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日本製鉄の企業格付・就職偏差値【業績動向から平均年収まで解説!】

企業概要

日本製鉄は国内第1位・世界第4位の規模を誇る大手鉄鋼メーカー。1901年に国策で設置された八幡製鉄所を源流に持ち、1934年に国内大手5社の製鉄所が合併して誕生した。2012年には住友金属工業と合併、2017年には日新製鋼を子会社に迎え、国内最大手の製鉄メーカーの地位を確立した。高炉と呼ばれる大規模設備を有する数少ない鉄鋼メーカーの1社であり、鉄鉱石から鋼材までを自社完結で製造する能力を有する。

POINT

・国内首位かつ世界第4位の最大手鉄鋼メーカー、知名度抜群
・経営改革に成功して売上高・利益いずれも過去最高圏、USスチール買収に意欲
・大卒総合職は30歳で年収800万円前後、社宅・独身寮が充実

業績動向

✔売上高と営業利益

日本製鉄の売上高は2020年まで4~6兆円で横ばいであったが、同年以降は売上高が急拡大。2022年には過去最高となる7.97兆円に到達*1。営業利益は年度によるばらつきが極端だが、2021年・2022年には過去最高圏の利益を叩き出している。
*1:2020年以降の売上高の急増は、①COVID-19終息後の景気回復で鋼材需要の高騰、②鋼材市況の高騰による在庫評価益の計上、③原材料価格高騰の価格転嫁により売上高が急増、が主要因。

✔セグメント別の状況

日本製鉄は製鉄事業(鉄鋼製品の製造販売)、エンジニアリング事業(産業機械・装置・鉄鋼構造物、電気・ガスなど)、ケミカル&マテリアル事業(石炭化学製品、電子・半導体材料、金属加工品など)、システムソリューション事業(ITシステムのエンジニアリングなど)の3事業を有する。
国内第2位のJFEホールディングスが売上高の約40%を商社事業とエンジニアリング事業が稼ぐのに対し、日本製鉄は製鉄事業に占める割合が極めて高い。ただし、日鉄物産日鉄ソリューションズなどの優良子会社も多数ある。

✔最終利益と利益率

日本製鉄の純利益は、年度により好不調が明確に分かれる。2019年には純損失4,315億円を記録した反面、2022年には純利益6,940億円を記録。2019年から2020年に渡っては純損失が続く経営不振の時期が続いていたが、黒字体質へと回帰することに成功*2。
*2:日本製鉄は経営不振となった2019年以降にX生産拠点の再編を実施。呉や鹿島の高炉を休止するリストラによって利益体質の改善を図った。また、トヨタ自動車をはじめとする大口顧客との価格交渉に勝利したことで、利益率を急改善させた経緯も。

✔自己資本比率と純資産

日本製鉄の自己資本比率は直近で43.7%と大手メーカーの標準的な水準。2019年に巨額の純損失を計上したことで30%台に転落したが、直近の利益急増で財務体質は改善傾向。純資産は2022年に4.64兆円まで伸長。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

日本製鉄の平均年収は長期的に500万~610万円ほどで停滞していたが、2022年には824万円まで急拡大。大卒総合職であれば30歳で780万~890万円に到達。課長職レベルで1,100万~1,300万円には到達する。平均年齢は38.5歳と大手メーカーとしてはやや若めの印象。

✔従業員数と勤続年数

日本製鉄の単体従業員数は長期的に2.6万~2.9万人ほどで横ばい。日新製鋼・山陽特殊製鋼などの子会社・関連会社を含めた連結従業員は10.6万人ほどの大所帯である。平均勤続年数は直近で17.2年と大手メーカーとしては標準よりやや短め。

総合評価

企業格付け:AA

■業績動向
急改善。2020年までは売上高・利益いずれも停滞感が強く、2019年にはCOVID-19による鋼材不況で巨額損失に転落。あわや経営危機かと思われたが、2021年以降には業績急改善を達成。売上高・利益いずれも過去最高圏まで上昇を遂げ、2021年・2022年には純利益8,000億円以上を叩き出す絶好調ぶりを示している。

■財務体質
改善傾向。2019年には純損失4,315億円を計上したことで自己資本比率35%まで低落したが、2021年以降の業績回復によって財務基盤も回復。直近では2015年以来となる自己資本比率43%代まで向上を果たした。が、2023年にはUSスチールを2兆円を投じて買収する意向を示しており、実現した場合には金融機関からの借り入れにより負債が増加する可能性もある。

■ビジネス動向
COVID-19による大幅赤字を経て、経営改革に成功。積年の課題であった安売り体質を脱却すべくトヨタ自動車を筆頭とする大口顧客と価格交渉を展開。2021年にはトヨタ自動車・三井物産を相手取って電磁鋼板訴訟も展開し、下請け企業に甘んじない姿勢を誇示。結果、トヨタ自動車に大幅値上げを受け入れさせ、他大口顧客にも続々と値上げを受け入れさせることに成功。2023年にはグローバル鋼材メーカーの地位を盤石とすべく、総額2兆円を投じて米・USスチールの買収を表明。

就職格付け:A

■給与水準
2021年以降の業績回復により待遇も改善傾向。大卒総合職なら30歳で780万~890万円に到達。課長職レベルで1,100万~1,300万円には到達する。鉄鋼業界におけるトップ企業であることは疑いの余地はないが、かといってメーカー最上位級の待遇というわけでもない。自動車メーカー・化学メーカーなどにも同水準の待遇を得られる企業はある。

■福利厚生
大手メーカーなり。独身寮・社宅制度が充実しており、独身寮は月額1万円・社宅は月額2万円ほどで生活できる。居住コストを抑制できるため見た目の年収以上の余裕は感じられるが、共同生活色が強いため団体生活が苦手な場合にはやや辛め。独身寮・社宅に入らない場合は補助がない。製鉄所は地方にも多いため転勤リスクも注意が必要。八幡・鹿島・君津・室蘭・釜石などへの転勤を覚悟できるかは入社にあたり重要な判断事項。

■キャリア
事務系・技術系の2職種制。事務系職種は営業・購買・工程管理・コーポレート部門でローテーションを経ながら経験を蓄積する一方、技術系職種は操業技術・品質管理・設備技術・研究開発などに配属される。入社後8年間はおおむね横並びで昇進するが、30歳以降は実力次第で昇進ペースは分かれていく。連結子会社数200社以上を誇る巨大グループであるため、本社で出世コースから外れた総合職は50代以降には関連会社へと転籍していくケースが多々。転籍先ではそれなりのポストが用意されるため悪くはないが、出世競争から脱落しないよう努力が求められる。

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