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【勝ち組?】兼松の就職偏差値・難易度と平均年収【企業研究レポート】

企業概要

兼松は、電子部品・食料・鉄鋼・素材・航空機・ロケットなどを幅広く取り扱う中堅商社。1889年に兼松房治郎がオーストラリアからの羊毛輸入を目指して設立した豪州貿易兼松房治郎商店を源流とし、戦前には日本の羊毛輸入の約半分を支配する大手商社へ躍進。1967年には大手商社・江商と合併して兼松江商と社名変更、十大総合商社の一角に数えられるまでの躍進を果たした。1990年代以降にバブル崩壊の余波で経営危機に瀕したが、事業整理を経て再建を果たした。現在では、ITソリューション・半導体分野において存在感を放つ他、オートミール輸入ではトップシェアを誇る。

POINT

・1990年代までは総合商社の一角、現在は電子・食料・鉄鋼に事業を集中
・売上高・利益が拡大傾向、財務体質は自己資本比率がやや後退
・平均年収1,009万円、業績好調により従業員の待遇改善が進む

就職偏差値と難易度

✔就職偏差値:70(最上位)

日本社会におけるサラリーマンの最上位クラスの待遇を得られる。勝ち組サラリーマンとして胸を張れる人生が得られるが、入社するには相当以上の能力もしくは運が必要。
詳細な企業分析は以下の業績動向社員の待遇を参照。本レポート末尾に総合評価を記す。

✔就職難易度:難関

総合職の採用人数は年間35人~50人と少なめ。最近の商社ブームによって就職人気度も上昇中。かつての名門商社だけあって知名度も高く、採用倍率は相当に高い。
採用大学:【国公立】京都大学・大阪大学・東北大学・神戸大学・小樽商科大学・三重大学・東京外国語大学など、【私立】慶應義塾大学・早稲田大学・立命館大学・国際基督教大学など(出典:マイナビ2026

業績動向

✔売上高と営業利益

兼松の売上高は2020年まで6,400億∼7,000億円ほどで推移していたが、2021年からは増加傾向に転換。とはいえ、1991年に記録した売上高6.14兆円と比べると低位推移が続く*1。営業利益は緩やかな増加が続いており、2022年には過去最高となる営業利益438億円に到達。
*1:当社は1991年に売上高6.14兆円を誇ったが、バブル崩壊後に巨額債務を抱えて業績悪化。事業整理を進めたことで売上高1兆円未満にまで縮小した経緯がある。

✔セグメント別の状況

兼松は、電子・デバイス事業(電子部品・半導体製造装置・電子関連素材・モバイル通信機器・セキュリティ機器など)、食料事業(調理食品・フルーツ・農産加工品・酒類・飲料原料など)、鉄鋼・素材・プラント事業(鋼板・鋼管・線材・ステンレス製品・医薬品・機能性化学品など)、車両・航空事業(航空機・ヘリコプター・防衛機器・自動車などの貿易取引など)、の4事業を有する。
当社はバブル崩壊後に事業整理を進め、現在では電子・食料・鉄鋼が主要3事業となっている。とりわけ電子・デバイス事業は利益貢献が大きく、全社利益の半分以上を稼ぎ出している。最近ではサイバーセキュリティ分野にも注力しており、2024年には日本初となるセキュリティー企業への投資ファンドを設立した(参考リンク)。

✔最終利益と利益率

兼松の純利益は2017年から130億~180億円ほどで推移していたが、2023年には過去最高となる232億円に増加*2。COVID-19感染拡大による景気後退局面にも安定的に利益確保ができているのは強み。営業利益率は長期的に3%~4%で推移しており、事業規模の大きさによって利益を得る構造。
*2:当社の純利益が増加している理由は、①大手企業のIT・DX投資の活況による電子・デバイス事業の好調、②鋼材価格の上昇など素材市況の高騰による素材・鉄鋼分野での好調、など。

✔自己資本比率と純資産

兼松の自己資本比率は長期的に20%台で推移しているが、2022年のみ19%に下落*3。低水準ではあるが安定的な利益確保ができているため大きな問題にはならない。純資産も増加傾向が続いており、2023年には純資産1,593億円に到達。
*3:当社は2023年3月に上場子会社だった兼松エレクトロニクスを株式公開買い付けによって完全子会社化(参考リンク)。買収費用750億円を銀行借り入れで賄ったことで負債が増加して自己資本比率が低下した。

社員の待遇

✔平均年収と平均年齢

兼松の平均年収は2022年に1,204万円に増加したが、2023年は1,009万円に下落。業績連動色が強いために平均年収は安定しないが、業績好調なら平均年収1,000万円を超える。大卒総合職は30歳で年収750万~850万円ほど、課長職レベルで年収1,200万~1,500万が目安。

✔従業員数と勤続年数

兼松の単体従業員数は長年に渡って横這い傾向が続いており、700人~800人ほどの組織規模。子会社や関連会社の従業員も含めた連結従業員数は8,300人ほど。平均勤続年数は直近で13.2年とやや短めだが、社員の待遇改善が進んだのが最近であるため今後の伸びに期待。

総合評価

企業格付け:A

かつて大手総合商社の一角として売上高6兆円規模を誇ったが、バブル崩壊後の経営危機により急激な衰退を経験した企業。電子・食料・鉄鋼を主要3事業として事業整理したことで、現在では電子部品・ITに強い商社として認知される(総合商社とはあまり言われない)。業績は2020年から好転しており、売上高1兆円台を10年ぶりに回復できそうな勢い。2022年には750億円を投じて兼松エレクトロニクスを完全子会社化したことで、更なるIT領域への積極攻勢に向けた土台を築いた。一時的な買収費用の負担で財務体質がやや悪化したが、これまでグループ外へ流出していた兼松エレクトロニクスの利益をグループ内部で完全に取り込めるようになっており、中長期的にはメリットが大きいとみられる。

就職格付け:A

現在では総合商社とはあまり呼ばれなくなったものの、1990年代までは大手総合商社であったが故に、一般知名度はそこそこ。よくある鉄鋼や電子部品の専門商社とは異なり、幅広い事業を手掛けているのは事実である為、ミニ総合商社ともいえる。平均年収は2016年頃までは700万円台と商社らしからぬ水準にあったが、同年以降は待遇改善が一気に進展。業績好調もあって2022年には平均年収1,200万円台にまで躍進、豊田通商長瀬産業岩谷産業を追い抜いて双日と同格クラスにまで到達。再び「準総合商社」と呼ばれる日が近そうな待遇改善を示した。福利厚生はそこまで傑出してはおらず、若手社員のみ借上げ社宅制度があるが、その後は地方転勤・海外赴任者への社宅提供があるくらい。待遇改善が進んだのは喜ばしいニュースだが、この勢いがどこまで持続可能かが今後の焦点となるだろう。

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出典:兼松株式会社(有価証券報告書)