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【勝ち組?】JR西日本の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

西日本旅客鉄道(JR西日本)は、近畿・中国・北陸地方を中心とする在来線網ならびに新幹線を運営している大手鉄道会社。1949年に設立された日本国有鉄道を源流とし、1987年に国鉄分割民営化により発足。大阪駅を中心とする近畿圏近郊路線を重要な収益源としており、関西圏に林立する大手私鉄と競合。山陽新幹線・北陸新幹線の収益性は悪くないが、地方部には多くの赤字路線を抱える状況。高速バス・フェリー・百貨店・不動産賃借・小売店なども展開しており、事業多角化を進めている。

POINT

・西日本エリアの在来線・新幹線を統括する大手鉄道会社
・売上高・利益はCOVID-19で急悪化したが、現在ではほぼ回復
・平均年収596万円と大手鉄道会社の割に給与水準は凡庸

✔就職偏差値:総合職=66(上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:中難易度~難関

新卒採用数は年間800人前後だが、うち総合職は年間100人ほど。総合職は旧帝大・早慶クラスがボリューム層だが、エリア職になると中堅大学からの採用も積極的。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・名古屋大学・広島大学など、【私立】同志社大学・関西学院大学・立命館大学など[エリア職:近畿大学・摂南大学など](出典:ダイヤモンドオンライン

業績動向

✔売上高と営業利益

JR西日本の売上高は2020年に0.92兆円まで激減したが、同年以降は回復傾向*1。2023年には過去最高となる売上高1.63兆円まで到達している。営業利益は2020年・2021年に大幅赤字に転落したが、2023年にはCOVID-19以前の水準まで回復。
*1:JR西日本はCOVID-19感染拡大により大打撃を被った1社。外出自粛により行楽需要が激減したうえ、企業の出張自粛により東海道新幹線の乗客数も激減。COVID-19感染を恐れて公共交通機関の利用が忌避された為に業績への打撃甚大。

✔セグメント別の状況

JR西日本は、モビリティ事業(新幹線・在来線・駅清掃整備・機械設備工事など)、流通事業(JR西日本伊勢丹・物販・飲食業など)、不動産事業(不動産販売・賃貸、オフィスビル賃貸・ショッピングセンタ運営、ホテル運営など)、旅行・地域ソリューション事業(観光活性化・産業活性化、自治体向けシステム開発など)、その他事業(ホテル業・広告業・電気工事・清掃・旅行代理店・建築など)、の5事業を有する。
当社は運輸事業をコアとするものの売上高に占める割合は約52%であり、流通・不動産・ホテルなどの事業多角化が進んでいる。COVID-19以降は鉄道分野が大幅赤字に沈んでいたが、2023年には運輸事業が全社利益の約63%を稼ぐまでに回復している。

✔最終利益と利益率

JR西日本の純利益は2020年・2021年に大幅赤字に沈んだが、同年以降は回復傾向。営業利益率はCOVID-19で▲26.7%まで急激悪化したが、2023年には10%台を回復。ただし他JR大手2社と比べると利益率は低め*2。
*2:当社は京阪神地域の通勤需要により黒字の在来線も多数あるが、関西圏は大手私鉄との競争が激しい。新幹線は山陽新幹線であっても利用客数は東海道新幹線の精々半数。JR東海と比較すると高収益をだしにくい地盤。

✔自己資本比率と純資産

JR西日本の自己資本比率は概ね30%台で推移してきたが、2020年以降は業績悪化により20%台まで後退。自己資本比率はやや低めの印象だが、これは鉄道会社に特有の事情による*3。純資産は2020年に業績悪化で急減したが、2023年には1.22兆円まで回復。
*3:鉄道会社は鉄道車輛や線路の維持管理に膨大な設備投資資金を要する特性があり、自己資本比率は他業界と比べて低めとなる特徴がある。ただし、安定したキャッシュフローが得られる業態であるため自己資本比率がやや低めであったとしても大きな問題とはならない。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

JR西日本の平均年収は650万円前後で推移していたが、2021年にはCOVID-19による業績悪化の影響で500万円台に後退。大卒総合職ならば3歳頃に年収600万~700万円、順当に出世して課長職になれば1,000万円を越える*3。平均年齢は38.1歳と大手企業としてはやや若め。
*3:JR西日本の採用枠には、総合職・プロフェッショナル職の2種類がある。各職種ごとに職務領域が異なり、待遇にも大きな違いがある。   

✔従業員数と勤続年数

JR西日本の単体従業員数は減少傾向が続いており、直近では2.17万人まで縮小。平均勤続年数は14.9年と意外と大手企業の標準的水準に留まるが、プロフェッショナル職も含めた平均勤続年数である点も影響している。

総合評価

企業格付け:B

■業界ポジション
JR大手3社の一角として山陽・北陸新幹線を預かる大手鉄道会社。関西圏のインフラ企業の雄ではあるが、大手私鉄と路線網が競合するため競争は激しい。同じく関西エリアを地盤とする競合他社は、近畿日本鉄道・阪急電鉄・阪神電気鉄道・京阪電気鉄道・南海電気鉄道など。そのうえ中小私鉄も多く存在しており、競争環境は熾烈(この競争の激しさが福知山線脱線事故という悲劇が起こる遠因となった)。

■業績動向
回復。COVID-19という特殊事態に打撃を受けて2020年・2021年には大幅な業績悪化に直面、必ずしも鉄道会社も安定企業ではないことが再認識された。最近では業績回復が進んでおり、2023年には売上高が過去最高となる1.63兆円に到達。外国人観光客の回復により、モビリティ事業・流通事業・ホテル事業などが好調。

■財務体質
まずまず。自己資本比率は直近でも29.3%とそこそこレベル。2019年までは自己資本比率33%~35%ほどで安定していたが、COVID-19感染拡大期に巨額損失を計上したことで急下落。財務体質の回復は今なお道半ばであり、2019年以前にまで回復するまで時間を要するか。

■熾烈な競争と老朽化の苦悩
JR大手3社の中ではドル箱路線と呼べる路線が少ないことが長年の苦悩。関西圏都市部においては競合他社との競争が熾烈である一方、中国地方などの地方においては鉄道利用者数は限定的。山陽新幹線も開業40年が経過したことで老朽化も進展、1999年にはトンネル内部のコンクリートが剥落して新幹線を直撃する事件も起こっている(福岡トンネルコンクリート塊落下事故)。長大な路線網の維持コストも重い。

就職格付け:総合職=CCC、プロフェショナル職=C

■給与水準
直近の平均年収は596万円と世間のイメージよりもかなり低く、JR大手3社の中では最下位。大卒総合職の給与テーブルは30歳頃に年収500~650万円ほど、課長職レベルで900万~1,000万円ほど。安定性も微妙であり、COVID-19感染拡大期にはボーナス額が1.5ヵ月にまで急減・リーマンショック直後も2.5ヵ月にまで削減と、給与カットにも容赦がない(元々の給与水準が高くないため、ボーナスが1~2ヵ月レベルというのは非常につらい)。

■福利厚生
良い。かつて国営鉄道だった時代の名残で独身寮や社宅も充実、30歳までは住宅コストを大きく抑えて生活することができる。ただし、家賃補助制度は最大2.5万円/月と少ないため、30歳以降は相応の負担が発生する。独身寮の入寮年齢や家賃補助額などが、JR東海・JR東日本と比べると低いのは否めない。

■キャリア
総合職・プロフェッショナル職の2職種制。総合職は将来の幹部候補として相応の給与水準とキャリアパスが約束されるが、プロフェッショナル職はあくまでも現業職であり給与水準も大幅に低くなる。総合職は6~10年目で係長クラスへと昇格するが、プロフェッショナル職は13年~17年ほど。同じ企業とはいえ採用職種によって大幅に待遇が異なるため、就職格付は明確に分かれる。

■関西圏における評価
大抵、大手鉄道会社は地元での企業イメージが良い場合が多いが、JR西日本に関しては福知山線脱線事故という史上最悪レベルの事故により今だ企業イメージは微妙。地元企業の雄としては関西電力・大阪ガス・阪急阪神ホールディングスなどが有力であり、これら他社と比べると評価は一歩劣る。

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出典:西日本旅客鉄道株式会社(有価証券報告書)