企業概要
東映アニメーションは、東映グループに属する大手アニメ製作会社。1948年に日本初のアニメ制作会社『日本動画』として設立され、終戦後の混乱期からアニメ製作を開始。1956年には東映の傘下入りを果たし、劇場アニメ・テレビアニメへと進出。現在では日本アニメ業界におけるトップ企業であり、企画・製作・編集・メディア展開までを一気通貫で手掛ける。世界的知名度を誇る『ドラゴンボール』『ワンピース』『スラムダンク』などのコンテンツを多数揃えており、海外売上高比率は約60%にも達する。
・アニメ業界における最大手企業、世界的コンテンツを多数保有
・アニメ人気の高まりで売上高・利益いずれも急増、無借金経営で手元資金潤沢
・平均年収827万円と業界首位級、福利厚生も整ったホワイト企業
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:65(中堅上位)
サラリーマンの中堅上位クラスの待遇を得られ、世間的にも有名企業・大企業勤務として認知される。サラリーマンとして安定した人生が得られるが、入社するには人並み以上の努力が必要だろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:難関上位級
総合職の採用人数は年間10名~20名と少ない(芸術職は年間5名~10名)。アニメ業界における稀有な上場企業かつ高待遇であるため、同業界の志望者にとって最高峰の位置づけ。
採用大学:【国公立】大阪大学・名古屋大学・北海道大学・横浜国立大学・埼玉大学・東京芸術大学・大阪公立大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・立教大学・日本大学・国際基督教大学・東京理科大学・武蔵野美術大学・女子美術大学・デジタルハリウッド大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
東映アニメーションの売上高は右肩上がりで成長しているが、2022年からは急速な増加ペースがより加速*1。2024年には過去最高となる売上高1,008億円に到達している。営業利益も長期的な増加傾向が続いており、2024年には過去最高となる324億円に到達している。
*1:2022年から業績急伸した理由は、①劇場大型作品『ドラゴンボール』『ワンピース』『スラムダンク』の大ヒット、②高利益率は配信権・版権販売の好調、③為替レートの円安推移による為替効果、など。
✔セグメント別の状況
東映アニメーションは、映像制作・販売事業(劇場・テレビ向けアニメ作品の企画・制作、ビデオ化権販売、映像配信サービスなど)、版権事業(キャラクター商品化許諾など)、商品販売事業(キャラクター商品の開発・販売など)、その他事業(イベント事業など)、の4事業を有する。
当社は国内最大手の大手アニメ制作会社として知られるが、映像制作・販売事業は売上高の約37%に過ぎない。売上高・利益においては版権事業が最大を占めており、実はキャラクタービジネスが業績の柱となっている。大ヒット作品となれば長期的にゲーム・グッズ販売が見込めるため、高い利益率・安定性を稼ぐことができるのもキャラクタービジネスの特徴である。
✔最終利益と利益率
東映アニメーションの純利益は長期的に右肩上がりで推移しており、2024年には過去最高となる236億円に到達している。営業利益率は25%~32%ほどで長期的に推移しており、アニメ業界としてはトップクラスの利益率を安定的に稼いでいる。
✔自己資本比率と純資産
東映アニメーションの自己資本比率は長期的に75~80%の超高水準で安定的に推移している。長年に渡って無借金経営を貫いており、高い利益率を加味すれば財務健全性はまさしく鉄壁に近い。純資産は右肩上がりで増加し続けており、2024年には1,531億円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
東映アニメーションの平均年収は827万(2024年)と、アニメ業界としては最高峰の水準にある。総合職の場合、30歳で年収500万~650万円ほど、課長職レベルで年収950万~1,050万円が目安となる。作画・演出・色彩などを手掛ける芸術職であっても給与水準は高く、初任給も総合職と同等。
✔従業員数と勤続年数
東映アニメーションの単体従業員数は増加傾向が続いているが、2024年でも696人ほどの組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は960人規模。平均勤続年数は8.4年(2024年)と長くないが、過去8年間に渡って人員増強を継続しているため当然である。
総合評価
企業格付け:BB
■業績動向
絶好調。売上高・利益いずれも右肩上がりの成長が長期的に続いているが、2022年以降は更に業績拡大ペースが加速している。ヒット作の有無で業績変動するビジネスモデルとはいえ、ここまで急激な業績拡大も珍しい。営業利益率も30%前後の高水準を維持しており、高利益率なビジネスモデルを構築している。
■財務体質
鉄壁。有利子負債に依存しない無借金経営を貫いているうえ、高い利益率によって潤沢なキャッシュフローを確保。手元の現預金は668億円(2024年)にも達しており、過剰なほどのキャッシュリッチぶりを示す。アニメ業界はヒット作品の有無で業績が乱高下する特徴があるが、業績が安定的な版権事業を拡大することで業績安定性も担保。
■ビジネス動向
中長期戦略として「IP(知的財産)を戦略の軸に据えたグローバル事業展開」を掲げる。版権事業が売上高・利益の核であるため、コンテンツを長期的財産として稼ぐビジネスモデルを志向。作品ファン層を拡充するため、親子2世代・3世代で楽しめる作品づくりも優先。欧州・中国ではコンテンツの現地制作を推進、現地の嗜好・価値観にマッチした作品を生み出す方針。
就職格付け:BB
■給与水準
平均年収827万円(2024年)と、アニメ業界における最高峰の給与水準。ゲーム会社などを含めたエンタメ産業全体を見渡しても最高峰クラスの給与が用意されている。通常の賞与とは別に、業績に応じた特別報奨金(年3回)を支給しており、ヒット作に恵まれた年には従業員の収入も増える。
■福利厚生
良い。家賃補助制度では全員に3万円/月を一律支給。昼食補助制度があるため、平日の食事代も浮くのは有り難い制度設計。年間休日も125日と多めであり、有給休暇もしっかり取れる。新作アニメ作品の劇場チケットを配布する制度も。アニメ業界としては最高峰の待遇である。
■キャリア
総合職・芸術職の2職種制。総合職は企画・製作進行・総務・人事などをローテーションを重ねながら経験、ビジネスサイドから会社を支えながら経営幹部を目指す。芸術職はクリエイターとして作画・演出・背景・色彩などからアニメ作りに直接携わり、アニメ監督・ディレクターなどを目指す。