企業概要
王将フードサービスは、世界6ヵ国で中華料理レストラン「餃子の王将」を展開する大手外食会社。1967年に京都・四条大宮で創業、1969年に暖簾分けによって大阪王将を誕生させた。1985年には商標を巡って大阪王将と訴訟となり、袂を分かった(現在でも資本関係は一切ない)。現在では国内外に732店舗を展開しており、中華分野における店舗数は首位級。1990年代からアサヒビールと親密な関係にあり、2008年からは同社が筆頭株主になっている。
・国内最大の中華料理店『餃子の王将』を展開、アサヒビールが筆頭株主
・売上高・利益は絶好調で過去最高圏、財務体質は大いに優良で高利益率
・平均年収578万円だが学歴不問で稼げる環境、体育会系の企業文化
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:55(準中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとして準中堅クラスの待遇を得られる。世間一般に見劣りすることのない、普通の人生を送ることができるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:易しい
総合職の採用人数は年間50人~100人ほど、将来のフランチャイズ独立を志して入社する志望者は少なくない。アルバイトの正社員登用にも積極的であり、新卒・中途を問わず門戸は広い。
採用大学:【国公立】横浜国立大学・埼玉大学・岐阜大学・島根大学・鳥取大学・高知大学など、【私立】立命館大学・近畿大学・亜細亜大学・大東文化大学・西南学院大学・城西大学・大谷大学・畿央大学・関東学園大学・花園大学・平成国際大学・東京聖栄大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
王将フードサービスの売上高は2021年まで800億~860億円ほどで推移していたが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には過去最高となる売上高1,110億円を達成*1。営業利益は2022年まで55億~76億円ほどで横ばいが続いていたが、2024年には109億円まで上振れ。
*1:2024年に売上高・利益が増加した理由は、①調理に関する社員教育『王将アカデミー』を繰り返し開催して料理品質を磨き上げた点、②会員制度『ぎょうざ倶楽部』による熱狂的ファン・リピート顧客の増加、③原材料費・人件費の高騰を受けた値上げ対応、など。
✔セグメント別の状況
王将フードサービスは、中華事業(中華レストランチェーン『餃子の王将』の直営店運営・フランチャイジーなど)、のみの単一事業会社である。
当社が展開する『餃子の王将』は日本全国に直営551店舗・フランチャイズ店177店舗を展開しており、直営店比率は約75%を超えている。手作りの中華料理は調理品質が問われるため、直営店比率を高めることで高品質を保ちやすい体制を整えている。売上高の約23%をテイクアウトが占めており、意外と持ち帰り需要も高いことが伺える。
✔最終利益と利益率
王将フードサービスの純利益は2020年まで35億~55億円ほどで推移していたが、同年以降は62億~88億円に上振れしている。営業利益率は長年に渡って7%~9%で安定しており、2023年には10.1%にも到達している。外食業界ではトップクラスとなる利益率を誇る。
✔自己資本比率と純資産
王将フードサービスの自己資本比率は2020年のみ58.1%まで低下*3したが、同年を除けば66%~76%ほどで横ばいが続いている。2024年は自己資本比率76.8%と大いに健全な水準となっている。純資産は長期的な増加傾向が続いており、2024年には742億円に到達。
*3:2020年に自己資本比率が急落した理由は、長期借入金の一時的な急増。詳細は明かされていないが、COVID-19感染拡大による業績悪化に備えて借入金を増やしたと推察される。同年以降は速やかに返済を進めたため、自己資本比率は早々に回復した。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
王将フードサービスの平均年収は578万円(2024年)と業界上位クラスの給与水準となっている。総合職で入社すると、早ければ30歳前後で店長クラスに昇格して600万~700万円ほどに達する。店舗オペレーションの最前線で叩き上げれば、学歴不問・前職不問で年収600万~700万を稼げるのは強みであろう。
✔従業員数と勤続年数
王将フードサービスの単体従業員数は2,100人~2,320人ほどで安定的に推移している。直営店舗数が多いこともあって従業員数は多め。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は2,370人ほど。平均勤続年数は11.4年(2024年)と、イメージの割には従業員の定着は悪くない。
総合評価
企業格付け:DD
■業績動向
大いに好調。売上高は過去最高を更新して絶好調でありつつ、原材料費・人件費高騰を跳ね返して利益までをも増やしているのは驚異的。2022年から2025年にかけて全5回にも及ぶ値上げを繰り返したが、熱狂的なファンは離れていない。当社の提供してきた中華料理が盤石の顧客基盤を構築してきたことが顕著に示されたと評価できよう。もともと営業利益率が外食業界ではトップクラスであるうえ、中華分野では競合他社を大きく引き離している点も強い。
■財務体質
優良。自己資本比率70%前後を長期的に維持しており、外食業界ではトップクラスの財務体質。外食業界においてこのレベルの自己資本比率を実現している大手企業は他に日本マクドナルドHDくらいしかない。手元の現預金も381億円(2024年)を確保しており、有利子負債50億円(2024年)を圧倒する潤沢さを誇る。
■ビジネス動向
首都圏・関西圏を出店攻勢地域と定めており、店舗空白エリアへの新規出店を加速。直営店を増やすだけでなく、既存社員をフランチャイズオーナーとして独立開業させる取り組みも並行させることで店舗数を拡大する。新業態「餃子の王将ジョイナーホ」店舗も増やす。
就職格付け:DD
■給与水準
平均年収は578万円(2024年)と業界上位クラスの待遇。一見すると同業他社よりも低く見えるが、当社の平均年収は直営店舗の従業員も含めての平均年収である点が重要。中途入社や高卒入社であっても現場で叩き上げて店長クラスになれば、学歴不問で年収600万円以上を稼げるのは夢がある。エリアマネージャーまで出世すれば年収800万~990万円にも達する。
■福利厚生
外食業界ではそこそこ上位。住宅補助は1万円/月ほどだが、一部の事業所には独身寮が備わっており月額1.5万円で入寮可能。転勤に伴う引越費用は会社負担。年1回の社員旅行では自分の好きな行先を選択できる。前社長からの伝統で従業員の誕生日にはプレゼント(書籍)が贈られる他、従業員の配偶者の誕生日には花が贈られる。
■キャリア
入社後は店舗配属が基本であり、調理・店舗運営の基礎を学ぶ。その後は店長を目指す場合と本社部署勤務に分かれており、誰しもが店長を経由しなければならないわけではない。優秀であれば3年ほどで店長に抜擢されるケースも。店長からフランチャイズオーナーとして独立する社員もいる。
■ブラック企業からの転換
かつてブラック企業ランキングにランクインするなど世間を騒がせたが、最近は大きく方針転換。飲食業界の人手不足もあって従業員を大切にする企業に変わりつつある。高利益体質を生かして従業員への還元も進めており、世間が思うようなブラック企業ではもはやない。
■独特の企業文化
ザ・体育会系の企業文化。各種媒体では独特の店長会や壮絶な社内研修の動画を見ることができる。賛否両論あるものの、必死に努力する体育会系文化が好きであれば楽園である。前社長は人情派としても知られ、①社長室の壁に従業員の顔写真を貼って名前を覚える、②誰より早く出社して社内を掃除する、などのエピソードに事欠かない