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日鉄物産の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

日鉄物産は、鉄鋼製品・産業機械・輸入食肉・線日製品などを主力とする日本製鉄グループの鉄鋼系専門商社。1977年に新日本製鉄が設立した日鐵商事を源流とし、2013年に住金物産と合併して誕生。日本製鉄グループに属しながらも上場企業として自主独立の道を歩んでいたが、2023年に日本製鉄による株式公開買付によって完全子会社化。旧住金物産がイトマン事件で経営破綻した総合商社・イトマンを1993年に吸収合併した歴史的経緯から、鉄鋼分野以外においてもネットワークを有している。

POINT

1.日本製鉄Gの鉄鋼系専門商社、三井物産も一部出資
2.売上高・利益いずれも過去最高圏で好調、財務体質もそこそこ優良
3.30歳で年収850万~900万円ほど、住宅手当が極めて手厚い

業績動向

✔売上高と営業利益

日鉄物産の売上高は2020年を除けば*1、長期的に1.8兆~2.5兆円ほどの水準で推移している。営業利益は2020年まで220億~320億円程で推移していたが、2020年からは急激に増益*2。直近2年間は営業利益400億円以上で推移。
*1:2020年から企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を適用。収益認識の基準が変更されたうえ、COVID-19感染拡大による景気低迷で鉄鋼需要が急減したことで売上高が激減。

✔セグメント別の状況

日鉄物産は、鉄鋼事業(鋼板・鋼管・条鋼・特殊鋼など)、産機・インフラ事業(産業機械・非鉄金属・鉄道機材、工業団地開発、発電など)、食糧事業(輸入食肉・水産物など)、繊維事業(繊維線品・繊維原料など)、その他事業(不動産賃貸など)、の5事業を有する。
日鉄物産は鉄鋼系専門商社としてバリューチェーンを構築。鉄鋼メーカーと緊密に連携することで、顧客企業が必要とする鉄鋼品をタイムリーに供給する体制を整備。なお、旧イトマンから引き継いだ食糧・繊維事業は売上高の10%程に過ぎないため、存在感は薄い。

✔最終利益と利益率

日鉄物産の純利益はは2020年まで160億~230億円程で推移していたが、2021年からは急激に増益*2。営業利益率は2019年までは2%前後に留まっていたが、同年以降は営業利益率が上昇基調にある。
*2:2021年はCOVID-19影響が一服、世界的な経済活動再開によって鉄鋼需要が回復。世界的な資源価格高騰により鉄鋼市況が急上昇したことで、鉄鋼業界の利鞘が大きく改善した。

✔自己資本比率と純資産

日鉄物産の自己資本比率は長期的に24%~28%前後の水準で推移しており、やや低めの水準に留まる。ビジネスモデルの関係上、負債が広がりやすい事情を鑑みれば問題ない水準*3。純資産は右肩上がりで増加しており、直近では3,428億円に到達。
*3:商社は仕入れによる現金支出から販売による現金回収までに時間を要する(売掛金)。日鉄物産の場合は売掛金が5,000億円以上あるため自己資本比率が下がりやすい。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日鉄物産の平均年収は直近で991万円と高水準だが、これは業績好調による賞与増加の側面が大きい。2021年までは平均年収810万~830万円に留まり、専門商社としては低めの水準であった。大卒総合職なら30歳で年収850万~900万円ほど、課長職レベルで年収1,100万~1,300万円レベル。

✔従業員数と勤続年数

日鉄物産の単体従業員数は直近で1,294人だが、2021年に従業員数が会社分割により急減*4。2020年に子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は6,500人ほど。平均勤続年数は直近で15.8年と大企業の標準的水準。
*4:2021年に繊維事業の大半を分割して三井物産アイファッション(現・MNインターファッション)と統合したことで従業員数が急減(参考リンク)。

総合評価

企業格付け:BBB

日本製鉄グループの鉄鋼系専門商社。2022年までは日本製鉄の株式保有割合は34.5%に過ぎず、持分法適用会社であったが故に日本製鉄の存在感は限定的であった。が、2023年に株式公開買付によって日本製鉄の連結子会社へと転換されたことで、今後は日本製鉄グループの一員としての役割が求められる局面。ちなみに、三井物産が20%の株式を保有するため同社との関係性も深い。昨今の鉄鋼業界の好況もあって当社も業績堅調であり、売上高・利益いずれも過去最高圏で推移。最近では電気自動車向け高付加価値製品に注力しており、電磁鋼板やリチウムイオン電池用アルミ箔などで高シェアを獲得。高採算が見込める製品にフォーカスすることで利益率向上に取り組んでいる。財務体質は自己資本比率27.5%と低めだが、売掛金が膨らみやすいビジネスモデルである以上は問題ない水準であろう。

就職格付け:BB

総合商社・イトマンや住友グループ専門商社・住金物産の流れを汲む、大手鉄鋼系専門商社。輸入食肉やファッションにも事業展開してはいるが、売上高の80%以上を鉄鋼事業が占めるために鉄鋼系専門商社としての色が濃い。繊維事業は2021年に分割されてMNインターファッションへと承継されており、同事業の従業員も同社へと移籍となっている。給与水準は長年に渡って平均年収800万~830万円での推移となっており、イメージの割にはそこまで高くはない。2022年には賞与に業績好調が反映されたことで平均年収991万円へと跳ね上がったが、ベース賃金としてはそれほど卓越してはいない。福利厚生はかなり恵まれており、特に住宅手当は手厚い。45歳まで独身者5万円/月・既婚者10万円/月が支給されるため都内在住でもかなり助かる。最も理解しておくべきなのは、現社長・取締役などの大半は日本製鉄・三井物産の出身者で占められている点だろう。プロパー入社での出世には天井があるため、将来への上昇志向が強い場合には親会社への入社を狙うほうが可能性は高くなる。また、従業員数が多いわりに海外拠点は限られるため、海外駐在の志望度が高い場合にはよく注意しておきたい。

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