企業概要
富士ソフトは、組込・制御系ソフトウェアを得意とする独立系システムインテグレータ。1970年に創業者の野澤宏が自宅で創業、創業当時から50年以上に渡って組込・制御系ソフトウェア開発を展開。現在では業務用ソフトウェア・組込系ソフトウェア・自社製プロダクトを三本柱として事業展開。1996年に車載ソフトウェアに進出してからは同分野のパイオニアとして躍進、デンソーと並んで日系企業ではトップクラスの実績を有する。特定の企業グループには属しておらず、独立系システムインテグレータとしても著名。
・神奈川県地盤の中堅システムインテグレータ、車載ソフトウェアに強い
・売上高・利益いずれも過去最高圏、財務体質も大いに優良
・平均年収620万円だが実力主義で賃金差は大きめ、福利厚生は並み
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:59(中堅)
上場企業・著名企業に勤務するサラリーマンとしては中堅クラスの待遇を得られる。安定性や待遇に目立った課題はほぼなく、良好な人生を送ることができる可能性が高いだろう。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:易しい
総合職の採用実績は年間650名~800名と、採用枠は極めて多い。幅広い大学から採用しており、有名企業ながら学歴に囚われず入社できる可能性が開かれている。
採用大学:【国公立】東北大学・埼玉大学・群馬大学・徳島大学・秋田県立大学・公立はこだて未来大学など、【私立】同志社大学・明治大学・青山学院大学・日本大学・成城大学・拓殖大学・明星大学・東京都市大学・東京理科大学・金沢工業大学など(出典:マイナビ2026)
業績動向
✔売上高と営業利益
富士ソフトの売上高は長年に渡って右肩上がりの推移を描いており、2024年には過去最高となる3,174億円を達成*1。営業利益も長期的な増加傾向が続いており、2024年には過去最高となる220億円を記録。
*1:当社の業績成長を牽引しているのは、組込・制御系ソフトウェアと業務系ソフトウェアの需要拡大。前者では自動車分野における自動運転機能・コネクテッド機能のニーズ拡大が追い風となっており、後者では金融系統合案件やECサービス案件などが好調。
✔セグメント別の状況
富士ソフトは、組込・制御系ソフトウェア事業(自動車・家電・OA機器向けのソフトウェア開発など)、業務系ソフトウェア事業(金融・教育・流通・物流向けソフトウェア、データセンター運営など)、プロダクト・サービス事業(自社サービスなど)、ファシリティ事業(オフィスビル賃貸など)、その他事業(データエントリー事業・コンタクトセンター事業・再生医療事業など)、の5事業を有する。
当社は組込・制御系ソフトウェア大手として知られるが、売上高においては業務用ソフトウェア事業とプロダクト・サービス事業の存在感も大きい。全社利益に占める割合においても業務用ソフトウェア事業が最大を占めるまでに拡大している。
✔最終利益と利益率
富士ソフトの純利益は長年に渡って増加傾向が続いており、2024年には過去最高となる211億円まで増加。営業利益率は長年に渡って5%~6%ほどで推移しており、システムインテグレータとしては標準的な利益率である。
*2:2024年に純利益が急増した理由は、当社が保有していたオフィスビル・社宅・保養所などを部分的に売却したことによる売却益が計上されたことが主要因。これはアクティビスト(モノ言う株主)の3Dインベストメント・パートナーズが当社に不動産売却の圧力をかけたことが要因でもある(参考リンク)。
✔自己資本比率と純資産
富士ソフトの自己資本比率は長期的に50%以上の水準で推移しており、安定した利益体質を加味すれば財務体質は大いに健全と評価できるだろう。純資産は2022年まで増加傾向が続いたが、同年以降はやや腰折れ。2024年には純資産1,416億円となっている。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
富士ソフトの平均年収は590万〜620万円ほどで横ばいが続いている。学歴不問の実力主義が浸透しており、能力があれば若手でも抜擢される*4。総合職の場合、30歳で年収450万~600万円ほど、課長職レベルであれば年収750万~880万ほどが目安。
*4:当社は実力主義による昇給レンジイメージを公開しているため参考にされたい(参考リンク)。新卒5年目であっても、実力に応じて年収450万~750万円に大きく分かれている。
✔従業員数と勤続年数
富士ソフトの単体従業員数は右肩上がりで増加しており、2024年には9,806人の組織体制となっている。平均勤続年数は10.0年(2024年)とそれほど長くはないが、①過去8年間に渡って積極採用を続けていること、人材の流動制が高い業界であることを踏まえれば違和感はない。
総合評価
企業格付け:CC
独立系システムインテグレータの雄。創業者が自宅で創業してから僅か50年で売上高3,100億円を超えて業界大手クラスにまで躍進。特定の企業グループに属さないまま、まさに実力一本で業界中堅まで叩き上げで成長したと言える。組込・制御系ソフトウェアを得意としており、特に自動車分野では日系自動車メーカーほぼ全社に納入実績がある。業績においては過去8年間に渡って成長基調が続いている。とりわけ自動車業界における自動運転・コネクテッド機能の拡充は大きな追い風となっており、当社が得意とする組込・制御系ソフトウェア事業の需要拡大に繋がっている。財務体質もかなり堅実であり、自己資本比率は50%以上で推移し続けている。新規事業の開拓にも熱心であり、最近では再生医療分野にも参画。子会社の富士ソフト・ティッシュエンジニアリングを通じて鼻向けの再生軟骨の培養による口唇口蓋裂の治療方法も研究している。2025年に米投資ファンド・KKRによる株式公開買い付けが成立、2025年5月16日をもって上場廃止となることが決まっている(参考リンク)。
就職格付け:DDD
神奈川県に地盤を置く大手システムインテグレータ。横浜・桜木町駅前の一等地にある富士ソフト本社ビルは高さ100mを超えるランドマークとなっている。かつては『IT業界ブラック四天王』と恐れられた時期もあったが、それは昔の話。今では業界大手のの有名企業なだけあって、社内制度や勤怠管理は明らかな健全化を果たしている(IT業界は人材の流動制が高いためブラック企業が競争力を失いやすい業界事情もある)。給与水準においては平均年収620万円とIT業界の割には高くないが、実力次第で大きく給与水準がかわる特徴がある。有能な人材は若手であっても早々に抜擢され、入社5年ほどで年収700万円に達する。反面、実力がない人材は30代でも年収500万円前後に留まり続ける。学歴・職歴に関係なく昇格する社風であるため、専門学校卒・高専卒であっても有能ならば早々に昇格できるのは人によっては魅力的か。福利厚生はそれなりであり、家賃補助制度はない。ただし30歳以下の社員には独身寮があるため、若手社員は住宅コストをかなり節約できる。総じて、中堅システムインテグレータの雄としての待遇はあるため実力主義志向の求職者には悪くない。ネット上の評判は散々であるが、有名企業であるため叩かれやすい側面もあり、世に余りある有象無象の無名システムインテグレータに比べれば待遇はよほど良い。