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【勝ち組?】東レの就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

東レは、化学繊維・合成繊維・炭素繊維などを製造販売する大手繊維メーカー。1926年に三井物産が設立した東洋レーヨンを源流とし、1970年に現社名の東レへ社名変更。化学繊維がまだ黎明期であった1920年代から生産に着手、1950年代以降に化学繊維の大衆化を追い風に業績を伸ばした。ナイロン・ポリエステル・アクリルの三大合成繊維をすべて生産でき、機能性素材を多角的に展開。炭素繊維では世界シェア首位を誇り、米ボーイングに航空材料として納入する航空部品サプライヤーでもある。

POINT

・日系繊維メーカーとしては断トツ首位の事業規模、炭素繊維は世界シェア1位
・売上高・利益いずれも安定的だが減益傾向、財務体質は健全
・平均年収756万円だが、家賃補助は最大13万/月とかなり恵まれる

✔就職偏差値:68(上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関級

総合職の採用数は年間150人~200人とそこそこ多め。理系採用枠においては数多くの大学から幅広く採用しているが、文系採用枠は40人ほどのため難易度はより高くなる。
採用大学:【国公立】北海道大学・名古屋大学・名古屋工業大学・大阪府立大学・京都工芸繊維大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・上智大学・同志社大学・東京理科大学など(出典:リクナビ2025

業績動向

✔売上高と営業利益

東レの売上高は長年に渡って2.0兆~2.5兆円のレンジで上下変動を繰り返している*1。営業利益は500億〜1,500億円のレンジで推移しているが、2017年以降は長期的な減益傾向にある。
*1:2019年のみ売上高1.88兆円まで急落したが、これはCOVID-19感染拡大による打撃。外出制限による服飾需要の急減で繊維事業が打撃を受けた他、渡航制限による航空需要の激減で米ボーイング向けの炭素繊維の需要も急減。

✔セグメント別の状況

東レは繊維事業(ナイロン・ポリエステル・アクリル・不織布・人工皮革など)、機能化成品事業(樹脂・樹脂化成品・フィルム加工品・ファインケミカルなど)、炭素繊維複合材事業(炭素繊維・複合材・成形品)、環境エンジニアリング事業(エンジニアリング・マンション・産業機械・情報機器・住宅材料など)、その他事業(医薬品・医療機器など)の4事業を有する。
東レは炭素繊維のイメージが強いが、依然として繊維事業が最大の売上高・利益を占めている。1990年代には幾多の日系繊維メーカーが繊維産業から撤退したが、東レは付加価値の高い繊維領域に特化、現在まで繊維事業で高い利益率を確保している。

✔最終利益と利益率

東レの純利益は2016年の純利益994億円をピークにやや下落、最近は400億~700億円ほどで推移。2023年に純利益218億円まで後退*2。営業利益率は2~5%ほどで推移しており、利益率はそれほど高くない。
*2:2022年・2023年の減益の理由は、①機能化成品の販売低迷による利益急減、②欧米における風力発電所の着工減少による炭素繊維の販売減少、③買収した炭素繊維メーカーにおける減損損失の計上、が主要因。

✔自己資本比率と純資産

東レの自己資本比率は緩やかな増加傾向にあり、直近の2022年には自己資本比率50.1%と健全な水準を確保。純資産も長期的な増加が続いており、直近では純資産1.85兆円に到達。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

東レの平均年収は700~750万円ほどの水準で推移している。大卒総合職であれば30歳で630万~730万円ほど、課長職レベルで900万~1,100万円ほど。平均年齢は増加傾向にあり、直近では40.3歳に到達。

✔従業員数と勤続年数

東レの単体従業員数は長期的に7,000人規模で推移していたが、2021年には6,000人規模へやや減少。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4.8万人ほど。平均勤続年数は増加傾向にあるが、直近でも17.2年と大手メーカーの標準的水準。

総合評価

企業格付け:BBB

■業界ポジション
かつて東洋レーヨンの社名で帝国人造絹絲(現・帝人)と双璧を為した大手繊維メーカー。帝人が繊維から化学メーカーへとシフトしたのに対して、東レは繊維事業を主力として稼ぐ事業構造を維持した。その後、両社の戦略差は大きな業績差異となっており、今では帝人を圧倒する企業規模にまで東レは成長。高付加価値な繊維製品にはめっぽう強く、ファーストリテイリングとは約20年に渡って共同開発を続けてきた。

■業績動向
安定的だが減益傾向に苦しむ。かつては機能化成品が繊維事業を凌ぐ稼ぎ頭であったが、2022年以降は販売低迷により利益減少。将来性を期待された炭素繊維においても、風力発電所向け需要の縮小により減損損失を強いられた。営業利益率は7%台から2%台まで後退しており、利益率も低まっている。2017年頃の利益率を取り戻すとすれば化成品事業の早期回復が必須であるが、先行きは見通せない。

■財務体質
良好。長年に渡る利益蓄積もあって財務体質は手堅い。自己資本比率は直近で50%を上回っており、負債依存度は低めである。強いて言えば、有利子負債が9,400億円超(2023年)と利益水準に対してやや過大であるが企業規模を鑑みれば違和感はないレベルである。

就職格付け:BBB

■給与水準
直近の平均年収は756万円と繊維業界においては首位級。が、他業界の大手メーカーと比較するとそれほど傑出した水準でもない。それでも安定性が高ければ良いのだが、2020年には平均年収671万円まで急減しており安定性も微妙。大卒総合職であれば30歳で630万~730万円ほど、課長職レベルで900万~1,100万円ほど。やはり大手電機メーカーと比べると、やや物足りないか。

■福利厚生
良い。大手メーカーなりの独身寮・家賃補助制度が整備されており、住宅コストの負担を抑制できる。都内であれば家賃補助制度で最大13万円/月が支給されるため、補助の恩恵は大きい。各工場には独身寮が併設されており、35歳までは月1万円ほどで生活できるため若手社員の負担感は軽い。

■キャリア
事務系総合職・技術系総合職の2職種制。大卒総合職はGコースと呼ばれる採用枠であり、将来的には東レグループにおける幹部候補&高度専門家を目指すことが求められる。総合職の場合は定期的なローテーションを経験しつつも、自職域における経験を蓄積していく。年功序列色が強く、優秀であっても35歳前後までは目に見えた給与・昇格差はつきにくい。

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出典:東レ株式会社(有価証券報告書)