企業概要
日産車体は、高級車・商用車を製造する日産自動車グループの自動車メーカー。1937年に航空機・鉄道車両メーカー「日本航空工業」として創業。戦後にはバスや都電向け路面電車などを製造したが、1951年に日産自動車と提携。大型SUV「パトロール」やスポーツカー「フェアレディZ」などを製造。創業からしばらくは神奈川・京都を地盤としたが、2007年には福岡県に新鋭工場を設立。現在では日産自動車グループにおいて大型車・高級車・商用車に特化した製造活動を展開。
・日産グループ中核企業の1社、高級車・商用車の少数生産に強み
・業績は横ばいだが、財務体質は無借金経営で上場自動車会社トップ級
・平均年収744万円で中堅自動車メーカーを凌駕、従業員の定着も良い
就職偏差値
✔就職偏差値:63(中堅上位)
大手企業の中でも中堅上位クラスの1社であり、世間的にも有名企業として認知される。入社できればサラリーマンとして、かなり安定した人生が得られるだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用数は年間40人~50人と少なめだが、自動車メーカーとしては知名度がかない低いために倍率は高くない。採用大学も幅広い割に待遇はかなり良いため、穴場かもしれない。
採用大学:【国公立】北海道大学・神戸大学・大分大学・福井大学・山口大学・佐賀大学など、【私立】早稲田大学・同志社大学・立教大学・成蹊大学・近畿大学・東京電機大学など(出典:マイナビ2025)
業績動向
✔売上高と営業利益
日産車体の売上高は2018年に6,080億円にも達したが、同年以降は減少傾向。ただしこれは会計基準の変更や一過性の要因による影響*1。営業利益は年度による変動が大きく、当たり年は80億〜120億に達する反面、はずれ年は10億円程度になる。
*1:売上高が減少している理由は、①「収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)」の適用による大幅減収、②主力モデルにおける新型車投入の谷、が主要因。
✔セグメント別の状況
日産車体は、自動車事業(自動車ならびにアフターセールス部品の製造販売)、設備メンテナンス事業(自動車生産設備の製作・施工・維持管理など)、情報処理事業(情報処理システム構築・保守運営など)、人材派遣事業(人材派遣業)、の4事業を有する。
当社は日産自動車グループにおいて高級車・商用車の生産を担っている車体メーカーである。企画・デザイン・開発・製造など完成車メーカーとしての機能がすべて備わっており、高級車を筆頭とした少数生産車の製造ノウハウを有する。
✔最終利益と利益率
日産車体の純利益は長年に渡って▲20億〜80億円ほどで横ばいが続いている。営業利益率は長期的に1%〜3%ほどで推移しており、利益率はそれほど高くない*2。
*2:当社は売上高の約97.7%を日産自動車グループに依存しており、同グループの中核会社の1社である。そのため、自社単独の利益をそれほど追及しない事情がある。
✔自己資本比率と純資産
日産車体の自己資本比率は長期的に60%以上の水準で安定しており、2021年には74.5%の超高水準に到達。自己資本比率においては上場企業の完成車メーカーとして断トツ首位を誇る。実質無借金経営を達成しており、健全性は大いに良好。純資産は1,700億円レベルで横ばい。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
日産車体の平均年収は2020年頃まで580万〜600万円ほどであったが、同年以降は顕著に増加。2023年には平均年収744万円に到達しており、中堅自動車メーカーを上回る水準に到達。大卒総合職であれば30歳で550万~690万円ほど、課長職レベルで900万~1,100万円ほど。
✔従業員数と勤続年数
日産車体の単体従業員数は長期的な減少傾向が続いており、直近では1,681人となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は4,100人ほど。平均勤続年数はやや減少傾向にあるが依然として17年〜20年の高水準で推移しており、従業員の定着のよさは親会社・日産自動車を凌駕する。
総合評価
企業格付け:B
日産自動車グループにおける中核企業の1社であり、高級車ブランド「インフィニティ」・フレームSUV・商用車などを手掛ける自動車メーカー。かつてはスポーツカー「フェアレディZ」やフレームSUV「パトロール」などの歴史的名車を生産していた企業でもある。業績面では売上高が減少傾向にあるが、これは会計基準の変更とモデルチェンジの谷間にあたる時期であることが主要因。利益面では横ばい傾向にあるうえ利益率も高くはないが、単独利益以上にグループ全体への貢献が求められることも要因。財務体質は自動車メーカーとしては珍しく実質無借金経営を達成しており、自己資本比率も60%以上の超高水準で安定。2024年には高級車ブランド「インフィニティ」の基幹モデルQX80がフルモデルチェンジを迎えるため、この成否が注視されている。
就職格付け:B
戦前には航空機・鉄道車両を主力としていたが、終戦後に自動車メーカーへと転身した企業。地盤は神奈川県・京都府・福岡県であるが、とりわけ福岡県においては日産自動車九州と並んで九州エリア最大級の巨大工場を有しており、同県を代表する企業の一角でもある。給与水準は、平均年収744万円と中堅自動車メーカーを上回っており、大卒総合職であれば30歳で550万~690万円ほど、課長職レベルで900万~1,100万円ほどにはなる。福利厚生もかなり恵まれており、①格安の独身寮(月額6,500円)、②有給休暇とは別に最大12日/年を休めるファミリーサポート休暇制度、③新車購入の従業員割引、などがある。意外にも親会社・日産自動車よりも平均勤続年数が長く、一時期は平均勤続年数が20年を超えるほどに従業員の定着がよかった(現在でも17.7年と高い)。自動車メーカーとしては知名度が極めて低いために倍率も低めであり、神奈川県・福岡県の出身者にとってはまさに穴場と言える企業だろう。