企業概要
SOMPOホールディングスは、損害保険事業を主力とする大手金融グループ。2002年に安田火災海上・日産火災海上・大成火災海上が合併して誕生、2010年に日本興亜損保が合併してSOMPOホールディングスを形成した。2015年にはアメリカ損保業界で第5位のエンデュランスを買収して傘下に収めた。バブル全盛期の1987年にゴッホ作「ひまわり」を58億円で落札、現在もSOMPO美術館の目玉として所有している。
・損害保険業界3位、2000年代以降に中堅損保会社群が合併を繰り返して誕生
・経常収益・利益いずれも直近は好調、海外事業も円安を追い風に好調
・総合職は40代で年収1,000万円に到達、新車購入圧や頻繁な転勤は課題
就職偏差値
ジョブ型:73(最上位)
総合職:66(上位)
■ジョブ型総合職
日本企業における最上位クラスの1社であり、数多ある大企業の中でも特筆すべき存在。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
■総合職
かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
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業績動向
✔売上高と経常利益
SOMPOホールディングスの経常収益は2021年から緩やかな成長基調*1。2023年には経常収益4.93兆円に到達。経常利益は2022年に一時的に急落*2したものの、直近では過去最高益となる4,880億円を記録。
*1:2021年以降の業績好調の要因は、①保険商品の料率・商品改定による値上げ効果、②米長期金利の上昇による運用環境の改善、③為替レートの円安推移による為替効果、④2020年に買収した米・ダイバーズフィールド社の保険料収入が加わった点(参考資料)など。
*2:2022年に利益急減した理由は、①日本国内における大規模雹害・台風による保険金支払いの増加、②COVID-19感染一服による外出行動の増加による保険金支払いの反動増、③海外事業における有価証券売却損、などが要因。
✔セグメント別の状況
SOMPOホールディングスは国内損害保険事業(損保ジャパン・セゾン自動車火災保険・Mysuranceによる国内向け損害保険事業)、国内生命保険事業(SOMPOひまわり生命保険による国内向け生命保険事業)、海外保険事業(海外支店・海外現地法人・海外子会社による海外向け保険事業)、介護シニア事業(SOMPOケアほか)、その他事業の4事業を有する。
かつては海外展開で後れを取っていたが、直近では海外保険事業が売上高の約33%・利益の約57%にまで増加。2015年に介護業界の『メッセージ』社と『ワタミの介護』社を傘下に収めており、介護事業を主力事業に加えている点が特徴的。
✔最終利益と利益率
SOMPOホールディングスの純利益は2022年に264億円まで急減したが、2023年には4,160億円まで急増して過去最高を更新*3。自己資本利益率は7%~8%ほどで推移していたが、直近では17.5%まで急増。
*3:2023年の利益急増の要因は、①自動車保険・火災保険の料率・商品改定による値上げ効果、②債券利息収入の増加による資産運用利益増、③日本国内の自然災害の減少、など。
✔自己資本比率と純資産
SOMPOホールディングスの自己資本比率は19.2%と低めだが、損害保険会社であれば健全な水準。損害保険会社は顧客から保険料を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすい。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
SOMPOホールディングスの平均年収は直近で1128万円と高水準だが、これは持株会社の506名のみの平均年収。総合職(転勤あり)は30歳前後で750~850万円、課長職レベルで年収1,200万円~1,300万円に到達する。
✔従業員数と勤続年数
SOMPOホールディングスの単体従業員数は300人~500人ほどに過ぎず、従業員の殆どは事業会社に属している。子会社・関係会社を含めた連結従業員数は4.81万人ほど。平均勤続年数は直近で15年前後の水準だが、これは持株会社の506名のみの平均勤続年数。
総合評価
企業格付け:BB
■業界ポジション
国内三大メガ損保の一角だが、三大メガ損保の中では経常収益が最も少ない。現在こそ三大メガ損保の一角だが、元々は中堅損保6社(安田火災・日産火災・大成火災・日本火災・興亜火災・太陽火災)が合併した連合体であり、ブランドイメージは他2社に及ばないのが辛いところ。
■業績動向
急拡大。経常収益・利益いずれも2021年から右肩上がりで増加しており、業績は過去最高圏で推移している。株高・金利上昇という金融環境も運用ビジネスにとって大きな追い風となっており、利益水準を底上げしている。自動車保険・火災保険の料率改定を通じての本業収益の拡大にも熱心。
■財務体質
良好。自己資本比率は直近で19.2%と低めだが、損害保険会社は顧客から保険料を預かる事業の性質上、貸借対照表での負債が広がるため自己資本比率が低くなりやすいため仕方がない。2016年に総額6,000億円以上を投じて米・エンデュランス社を買収した際にも大半を手元資金で補っており、無理な買収はしていないのもポイント。
就職格付け:ジョブ型=AA/総合職=BB
■給与水準
同業他社の給与水準にはやや見劣りするが、異業種と比較すれば恵まれている。大卒総合職は30歳で年収750~850万円に到達し、課長職レベルで年収1,200万~1,300万円には到達する。ただし、転勤なしのエリア総合職の場合には給与水準が大きく低下するのは注意。また、損保業界には「取引先の新車購入・数年おきの買替」の慣習があるため、自動車の維持コストには覚悟が必要。
■福利厚生
良い。若手社員には独身寮・借上げ社宅が付与され、自己負担は1万円ほどで済む。全国転勤の総合職には借上げ社宅が付与され、自己負担額は家賃の20%~30%ほどで済む。ただしエリア総合職は家賃補助額は1万円となる。転勤あり総合職には好待遇を用意しつつ、差別化を図ることで転勤有無による不平等感を払拭している。
■キャリア
総合職・ブロック総合職・地域限定総合職の3職種制。総合職は全国転勤・海外転勤が前提となりジョブローテーション範囲も広いが、最も好待遇を享受できる。ブロック総合職・地域限定総合職はいずれも転勤範囲を絞るものであり、ブロック総合職は地域内に限った転勤のみとなり、地域限定総合職は自宅からの通勤圏内での勤務のみとなる。高い実績を上げた従業員には次の異動先を自由に選べる”ドリームチケット制度”がある。
■総合職(ジョブ型)採用
配属先にアクチュアリー・グローバル・金融IT部門などの花形部門を確約。東京都内の事業所がメインの部門を確約されるため、大手損保就職のリスクである「営業ドサ周りと転勤リスク」を抑制できる点は魅力。採用数が少ないブレイン採用であるため、学生時代に専門性・語学スキルを磨く必要があるが、堅実なキャリアパスを歩める点は魅力。とはいえ、大手証券会社ブレイン採用や外資系金融・コンサルは初任給600万円以上でのオファーも珍しくないため、その点では不利か。