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稲畑産業の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

稲畑産業は、合成樹脂・化学品・電子材料・日用品などを主力とする化学系専門商社。1890年に稲畑勝太郎が染料商社として創業、戦前から世界各地へ支店を設置して染料・香料などの貿易事業を営んだ。戦後には事業多角化を進め、化学品以外の事業を積極開拓。現在では売上高の約半分を合成樹脂が占めるほか、輸入冷凍ブルーベリーでは国内シェア首位。1944年に国策で住友化学と一時的に合併した歴史があることから、同社とは70年以上に渡る取引関係・資本関係があり親密。

POINT

1.大阪本社の化学系専門商社、住友化学と長年に渡り蜜月関係
2.売上高・利益いずれも好調で成長基調、財務体質も大いに健全
3.平均年収913万円だが総合職なら更に良好、福利厚生も恵まれている

業績動向

✔売上高と営業利益

稲畑産業の売上高は2020年まで5,700億~6,300億円レベルで安定していたが、同年以降は増加傾向に転換。直近の2022年には売上高7,356億円に到達して過去最高を更新*1。営業利益は売上高ほど増加していないが、2022年には203億円に到達。
*1:最近における売上高の増加要因は、①主力製品の合成樹脂の販売価格上昇、②化学品の需要回復による販売増加、③為替レートの円安推移による為替効果、など。

✔セグメント別の状況

稲畑産業は、情報電子事業(半導体・液晶材料、エレクトロニクス材料、プリンタ染料など)、化学品事業(自動車部品原料・樹脂原料・ゴム原料・接着剤原料・製紙用薬剤など)、生活産業他事業(医薬品原体・触媒・殺虫剤・農産品・水産物など)、合成樹脂事業(塩ビ樹脂・合成ゴム・フィルム・樹脂コンパウンドなど)、その他事業、の5事業を有する。
売上高・利益の約半分は合成樹脂事業が占めており、同事業の存在感が際立つ。祖業の流れを汲む情報電子事業の売上高は約30%程に留まっている。直近の中期経営計画では、合成樹脂・情報電子事業”以外”の売上高を30%以上まで高めるとしている。

✔最終利益と利益率

稲畑産業は純利益も安定的、2021年には純利益224億円に到達して過去最高を更新*2。景気動向の影響を受けやすい樹脂・化学製品を多く取り扱いながら、景気後退局面においても黒字確保できる安定性は強味。営業利益率は長期的に2%レベルでの推移が続いており、規模で稼ぐ構造。
*2:2021年の純利益増加は、保有していた投資用有価証券12銘柄の売却による特別利益52億円が加わったことが要因。

✔自己資本比率と純資産

稲畑産業の自己資本比率は緩やかな増加傾向にあり、直近では47.2%と高めの水準に到達。商社としては自己資本比率がかなり高めの部類である。純資産も増加傾向が続いており、直近の2022年には1,815億円に到達。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

稲畑産業の平均年収は長年に渡って860万円前後で推移していたが、2022年には900万円を突破。総合職以外の一般職採用も多い影響には注意が必要。総合職であれば30代中盤で1,000万円は突破し、課長職レベルで年収1,200万~1,300万円レベル。平均年齢は40歳前後であり、大企業なりの年齢構成。

✔従業員数と勤続年数

稲畑産業の単体従業員数は緩やかな増加傾向にあり、直近では589人に到達。事業規模の割には組織規模は小さめであり、少数精鋭の体制。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数も4,300人ほど。平均勤続年数は直近で13.8年と長くもなければ短くもない水準。

総合評価

企業格付け:BBB

戦前から染料貿易でグローバル展開をしていた老舗専門商社。戦時中の国策によって住友化学と合併させられた歴史を持つが、それゆえに戦後直後から化学専門商社として脱皮。住友化学との親密な関係をベースに大きく飛躍した。世界的な原材料高による樹脂・化学製品の価格上昇を追い風に、業績は過去最高圏を推移。2000年頃には売上高3,000億円前後に過ぎなかったことを思えば、過去20年間で事業規模を2倍以上に拡大させた計算である。業績安定性においても秀でており、ITバブル崩壊時・リーマンショック時・COVID-19感染拡大期いずれにおいても黒字をきっちり確保している。財務健全性における保守的な傾向が強い企業でもあり、直近では自己資本比率47.2%と専門商社としては上位級の財務体質を有している。先述した業績安定性を鑑みれば、極めて安定的な事業運営ができていると評価できよう。が、70年以上に渡るパートナーである住友化学が2022年頃から業績不振に苦しんでおり、2024年には当社株式を一部売却することが決定。住友化学の持分法適用会社から外れることとなっている。

就職格付け:BBB

長瀬産業・岩谷産業・阪和興業などと共に大阪に本社を置く専門商社の一角。商社機能だけではなくメーカー機能も保有している点が特徴的であり、とりわけ主力製品の樹脂コンパウンドにおいては顧客ニーズに応じた開発・加工に柔軟に対応できる体制に強みがある。給与水準は長年に渡って平均年収860万円前後で推移していたが、2022年には平均年収900万円を突破。当社は総合職だけではなく一般職採用も実施しているため、総合職に限れば平均年収1,000万円は上回っていると推測される。福利厚生においても恵まれており、若手社員であれば月5,000円の負担で借上げ社宅に入居できるため住宅コストも節約できる。働き方改革においても先進的であり、①テレワーク勤務制度では稼働日の40%までを目安に在宅勤務が可能、②2023年から男性の育児休業取得を義務化。海外ネットワークが充実していることから海外駐在の可能性が高いため、海外勤務に意欲的な求職者であえば大いに検討の余地がある(海外駐在となれば駐在手当によって給与水準は更に跳ね上がる)。在阪専門商社の中では知名度がいまいち低い企業ではあるが、給与水準・福利厚生においては大いに優良企業と評価できる。

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