企業概要
東京建物は、オフィスビル・商業施設・物流施設・マンションなどの開発・販売・賃貸を手掛ける不動産デベロッパー。1896年に安田財閥総帥・安田善次郎が不動産会社として創業、日本で初めてのローン販売を展開した。1960年代にはマンション分譲に進出。現在では不動産デベロッパーとしてオフィスビル・商業施設・物流施設・マンションなどを幅広く展開、とりわけマンションにおける”Brillia”ブランドは高級路線・資産価値が高いマンションブランドとして広く認知されている。
・旧安田財閥系・日本最古の不動産デベロッパー、首都圏地盤
・売上高・利益いずれも成長基調、財務体質も健全だが自己資本比率やや低い
・総合職は30代で年収1,200万円に到達、平均勤続年数がやや短い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:73(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:最難関級
総合職の採用人数は年間20人~30人と非常に少ない。大卒総合職の出身大学は旧帝大・早慶が大半、学歴だけでなくスポーツなど学外での顕著な実績も欲しい。
採用大学:【国公立】東京大学・一橋大学・京都大学・大阪大学・神戸大学・東京外国語大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
東京建物の売上高は過去10年以上に渡って緩やかな成長基調が続いており、直近の2022年には売上高3,499億円に到達して過去最高を更新*1。営業利益も緩やかな増加が継続しており、直近の2022年には売上高3,499億円に到達。
*1:東京建物の売上高が成長している理由には、①地盤である関東圏におけるマンション価格の高騰が続いている点、②高所得層への”Brillia”マンションの販売好調、③オフィスビルの新規開業が続いたことで賃貸収入が増加した点、などがある。
✔セグメント別の状況
東京建物は、ビル事業(オフィスビル・商業施設・物流施設などの開発・販売・賃貸・管理)、住宅事業(マンションなどの開発・販売・賃貸・管理)、アセットサービス事業(不動産の売買・仲介・コンサルティング、駐車場開発)、その他事業(ホテル・リゾート・ゴルフ場・介護サービス・海外事業)、の4事業を有する。
東京建物はビル事業・住宅事業が売上高の大半を稼ぎだす重要事業であり、アセットサービス事業・その他事業は補完的な役割となっている。利益においてはビル事業が半分以上を占めており、利益率が高いビジネスとなっている。
✔最終利益と利益率
東京建物の純利益は長年に渡って右肩上がりの増加が続いており、直近の2022年には純利益430億円に到達。営業利益率は長期的に13%~18%ほどで推移しており、不動産会社としては中堅上位クラスの利益率である不動産会社としては中堅上位クラスの利益率*2。
*2:営業利益率20%を上回っている三菱地所・住友不動産・平和不動産・ヒューリックなどには及ばないが、野村不動産・三井不動産・東急不動産は営業利益率で上回っている(2022年)。
✔自己資本比率と純資産
東京建物の自己資本比率は長期的に23%~25%レベルで安定的に推移。やや低めにも見受けられるが、これは不動産デベロッパーとしては標準的な水準*3。純資産は増加傾向が続いており、直近の2022年には純資産4,568億円に到達。
*3:不動産デベロッパーは土地建物への投資額が巨額に及び、投資期間も長期に渡る。そのため長期借入金などの資金調達で費用を賄うことが多く、自己資本比率が高まりにくい傾向がある。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
東京建物の平均年収は長年に渡って940万~1,020万円ほどの水準で安定的に推移。不動産業界の大手企業としては標準的な水準。ただし、この平均年収は総合職・住宅専任職・一般職などを合わせた平均値であり、総合職に限った平均年収はより高い。大卒総合職に限ると、30歳前半で1,100万~1,200万円、課長職レベルで1,500万~1,700万円ほどが目安。
✔従業員数と勤続年数
東京建物の単体従業員数は緩やかな増加傾向が続いており、直近では760人規模の組織となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は5,800人ほど。平均勤続年数は直近で11.5年に留まっており、やや短め。
総合評価
企業格付け:AA
日本最古の不動産会社の1つである名門企業であり、かつて日本最強の金融力を誇っていた安田財閥の不動産企業である。今では安田財閥は現存していないが、旧安田財閥系の損害保険ジャパン・明治安田生命保険は当社の大株主として今なお緩やかな関係性を保っている。過去10年間に渡って業績は好調そのものであり、首都圏における不動産市場の活況が大きな追い風になっている。とりわけマンション分譲において”Brillia”ブランドは大きな認知度があり、販売好調が続いている。財務体質は自己資本比率20%以上で推移しており、不動産デベロッパーとしてもやや低めな印象は拭えないが健全性には問題がない水準を維持。稼ぎ頭のビル事業はこれまで大規模オフィスビル開発を主力としてきたが、リモートワーク普及によってオフィスビル需要が多様化したことを受けて2022年からは中規模オフィスビル開発にも参入。同年4月には初の中規模オフィスビルとなるT-PLUS日本橋小伝馬町を開業している。
就職格付け:AA
不動産デベロッパー大手7社の一角であり、地盤の首都圏においては高い知名度と就職人気を誇る企業。財閥系の総合不動産デベロッパーと比較すると規模感はかなり小さく、良くも悪くも少数精鋭な組織規模。大規模な街づくり再開発を主導することは少ないものの、オフィスビル・商業施設・マンションなどは一通り手掛けているため財閥系の総合不動産デベロッパーと併願されることも多い。給与水準はかなり恵まれており、総合職であれば30代前半で年収1,000万円は優に上回る給与を得られる。…が、財閥系の総合不動産デベロッパーと比べるとやや少ないのは否めない。また、総合職とは別の職種である住宅総合職については賃金体系が異なっており、上記よりも平均年収はかなり落ちる。福利厚生はかなり恵まれており、31歳までは家賃補助制度・借上げ社宅制度で最大7万円/月ほどの補助を得ることが可能。高い給与水準に加えて住宅コストも抑えられるため、都内在住であっても貯金をしっかり貯めることができる。総じて優良企業であり申し分ないが、平均勤続年数が11.5年と他の不動産デベロッパーよりもかなり短めであるのは事実。