企業概要
東京ガス(正式表記:東京瓦斯)は、東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県において都市ガス・プロパンガスを供給する大手ガス会社。1885年に東京府が東京府瓦斯局を渋沢栄一らに払い下げたことで創業、戦前にはガス器具・ガス灯の開発にも進出してガス普及に尽力。戦後には欧米からLNG(液化天然ガス)技術をいちはやく導入、高度経済成長期のエネルギー需要急増を支えた。現在ではアメリカ・オーストラリアでLNG開発を手掛ける他、東南アジア・アメリカで発電所・LNG基地を展開。
・ガス業界の最大手企業として屈指の存在感、最近は海外進出にも注力
・売上高・利益いずれも絶好調で過去最高を更新、財務体質も優良
・大卒総合職なら35歳頃に年収1,000万円に到達、住宅補助も手厚い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:74(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:最難関級
採用人数は年間130人~200人ほどだが、事務系採用は30人~50人と少なく、残りは技術系採用とプロフェッショナル職採用(高専卒)が占める。インフラ業界のトップ企業だけあって倍率も高い。
採用大学:【国公立】東京大学・京都大学・大阪大学・東京工業大学・名古屋大学・東北大学など、【私立】慶応義塾大学・早稲田大学・上智大学・東京理科大学など(出典:大学通信ONLINE)
業績動向
✔売上高と営業利益
東京ガスの売上高は2020年まで1.5兆~1.9兆円のレンジで安定推移してきたが、2022年には売上高3.29兆円に急増して過去最高を更新*1。営業利益は500億~1,900億円ほどで安定的であったが、2022年は営業利益4,215億円へと急増*2。
*1:2022年は世界的な資源価格の高騰により都市ガス販売単価が上昇。原料調達費を販売価格に反映させる原料費調整制度により、資源価格の高騰分が価格転嫁されたことで売上高が急増。
*2:2022年の営業利益の急増は、①都市ガス事業において原料調達費の上昇分の価格転嫁が進んだこと、②価格転嫁がガス料金に反映されるまでのタイムラグによる増益影響、③資源価格が急騰する前にLNG購入価格を長期契約したことで割安な原料調達ができたこと、が主要因。
✔セグメント別の状況
東京ガスは、エネルギーソリューション事業(都市ガス・液化石油ガス・産業ガス・LNGの製造販売、エンジニアリングなど)、ネットワーク事業(都市ガスの託送供給)、海外事業(海外資源開発・投資、エネルギー供給など)、都市ビジネス事業(土地建物の貸借・管理など)、の4事業を有する。
当社はエネルギーソリューション事業が売上高・利益いずれも主力を占める最重要事業となっている。2016年の電力小売自由化を受けて、現在では電力事業が売上高の約26%を占める規模にまで成長。ガス・電力に続く第三の柱としてソリューション事業にも注力しており、脱炭素・デジタル核心を追及(参考リンク)。
✔最終利益と利益率
東京ガスの純利益は2021年まで430億~950億円レベルで推移していたが、2022年には純利益2,809億円に到達して過去最高益を更新*3。営業利益率は平常時は3~7%ほどと高くはないが、好調時には10%を超える。
*3:2022年に莫大な純利益を計上できたのは、ガス小売り価格が高騰する環境下において割安なLNG購入価格での原料調達ができたことが主要因。資源価格が急騰する前に割安価格での長期契約での契約を済ませていた先見性の賜物。
✔自己資本比率と純資産
東京ガスの自己資本比率は長年に渡って40%前後の高水準で推移している。インフラ業界としては高めの水準であるうえ利益体質の安定性を加味すれば、財務体質はまず盤石であろう。純資産は2020年頃まで横這いが続いていたが、2021年以降は増加傾向へと転換。2023年には純資産1.73兆円に到達。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
東京ガスの平均年収は緩やかな増加傾向が続いているが、直近でも735万円と世間が思うほどは高くない。が、大卒総合職の給与テーブルは恵まれており、大卒総合職なら30歳前後で年収750万~900万円ほど、35歳頃には年収1,000万円に到達する。
✔従業員数と勤続年数
東京ガスの単体従業員数は減少傾向が続いており、2021年には3,190人まで減少*3。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は1.55万人ほど。平均勤続年数は直近で18.8年と大企業の標準的な水準を上回る。
*3:2022年に導管部門法的分離規制に基づき当社は導管部門を東京ガスネットワークに分社化。都市ガス業界への新規参入を促しつつ導管部門の中立化を強化するためことを目的としている。
総合評価
企業格付け:AA
ガス業界において最大手の企業であり、首都圏・関東一円への都市ガス供給を担うインフラ企業の雄。同業の大阪ガス・東邦ガスと並んで大手3大ガス会社と称されるが、規模的には断トツ首位であり、まさしくガス業界のリーディングカンパニーである。業績においては、2022年には売上高・利益いずれも大躍進を果たして過去最高を更新。ロシアによるウクライナ侵攻から世界的な資源価格の高騰に見舞われる中において、資源価格の高騰以前に割安な長期契約での手配をかけていたことが奏功して莫大な利益を計上することに成功した。2023年には資源価格の落ち着きもあって減収減益に落ち着いたが、2021年以前よりも業績好調な状況が続いている。財務体質においても相当に堅実であり、自己資本比率は40%前後とかなりの高水準。安定的な利益体質を加味すれば倒産リスクとはまったく無縁と言えるレベルにある。2010年代以降は大手電力会社の財務体質が劣化しているため、この水準の財務体質をしっかりと確保したインフラ企業は希少である。インフラ企業でありながら海外展開にも力を入れており、アメリカ・オーストラリアなどで資源開発にも進出。
就職格付け:AA
インフラ業界においてトップクラスのブランドイメージを獲得している企業。かつての就職市場では東京電力が有力なライバルであったが、2011年以降に同社が業績悪化に沈んだことで、当社の存在感はますます高まっている。給与水準においては平均年収735万円(2023年)ほどに留まっており、見かけ上は大手メーカーに劣るが、大卒総合職の給与水準はこの程度では全くない(当社に限らず、公益企業においては世間体への配慮から算出母体を工夫して平均年収を下げているケースが散見される)。大卒総合職であれば、給与水準は30歳前後で750万~900万円ほどの水準に到達するうえ、35歳頃には1,000万円の大台に到達する。まさしく「総合商社と大手メーカーの中間レベルの待遇」であり、給与・安定性・社会的名声を兼ね備えた就職先である。福利厚生においては家賃補助制度こそないものの社宅制度が極めて充実しており、独身であれば首都圏のワンルームに1万円/月レベル、既婚者であれば2万円/月レベルで住むことができる。高所得かつ住宅コストを抑制できることから、相当にリッチな生活を送れるであろう。