦前から光学ガラス分野において技術力を発揮してきた企業であり、社名の『HOYA』は創業地である東京都・保谷町(現・西東京市)に由来する。給与水準においては年度により上下変動が激しいが、長期的には平均年収710万~840万円ほどで推移している。大卒総合職の場合、30歳で年収580万~650万円、課長職レベルで950万~1,150万円ほどが目安となるだろう。が、日系メーカーには珍しく、実力主義の気風が強い。そのため、若くして早期昇給することもあれば中高年でも昇給できないことも珍しくない。福利厚生においては特筆すべき制度に乏しく、給与で還元する方針である。家賃補助制度・家族手当などはなく、退職金は確定拠出型年金のみである。なお、当社は意外にも中途採用比率が高い会社とも知られ、2024年の中途採用比率は89%にも達する(参考リンク)。