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【勝ち組?】川崎重工業の就職偏差値と平均年収・待遇【企業研究レポート】

企業概要

川崎重工業は、バイク・航空機・鉄道車両・船舶・軍事用航空機などを製造する大手重工メーカー。1878年に川崎正蔵が川崎築地造船所として設立。戦前から現在まで造船・製鉄・鉄道・航空機など幅広い分野に事業展開してきた名門であり、広範な事業展開が特徴。1952年にはエンジン製造技術を活かしてバイク事業に進出、硬派なバイクづくりで熱心なファンを多く抱える。海運大手の川崎汽船、製鉄大手のJFEスチールは当社から分離して設立された企業である。

POINT

・日系重工メーカー大手3社の一角、バイクやバギーなどBtoC事業も展開
・売上高・利益は概ね安定的、財務は自己資本比率23%でやや低め
・平均年収736万円でジョブ型の人事制度を導入、福利厚生は普通

就職偏差値

66(上位)

かなりの勝ち組サラリーマン。日系大企業としては上位級の待遇をしっかりと得られる。入社するには相応の能力が必要であるが、立ち回りを工夫すればチャンスはそれなりにある。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

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業績動向

✔売上高と営業利益

川崎重工業の売上高は1.5兆円レベルで安定推移してきたが、2022年は売上高1.73兆円と過去最高を更新*1。営業利益は2020年を除けば営業黒字が定着しているが、2015年の営業利益960億円を更新できない状況が続く。
*1:2022年から売上高が増加した理由は、①COVID-19の影響緩和による旅客機向け航空エンジンの販売回復、②世界的な景気回復とアウトドアブームに後押しされたバイクの販売好調、③為替レートの円安推移による為替効果、など。

✔セグメント別の状況

川崎重工業は航空宇宙システム事業(航空機・航空エンジンなど)、車両事業(鉄道車両・除雪機械など)、エネルギーソリューション&マリン事業(エネルギー関連機器・船舶推進装置・産業機械・環境装置・造船など)、精密機械・ロボット事業(油圧機器・産業用ロボットなど)、モーターサイクル&エンジン事業(バイク・オフロード四輪車・ジェットスキーなど)、その他事業、の6事業を有する。
川崎重工業はバイクから航空機に至るまで幅広い事業ポートフォリオを構築、売上高は特定事業に依存しない構造となっている。ただし、利益については特定事業に偏重気味。とりわけモーターサイクル&エンジン事業は単独で全社利益の約56%を占めており、稼ぎ頭となっている。

✔最終利益と利益率

川崎重工業の純利益は2020年こそ純損失193億円を計上*2したが、2022年には純利益550億円で過去最高を更新。が、2023年には航空エンジンの不具合問題により再び減益に、営業利益率は殆どの年度において5%未満で推移しており、そこまで高くない水準。
*2:2020年の川崎重工業は、COVID-19の感染拡大による旅客需要の急減で航空宇宙システム事業が大幅悪化。海運市況の低迷により船舶事業の採算も悪化したことで坂出造船工場を対象に減損損失134億円を計上した経緯がある。

✔自己資本比率と純資産

川崎重工業の自己資本比率は25%程度の水準での推移が続いており、直近は23.5%と大手メーカーとしては低めの水準*3。純資産は緩やかな増加傾向、2022年には5,989億円に到達。
*3:当社は純利益が比較的安定しているものの利益率が低く、純資産の増加に比例して負債額も増やしてきた。そのため、自己資本比率25%前後での推移が続いている。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

川崎重工業の平均年収は緩やかな減少傾向にあり、2017年以降はは700万円前後が定着。2021年からは年功賃金を全廃してジョブ型賃金に移行。大卒総合職なら30歳前後で年収680~850万円程度。課長職に昇進すれば年収950~1,100万円ほど。

✔従業員数と勤続年数

川崎重工業の単体従業員数は2021年に約4,000人ほど減少、同年以降は1.3万人規模で推移*4。平均勤続年数は14.9年と大手メーカーとしては標準的な勤続年数、造船所や工場などの現業職が多い企業であるため平均勤続年数は伸ばしにくい事情もある。
*4:2021年に原子力関連事業をアトックスに売却。これにより単体従業員数が急減した経緯がある(参考リンク)。

総合評価

企業格付け:BB

■業界ポジション
日系大手重工メーカー3社の一角、川崎重工業の社名は神奈川県川崎市ではなく創業者の名字であり、地盤は関西・神戸エリアである。バイクから航空機に至るまで幅広い事業ポートフォリオを擁する。重工業界においては三菱重工業に続く業界2位であるが、同社とは売上高で2倍以上の大差が開いている。業界3位のIHIとは2010年代までは拮抗していたが、バイク事業などの成長により差を広げつつある。

■業績動向
売上高は伸びるも減益に沈む。本業は好調であり、バイクおよび航空宇宙分野・船舶分野が業績拡大を牽引。本来であれば2023年には営業利益1,000億円を超えて過去最高を更新する筈であったが、航空エンジンの不具合問題で補償費用として580億円もの支出を強いられたことが痛い。

■財務体質
やや微妙。直近の自己資本比率は23%とかなり低め。有利子負債が4,500億円以上(2023年)となっており、企業規模に対して大きい負債が財務体質の重荷となっている。負債圧縮を進めるにも有利子負債に対しての利益規模が小さいため、相当の時間を要するだろう。

就職格付け:B

■給与水準
直近の平均年収は736万円となり、大手メーカーの中では中庸クラス。大卒総合職なら30歳前後で年収680~850万円程度。課長職に昇進すれば年収950~1,100万円程度。2021年には人事制度改革でジョブ型の人事制度を導入して年功序列の廃止を宣言しており、勤続を重ねれば給与が上がる仕組みではなくなりつつある。

■福利厚生
福利厚生は重厚長大メーカーのイメージに反して凡庸であり、独身寮・社宅など一通りはあるが家賃補助制度はない。そのため独身寮・社宅を使えない場合には住宅コストの全額自己負担が必要になるのは地味に痛い。ゴールデンウイーク・夏休み・年末年始に加えて、海の日の前後には「電力休暇」と呼ばれる独自の連休がある。

■キャリア
事務系総合職•技術系総合職の2職種制、ジョブ型の人事制度を導入したにも関わらず職種別採用ではないのはやや自己矛盾あり。技術系総合職は研究開発・生産技術・設計・品質保証・情報システムなどに配属され、事務系総合職は事業企画・マーケティング・経理・法務・人事などに配属される。いずれも入社時の職種で専門性を高める道が基本形である。

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出典:川崎重工業株式会社(有価証券報告書)