企業概要
資生堂は、化粧品・健康食品・一般用医薬品などを展開する大手化粧品メーカー。化粧品において国内シェア首位を誇り、世界シェア5位に位置する業界最大手の一角。1872年に福原有信が創業した資生堂薬局を源流とし、1897年に化粧品の製造販売へと進出。戦前の1931年から東南アジアを中心に海外進出を果たし、現在では世界120ヶ国以上にビジネスを展開。デパートなどで販売される高価格帯化粧品に強みを持ち、売上高の約60%を高級ラインで稼ぐ。研究開発にも熱心であり、皮膚科学・脳科学においてR&Dを展開。1892年から洋菓子・喫茶店事業も展開、現代においても資生堂パーラーのブランドで親しまれる。
・国内首位・世界5位の大手化粧品メーカー、高価格帯ブランドに強み
・売上高・利益いずれも停滞、財務体質は自己資本比率47.5%と手堅い
・平均年収720万円、家賃補助が手厚いが定期的に転勤をしないと支給が止まる
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:67(上位)
かなりの勝ち組サラリーマン。日本を代表する化粧品ブランドゆえに社会的名声は高く、女性からの評価は特に高い。待遇も悪くないが、中国市場での低迷と業績悪化を踏まえて格下げ。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関
総合職の採用数は2020年まで年間140人以上であったが、同年以降は業績悪化で採用縮小。直近3年間は40人~60人の採用に留まる。化粧品業界のトップ企業ゆえに依然として人気は高く、倍率は高い。
採用大学:【国公立】大阪大学・北海道大学・九州大学・神戸大学・筑波大学・広島大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・同志社大学・南山大学・芝浦工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
資生堂の売上高は2019年まで増加傾向が続いていたが、2020年に急落*1。同年以降は売上高0.92兆~1.06兆円レベルで横ばい。営業利益は2019年まで増加傾向にあったが、同年以降は▲288億~281億円ほどで停滞している*2。
*1:当社はCOVID-19の感染拡大で打撃を受けた企業の1社であり、①外出自粛・リモートワークの拡大による化粧品需要の低迷、②外国人旅行客の激減による免税店販売の急減少、などが打撃となった。
*2:2020年から営業利益が低迷している理由は、①COVID-19感染拡大期の化粧品需要の低迷、②中国市場における競争激化・ブランド力の低下による利益低迷、③高利益率な免税店販売の低迷、など。
✔セグメント別の状況
資生堂は、日本事業(国内における化粧品・美容食品・一般医薬品の製造販売)、中国事業(中国における事業展開)、アジアパシフィック事業(アジア・オセアニアにおける事業展開)、米州事業(アメリカにおける事業展開)、欧州事業(欧州における事業展開)、トラベルリテール事業(全世界の免税店エリアにおける事業展開)、その他事業、の7事業を有する。
当社は世界120ヶ国以上で事業展開するグローバル企業であり、海外売上高比率は約72%にも及ぶ。主力は日本・中国・アジアならびに免税店での販売。利益面においては日本事業が約45%を占めており、国内市場の利益率は相当に健闘している。
✔最終利益と利益率
資生堂の純利益は2019年の純利益736億円をピークに低迷傾向にあり、2024年には純損失▲108億円に転落している*3。営業利益率は2019年に10%に到達したが、同年以降は▲2%~2%レベルに低下。企業イメージほど利益率は高くない。
*3:当社の利益低迷の要因は、①高価格帯におけるブランド力の低下、②マスク着用の増加や物価高騰による節約意識の高まりによる化粧品需要の停滞、③中国市場における販売低迷や不買運動への直面、などがある(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
資生堂の自己資本比率は2020年まで低下傾向が続いていたが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には自己資本比率47.5%と、負債に依存しすぎない事業運営ができている。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2024年は6,546億円となっている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
資生堂の平均年収は2019年まで700万円台で推移していたが、業績悪化によって2021年には620万円まで後退*4。2024年にはやや回復したが、それでも平均年収720万円となっている。大卒総合職であれば、30歳で年収600万~670万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安。
*4:当社の平均年収が下がった理由は、①2017年から2020年までの採用強化で若手社員数を急増させたこと、②2019年以降のCOVID-19影響による業績悪化、が主要因。
✔従業員数と勤続年数
資生堂の単体従業員数は2020年に4,300人規模まで拡大していたが、同年以降は横ばい傾向に転換している。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2.79万人ほど。平均勤続年数は10.8年(2024年)と大手企業の標準的な水準を下回る。
総合評価
企業格付け:BB
日系化粧品メーカーとしては国内首位の規模を誇り、世界シェアにおいても業界5位の大手。デパートなどで展開する対面販売を通した高級化粧品に強く、アジア発のグローバル化粧品メーカーとして屈指のブランド力を誇る。業績においては2019年まで続いた業績拡大がCOVID-19感染拡大により一気に暗転。世界的な外出自粛・リモートワークの普及により化粧品需要が激減したことで大きな打撃を受けた。COVID-19終息後も業績回復には乏しく、2024年には純損失▲108億円と再び最終赤字に転落している状況。当社は中~高価格帯への注力を目指したものの、中国景気の減速とブランド力の低下によって(かつてのドル箱市場であった)中国市場における業績低迷が顕著に。世界的な物価高によって嗜好品である高級化粧品への出費を絞る家庭が増えたことも打撃となっている。財務体質においては自己資本比率47.5%(2024年)と依然として良好な水準を維持しているが、業績回復に向けた光明が見えない状況が続いている。
就職格付け:B
化粧品業界のリーディングカンパニーとして知られ、一般知名度・企業イメージは抜群。給与水準においては平均年収720万円(2024年)と企業イメージほど高くはないうえ、業績悪化に見舞われた2021年には平均年収620万円まで後退している。大卒総合職であれば30歳で年収600~670万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,050万円ほどが目安となるだろう。福利厚生においては相当に恵まれており、家賃補助・住宅手当は最大6万円/月を受給可能。既婚者かつ子どもがいれば扶養手当なども加算され、1ヵ月10万円前後の手当を受給することも可能。…だが、最終的な平均年収にこれらは含まれている点に注意は必要。30歳年収650万円のパターンであれば手当分だけで100万円ほどが加算されている計算であり、ベース賃金の伸びが鈍い印象は拭えないか。また、家賃補助制度の受給期間は7年間となっているため、これが切れると相当の痛手となる。会社都合の転勤があれば7年間のカウントがリセットされるが、どこまで転勤に伴う生活変化には耐える必要があるだろう。