企業概要
大気社は、ビル・工場向け空調工事および自動車メーカー向け塗装設備を主力とする建設会社。1913年にドイツ系商社・レイボルド商館が空調会社として改組して発足。戦前からビル・工場向け空調工事で事業拡大を果たし、大手紡績メーカー向け工場空調において独占的地位を築いた。戦後には自動車メーカー向け塗装ブースでも高シェアを確立、1970年代にはアメリカ・中東・タイなどに海外展開を進めた。現在では海外売上高比率が47.7%に拡大、自動車メーカー向け塗装ブースでは世界シェア2位。
・ビル・工場向けの空調サブコン大手、自動車工場向け塗装設備で世界大手
・売上高・利益いずれも好調かつ安定的、利益率はそこそこだが財務健全
・平均年収1,181万円とサブコン首位クラスの高給、福利厚生もかなり良い
就職偏差値と難易度
✔就職偏差値:70(最上位)
日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向・社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。
✔就職難易度:中難易度
総合職の採用人数は年間79名~90名と企業規模なり。マニアックな事業内容かつ一般知名度は極めて低く、選考倍率は高くなりにくい。高い待遇を思えば穴場感は強い。
採用大学:【国公立】大阪大学・東北大学・神戸大学・筑波大学・信州大学・三重大学・岩手大学・琉球大学・電気通信大学・名古屋工業大学・北見工業大学など、【私立】早稲田大学・同志社大学・関西大学・立命館大学・日本大学・関東学院大学・芝浦工業大学・金沢工業大学など(出典:マイナビ2027)
業績動向
✔売上高と営業利益
大気社の売上高は2022年まで2,000億~2,300億円ほどで推移していたが、2023年には過去最高となる2,935億円まで急増している*1。営業利益は2022年まで90億~150億円ほどで横ばいが続いていたが、2023年には過去最高となる182億円まで上振れている。
*1:2023年に売上高・利益が急伸した理由は、①半導体・自動車メーカーの投資活況による産業空調の販売好調、②為替レートの円安推移による為替効果、③海外での大型案件の工事遂行による大幅増収、など。
✔セグメント別の状況
大気社は、環境システム事業(ビル空調・産業空調設備の設計・管理・施工、アフターサービスなど)、塗装システム事業(自動車メーカー向け塗装設備の設計・施工、アフターサービスなど)、の2事業を有する。
当社はビル・産業空調を主力とする環境システム事業が売上高・利益の多くを占める。産業空調分野においては、工場内部の温度・湿度・微粒子などをコントロールする技術によって半導体・製紙・化学メーカーなど多種多様な業界を顧客としている(参考リンク)。塗装システム事業においては、自動車メーカー向け塗装設備で世界シェア2位を占めるほどの存在感がある。
✔最終利益と利益率
大気社の純利益は2022年まで70億〜90億円ほどで安定していたが、2023年には過去最高となる156億円まで上振れている。景気後退局面にも純利益を着実に確保できている。営業利益率も長期的に4%〜6%ほどで推移しており、大手ゼネコンよりもやや低めの利益率である。
✔自己資本比率と純資産
大気社の自己資本比率は長期的に50%前後の高水準で安定しており、負債に依存しすぎない事業運営ができている。安定的な利益体質を加味すれば、財務健全性は十分以上である。純資産は緩やかな増加傾向が続いており、2024年に1,564億円に到達している。
社員の待遇
✔平均年収と平均年齢
大気社の平均年収は年度による上下変動が大きいが、長期的には890万~1,050万円ほどでの推移となっている*2。2024年には平均年収1,181万円まで上振れしており、サブコンとしてはトップクラスの給与水準を誇る。総合職の場合、30歳で850万〜950万円、課長職レベルで年収1,250万~1,550万円ほどが目安。
*2:当社はいわゆるサブコンに該当するが、給与水準は相当に高い。この要因は、①大手デベロッパー・大手メーカーから好採算案件の受注を勝ち取っている点、②残業・出張に伴う手当が厚い点、など。
✔従業員数と勤続年数
大気社の単体従業員数は2020年頃から微増傾向にあり、2024年は1,727人の組織体制となっている。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は5,260人ほど。平均勤続年数は採用強化により微減傾向にあるが、2024年は15.7年と大手企業の標準的な水準となっている。
総合評価
企業格付け:BB
■業績動向
好調。売上高・利益いずれも長期的に安定しており、景気後退局面にも利益を底堅く確保できる点が強み。2023年は工事進捗が順調であることに加えて高採算案件を複数こなし、過去最高となる売上高2,935億円・純利益182億円まで急拡大。国内外の顧客企業からの旺盛な受注によって手持ち受注高も堅調に推移しており、当面は業績好調で推移しそう。
■財務体質
安定的。自己資本比率も50%以上の水準で推移しており、大手ゼネコンを凌駕する財務健全性を誇る。手元の現預金は420億円(2024年)と相当位潤沢、そのうえ有利子負債は133億円(2024年)に留まり、負債に依存しすぎない事業運営を確立。
■ビジネス動向
今後の方針として「業容拡大よりも収益拡大・生産性向上」「コア事業の更なる進化」「新規事業の開拓」を掲げる。昨今のカーボンニュートラルへの社会的関心の増大を受けて、空調設備省エネ化やCO2排出が少ない塗装技術の確立を模索。新規事業としては植物性代替肉やCO2直接開発技術などを選定。
就職格付け:AA
■給与水準
建築業界トップクラス。平均年収は長期的に890万∼1,090万円で推移しており、高位安定。2024年には平均年収1181億円まで上振れしており、スーパーゼネコンにも匹敵する給与水準に。総合職の場合、30歳で850万〜950万円には到達可能。勿論、サブコンとしては最上位の給与水準である。
■福利厚生
良い。東京・名古屋に若手社員向けの独身寮があり家賃は水道光熱費込みで1.6万円。東京・名古屋以外の配属時には借上げ社宅制度で1万円強で入居できる。平均年収が高いうえ住宅コストが格安で済むため、実質的な生活水準は見かけの年収以上である。中堅社員になると独身寮・借上げ社宅はなくなるが、家賃補助が月額3万円まで支給される。
■キャリア
営業・施工管理・研究開発・事務が主要職種。入社後は30歳前後で節目となる昇格試験があり、昇格すればリーダー職となる。が、管理職ポストはそれほど多くはない為、一般社員のまま定年まで過ごすケースもある。現社長は環境システム事業部の出身。