企業概要
横浜ゴムは、自動車用タイヤ・自動車ゴム部品・コンベアベルトなどを製造販売する大手自動車部品メーカー。1917年に横濱電線製造(現・古河電気工業)が米BFグッドリッチと設立した横濱護謨製造を源流とし、1963年に現社名の横浜ゴムに社名変更。世界シェア8位の大手タイヤメーカーであり、日本国内の販売規模はブリジストン・住友ゴム工業に続く第3位。乗用車・商用車・建機向けには”ヨコハマ”ブランドで商品展開する他、プレミアムタイヤブランドとして”ADVAN”を展開。ニュルブルクリンク24時間レース・スーパーフォーミュラ・スーパーGTなどのモータースポーツへのタイヤ供給も手掛けている。
・神奈川県平塚市が地盤の大手タイヤメーカー、海外売上高比率40%
・売上高・利益は2020年から好転、財務は自己資本比率50%超で堅い
・平均年収664万円で福利厚生も普通、本社が神奈川県平塚市へ移転
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:64(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:やや難関
総合職の採用数は年間25人~40人ほど、企業規模の割にかなり少ない。一般知名度が高い企業であるうえに車好きからの応募も多く、例年かなりの選考倍率となっている。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・東北大学・筑波大学・横浜国立大学・滋賀大学・埼玉大学・大阪公立大学・横浜市立大学など、【私立】早稲田大学・同志社大学・立教大学・中央大学・法政大学・日本大学・獨協大学・専修大学・東京電機大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
横浜ゴムの売上高は2019年まで6,000億円レベルでの横ばいが続いていたが、同年以降は増加傾向に転換。2024年には過去最高となる売上高1.09兆円に到達している*1。営業利益も2019年まで420億~500億円で安定していたが、2021年に大幅増益*2。2024年には過去最高となる営業利益1,191億円に到達。
*1:当社の売上高が急増している理由は、①世界的な原材料価格の高騰に応じた販売価格の値上げ、②自動車メーカーの新車装着用タイヤへの採用車種増加による販売本数増、③2023年にスウェーデン・トレルボルグ社の買収(参考リンク)、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
*2:2024年に営業利益が増加した理由は、①COVID-19後に急騰した海上コンテナ輸送費の下落によるコスト良化、②高機能タイヤの販売増加、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
横浜ゴムはタイヤ事業(乗用車用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、アルミホイール、自動車関連用品など)、MB事業(コンベアベルト・ホール・オイルフェンス・マリンホース・航空部品など)、その他事業の3事業を有する。
当社はタイヤ事業が売上高の約88%を占めており、自動車向けタイヤに業績を大きく依存している。タイヤ事業では『ヨコハマ』ブランドに加えて、プレミアムタイヤ『ADVAN』にも注力。高付加価値・高利益率なタイヤの拡販にも意欲的である。MB事業としてベルト・ホースなどのゴム製品も展開するが、売上高・利益への貢献は大きくない。
✔最終利益と利益率
横浜ゴムの純利益は2020年まで90億~420億円のレンジで推移していたが、2021年以降は純利益450億~670億円まで急増。2024年には過去最高となる純利益749億円に到達している。営業利益率は8%~12%で安定的に推移している。
✔自己資本比率と純資産
横浜ゴムの自己資本比率は2022年まで増加傾向が継続していたが、2023年にはやや低下。が、それでも自己資本比率51.5%(2024年)と大手メーカーとしてはかなり優良な水準。純資産は2021年から急激な増加傾向にあり、2024年には9,040億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
横浜ゴムの平均年収は600万~650万円レベルで極めて安定的に推移している。2024年には平均年収664万円に上振れたが、業績好調があまり従業員に還元されない印象が強い。総合職の場合は、30歳で年収450万~550万円ほど、課長職レベルで年収800万~900万円に到達する。社員の平均年齢は41.0歳と大手メーカーの標準的水準。
✔従業員数と勤続年数
横浜ゴムの単体従業員数は5,300人~5,500人レベルで安定的に推移。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は3.36万人ほど。平均勤続年数は17.3年と大手企業の標準的な水準を上回っている。
総合評価
企業格付け:CCC
ブリジストン・住友ゴム工業に続く大手タイヤメーカー。社名からは想像しにくいが古河グループに属しており、創業には古河電気工業と米BFグッドリッチが深く関わっている。現在では古河電気工業は大株主ではなくなっているが、古河グループの化学メーカーである日本ゼオンが大株主に名を連ねている(横浜ゴムも日本ゼオンの大株主であり相互持合いの関係)。業績は長年に渡って停滞が続いていたが、2020年以降には売上高の急成長が続いている。営業利益・純利益も同時に増加基調にあるため、健全な成長であると評価できよう。財務体質についても自己資本比率45%以上と堅牢であり、利益体質の安定性もあわせれば相当な安定企業。自動車業界は急激な電気自動車シフトによる100年に1度の大変革期にあるが、タイヤは電気自動車であっても必要であり続ける為に問題にはならない。2024年には新たなる中期経営計画「YX2026」を発表。同計画においては①低価格タイヤで構成を強める中国・インドメーカーに対抗しうる低コスト・高効率オペレーション、②高級車・スポーツカーへの新車装着タイヤの拡販によるブランド向上、③農業・林業向けタイヤにおける成長戦略、などを掲げている(参考リンク)。
就職格付け:CC
日系タイヤメーカーの一角であり、タイヤ業界では世界上位10社に数えられる大手。よく比較される同業のブリジストン・住友ゴム工業・TOYOTIREはいずれも海外売上高比率が60%~80%台であるのに対して、横浜ゴムの海外売上高比率は30%ほど。依然として国内販売が主力である点は他社との相違点である。最近まで東京都港区に本社を置いていたが、2022年に平塚製造所に本社機能を統合したことで神奈川県の企業へと回帰(参考リンク)。給与水準においては平均年収664万円(2024年)と、大手メーカーとしてはやや低めに感じる水準(昨今の業績好調にも関わらず、平均年収は伸び悩んでいる)。福利厚生は良くも悪くも普通であり、年齢制限ありの住宅手当と扶養手当がメイン。そのため、本社が神奈川県平塚市へ移転したことで住宅コストを抑えやすくなった点は意外なメリットである。本社勤務の場合で考えれば、東京都港区の勤務で平均年収600万円台は平凡であるが、神奈川県平塚市であれば相当以上にリッチな生活が送れるであろう。なお、主力拠点は茨城県・長野県・愛知県・三重県・静岡県・広島県にも立地しており、必ずしも首都圏に勤務できるとは限らない。