企業概要
花王は、洗剤・石鹸・入浴剤・トイレタリー・飲料・化学製品などを製造する大手総合日用品メーカー。1887年に長瀬富郎が開業した商店を源流としており、1890年に石鹸分野へ進出。戦前から現在まで一貫して洗剤・トイレタリー分野をけん引してきたリーディングカンパニー。1960年代から海外展開を進めており、現在では世界29ヵ国に進出。洗剤分野で国内シェア首位、化粧品分野で国内シェア2位。かつては電子部品分野や医薬品分野にも進出していたが、2000年代に撤退して得意分野への集中を強めている。
・洗剤・石鹸などの消費財化学分野で国内断トツ首位、業界の巨人
・売上高・利益は概ね安定的だが、2019年以降は不調。財務体質は良好
・平均年収810万円で住宅補助も手厚い、知名度が高いうえ世間体は極めて良好
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:71(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間70人~100人ほどだが、うち文系採用枠は年間10人~20人と極めて少ない。やはり誰もが知る有名企業だけに採用倍率は相当以上である。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・東北大学・名古屋大学・神戸大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・東京理科大学など(出典:外資就活ドットコム)
業績動向
✔売上高と営業利益
花王の売上高は2020年・2021年にやや低迷*1したが、長期的には1.5兆円レベルで安定的。2024年には過去最高となる売上高1.62兆円に到達している。営業利益は2023年まで右肩下がりでの減少傾向で推移していたが、2024年には1,466億円まで回復。
*1:2020年・2021年に売上高が減少した理由は、COVID-19の感染拡大による化粧品事業の売上高が主要因。マスクにより化粧品需要が縮小したうえ、外国人観光客によるインバウンド消費も消失。当社はメイクアップ化粧品の比率が高い為、マスク着用率の急増による打撃が大きかった。
*2:2023年まで営業利益が減少していた理由は、①世界的な原材料高騰ペースにコストダウン・価格改定が追いつかなかった点、②中国における競争激化・ブランド力の低下による販売減少、③化粧品事業の利益率低迷の長期化、など(参考リンク)。
✔セグメント別の状況
花王は、ハイジーン&リビングケア事業(衣料用用洗剤・台所用洗剤・掃除用製品・サニタリー製品など)、ヘルス&ビューティケア事業(石鹸・洗顔料・シャンプー・入浴剤・歯磨き粉など)、ライフケア事業(業務用衛星製品・健康飲料など)、化粧品事業(カウンセリング化粧品・セルフ化粧品など)、ケミカル他事業(油脂製品・機能材料・産業用薬剤・インク・半導体製造用薬剤)、の5事業を有する。
当社は多種多様な日用品・化粧品を展開する総合日用品メーカーであるが、、油脂誘導体・界面活性剤・機能性ポリマーなどもケミカル事業として展開している。売上高においてはハイジーン&リビングケア事業とヘルス&ビューティーケア事業が主力であるが、利益面ではハイジーン&リビングケア事業が全社利益の約50%を支えている構造。
✔最終利益と利益率
花王の純利益は2023年まで右肩下がりで推移してきたが、2024年には1,077億円まで回復*3。営業利益率も2019年の14%をピークに利益率低下が2023年まで続いていたが、2024年には9.01%まで回復。
*3:2024年に一転増益となった理由は、①原材料価格の高騰を受けた値上げ対応の加速、②生産性向上・コストダウンによる利益率の改善、③中国における化粧品在庫の適正化、④ケミカル事業における高付加価値製品の拡販、など。
✔自己資本比率と純資産
花王の自己資本比率は55%前後での推移が続いており、負債に依存しすぎない事業運営ができている。安定的な利益体質も加味すれば、財務体質は良好と評価できるだろう。純資産は緩やかな増加傾向にあり、2024年には1.09兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
花王の平均年収は概ね800万円前後の水準で推移している。財閥系大手化学メーカーには及ばないが、日用品メーカーとして見れば業界トップクラスの待遇であろう。大卒総合職なら30歳で年収700万〜780万円ほど、課長職に昇進すれば年収1,000万〜1,250万円が目安。
✔従業員数と勤続年数
花王の単体従業員数は2021年までは増加傾向にあったが、2024年には7,861人ほどの組織体制にやや縮小。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3.25万人ほど。平均勤続年数は17.0年(2024年)と大手企業の標準的な水準を上回るが、長期的に微減傾向がみられる。
総合評価
企業格付け:AA
日系消費財化学メーカーで断トツ首位に君臨する業界の巨人であり、売上高においてはユニ・チャームの約1.5倍、ライオンの約4倍の規模を誇る。しかして、世界首位のP&Gに対しては売上高は4分の1に過ぎず、国内首位と言えどもグローバルでの存在感は大きくはない。業績においては売上高こそ1.5兆円レベルで長期的に安定していたが、2023年までは営業利益・純利益の低下が続いていた。2024年には構造改革が奏功して一転増益となったが、遅れていた値上げ対応がようやく原材料価格の高騰に追い付いた側面もある。そのため、このモメンタムを維持できるかは依然として未知数である。財務体質においては自己資本比率55%前後とかなり堅実な水準を維持できている。黒字確保という観点では安定的であるため、厳しい状況にあるとは言えども安定企業であることには変わりはない。
就職格付け:AA
日本人ならば当社製品に触れずに生きることが難しいほど生活に浸透した大手消費財化学メーカー。身近な製品を扱えるうえ企業イメージも良いため、就職人気ランキングの上位常連でもある。給与水準においては平均年収800万円前後と日用品業界としてはトップクラス。大卒総合職なら30歳で年収700万〜780万円ほど、課長職に昇進すれば年収1,000万〜1,250万円が目安となる。…が、大手化学メーカーと比べれば横並び感が強く、当社の入社難易度ほどには給与水準は傑出してはいない印象が拭えない。グローバル展開においても大手化学メーカーの方が先行する為、海外志向が強い場合にはより海外売上高比率の高い化学メーカーの方が好ましいだろう。福利厚生においては相当に充実しており、新入社員には借上げ社宅(月額家賃の約80%が会社負担)が手配される。家賃補助制度では最大6万円/月までが補助されるうえ、支給期間もかなり長めで条件に合致さえすれば40歳まで受給できる。