企業概要
積水化学工業は、住宅・建材・化成品・高機能プラスチックを製造する大手樹脂加工メーカー。1947年に日窒コンツェルンが財閥解体されたことで独立した企業。プラスチックをはじめとする樹脂加工技術に優れ、1950年にはセロハンテープを開発、1957年にはポリバケツを発売しており、現代社会の必需品を数多く発明。1960年にハウス事業部を分離させ積水ハウスとして分社化したが、1970年代に住宅事業へ再進出してセキスイハイムとしてブランド化。現在では大手注文住宅メーカーとしての存在感も発揮。
・樹脂技術に強い大手化学メーカー、住宅分野でもセキスイハイムを展開
・堅実な財務体質で無借金経営、景気後退局面でも純利益は確保
・大卒総合職なら平均年収900万円ほど、福利厚生も手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:71(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間100人前後。内訳は事務系40%・技術系60%となっており、意外と事務系採用の枠がある。総合職の出身大学は旧帝大・早慶クラスがボリューム層だが、西日本エリアからの採用が多め。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・九州大学・神戸大学・広島大学・京都工芸繊維大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・同志社大学・関西学院大学など(出典:大学通信ONLINE)
業績動向
✔売上高と営業利益
積水化学工業の売上高は概ね1兆円規模での横這い推移で成長性は乏しい。企業知名度に比べると売上高が小さいが、売り上げ単価が大きい注文住宅を積水ハウスとして分離独立させた影響*1。営業利益は極めて安定的であり、過去8年間は800億〜900億円レベルで推移している。
*1:当社は1960年にハウス事業部を積水ハウスとして分離独立させたが、その後に住宅事業に再参入。現在では「セキスイハイム」として事業展開する。が、積水ハウスは売上高3兆円規模で先行しており、規模感には大きな差がある。
✔セグメント別の状況
積水化学工業は住宅事業(積水ハウス向けを主とする建材の製造販売)、環境・ライフライン事業(塩化ビニルパイプ・インフラ向け資材など)、高機能プラスチック事業(自動車部品・航空機部材・電気通信機器向け材料など)、メディカル事業(臨床検査薬・採血管・分析装置の製造販売など)、の4事業を有する。
売上高の約40%以上を住宅事業が占める一方、利益面では約21%に留まっており、住宅事業は利益率がそれほど高くはない。一方で、高機能プラスチック事業は利益の約48%を稼ぎ出しており、高利益率な事業であることが伺える。
✔最終利益と利益率
積水化学工業の純利益は600億〜700億円レベルで長期的に推移。2019年・2020年・2021年はやや失速*2したが、同年以降は元レンジに回復。営業利益率は7%前後で長期的に安定している。
*2:2019年〜2021年の利益減少はCOVID-19感染拡大と景気失速による自動車・航空機向け材料の不振が主要因。2021年には北米子会社で減損損失495億円が発生し、純利益が低迷する主要因となった。
✔自己資本比率と純資産
積水化学工業の自己資本比率は直近で59.9%と高水準であり、大手化学メーカーとしては高めの水準。純資産は長期的に増加傾向が続いており、直近では8,209億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
積水化学工業の平均年収は直近で912万円と化学メーカーとしては高めの水準。同業他社の給与水準をベンチマークしており、優秀な人材を確保できる給与制度をとっている大卒総合職であれば30歳で700万~800万円ほど、課長職レベルで1,100万〜1,200万円ほど。
✔従業員数と勤続年数
積水化学工業の単体従業員数は緩やかな増加傾向にあり、直近では2,992人に到達。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は2.69万人ほど。平均勤続年数は16.1年前後と大手メーカーとしては標準的な水準であり、それほど傑出しているわけでもない。
総合評価
企業格付け:A
■業界ポジション
売上高では化学業界において上位10社に入るか入らないか…といった立ち位置である。しかし、極めて安定的な利益体質と堅牢な財務体質によって、他にはない輝きを持った企業。化学メーカーは景気動向に業績を左右されやすいが、積水化学工業は事業多角化によりリーマンショック直後でも純利益を確保することに成功している。
■業績動向
横ばい。他大手化学メーカーにはCOVID-19以降に業績躍進した企業も多いが、当社は業績拡大はあまり見られず。直近でいえば、①金利上昇による住宅需要拡大の停滞、②COVID-19検査キットの販売急減、③景気拡大の一服による主力製品群の拡販停滞、などが課題。とりわけ住宅需要の停滞は、戸建て・建材を多く生産する当社にとって痛手ではある。
■財務体質
良好。自己資本比率は59.9%(2023年)と大手化学メーカーとしては上位級。有利子負債は978億円(2023年)と企業規模を考えれば相当に少なめ。手元の現預金は1,385億円(2023年)であるため、流動性は大いに良好である。
就職格付け:A
■給与水準
直近の平均年収は912万円と、化学メーカー上位級。端的に言えば、業績・利益率の割には高すぎる印象も否めないが、当社を企業規模で圧倒する同業他社に対して人材確保の優位性を維持するための施策か。大卒総合職であれば30歳で700万~800万円ほど、課長職レベルで1,100万〜1,200万円ほど。かつては年功序列色が強かったが、最近では実力主義を重んじる気風へと転換しつつある。。
■福利厚生
良い。大手メーカーらしく独身寮・借上げ社宅制度が整っており、30歳までは月額5,000円レベルの格安で生活することができる。いずれも給与の枠外において会社がコストを負担する制度であるため、実際の生活水準は見た目の平均年収を大きく上回る。
■キャリア
ビジネスキャリアコース・エキスパートコースの2職種制。ビジネスキャリアコースは(いわゆる)総合職採用であり、その内訳に事務系総合職・技術系総合職がある。カンパニー別採用を実施している。ビジネスキャリアコースは入社後したカンパニー・職種で専門性を高めつつ、将来の幹部候補としての知見を蓄積していく。エキスパートコースは専門領域における技能を磨く(いわゆる)一般職採用であるが、採用人数はたったの年間2~6名のみ。そのうえ初任給・昇給/昇格スピードなどの待遇には明確な差がある。